ヒ素利用の異論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/09 18:00 UTC 版)
DNAのリンまでヒ素に置き換えるという特殊さで生物学上の大発見とされたGFAJ-1だが、その発見への異論も存在する。ブリティッシュコロンビア大学の生物学者Rosie Redfieldは、NASAの実験ではDNAの洗浄が適切に行われておらず、ヒ素はDNAではなく細胞外のゲルに含まれていた可能性があると指摘した。またサイエンスライターのAlla Katsnelsonは、ヒ素を取り込んだGFAJ-1の細胞が大きく肥大していることから、ヒ素を増殖に使っているわけではなく細胞内に封じ込めているのではないかとの疑問を述べている。 2012年7月8日、米科学誌サイエンスの電子版は、スイス連邦工科大チューリヒ校と米プリンストン大の各研究チームが別々に、「この細菌はヒ素濃度が高い環境でも生存できるだけで、低濃度のリンを利用している」ことを実験で確認したと発表した。 この発見には発表当初から批判が殺到し、サイエンス誌が原論文とそれを論理的にも実験的にも否定する実に8つのグループによる批判論文を同時掲載するという異例の事態になり、2012年には少なくともヒ素がDNAのリンを置換するという点は完全に否定されているが、もともと確実な証拠が皆無なのにかかわらずメディアの報道だけが過熱したことから、「微生物学のビッグフット」と揶揄されている。この発見論文はそもそも出版されるべきではなく Retraction(撤回)されるべきだという意見がある中、2018年7月時点では撤回まではいたっていない。
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