パラメータ β
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/12 04:16 UTC 版)
「分配函数 (数学)」の記事における「パラメータ β」の解説
パラメータ β {\displaystyle \beta } の役割と意味は、様々に理解される。古典熱力学では、 β {\displaystyle \beta } は逆温度である。さらに一般的には、確率変数 X {\displaystyle X} を持つ函数の共役変数 (熱力学)(英語版)である。ここでの共役とは、ラグランジュ力学での一般化座標系の共役という意味であり、特に β {\displaystyle \beta } をラグランジュの未定乗数と言う。 β {\displaystyle \beta } のことを、一般化された力(英語版)(generalized force)と言うこともある。一般に、この考え方は、複数の変数が複雑な方法で相互に関連づけられて変化するとき、ある変数を一つだけ取り出し、その変数がある値に固定されるようにして考える考え方である。今の場合には、たとえ多くの異なる確率分布が、(たまたま)ある固定された値に一致することがあったとしても、固定された値は函数 H {\displaystyle H} の期待値になるようにする。 一般の場合には、確率変数 X i {\displaystyle X_{i}} に依存する函数 { H k ( x 1 , ⋯ ) } {\displaystyle \{H_{k}(x_{1},\cdots )\}} の集合を考える。これらの函数は、何らかの理由で期待値が定数として保持されるよう選択する。この方法では期待値を固定するため、ラグランジュの未定乗数法を使い、エントロピー最大原理により、ものごとがどのようになるかを決定する。 いくつかの具体例を順番に述べる。基本的な熱力学の問題では、カノニカル分布を使うとき、まさにパラメータ β {\displaystyle \beta } を使う。この使い方は、自由エネルギー(free energy)(エネルギー保存則のおかげで)を定数として保持されべきものこそが期待値であるという事実の反映である。化学反応を扱う化学の問題では、グランドカノニカル分布が適切な基礎をもたらす。そこには 2つのラグランジュ未定乗数が存在する。一つはエネルギーを定数とする(保存量とする)方法で、もうひとつはフガシティーの方法で、この方法は粒子数を保存量とする方法である(化学反応が原子の数を固定することを考えると)。 一般的な場合は、下記のようになる。 Z ( β ) = ∑ x i exp ( − ∑ k β k H k ( x i ) ) . {\displaystyle Z(\beta )=\sum _{x_{i}}\exp \left(-\sum _{k}\beta _{k}H_{k}(x_{i})\right).} ここの β = ( β 1 , β 2 , ⋯ ) {\displaystyle \beta =(\beta _{1},\beta _{2},\cdots )} は空間の点である。 観測可能量 H k {\displaystyle H_{k}} の集合に対し、 Z ( β ) = tr [ exp ( − ∑ k β k H k ) ] {\displaystyle Z(\beta )={\mbox{tr}}\left[\,\exp \left(-\sum _{k}\beta _{k}H_{k}\right)\right]} と書く。前述のように、 tr の引数はトレースクラスの議論を前提としている。 従って、対応するギッブス測度(英語版)は各々の H k {\displaystyle H_{k}} の期待値が一定値であるような確率分布をもたらす。さらに詳しくは、 ∂ ∂ β k ( − log Z ) = ⟨ H k ⟩ = E [ H k ] {\displaystyle {\frac {\partial }{\partial \beta _{k}}}\left(-\log Z\right)=\langle H_{k}\rangle =\mathrm {E} \left[H_{k}\right]} となり、この引数のブラケット ⟨ H k ⟩ {\displaystyle \langle H_{k}\rangle } は H k {\displaystyle H_{k}} の期待値を表し、 E [ ] {\displaystyle \mathrm {E} [\;]} は期待値を表す別の記法である。期待値の定義の詳細は、下記で与えられる。 β {\displaystyle \beta } の値は、普通、実数である。しかし一般には必ずしも実数である必要はない。このことは以下の正規化のセクションで議論する。 β {\displaystyle \beta } の値はある空間の座標と解釈され、この空間は以下でスケッチするように実際、多様体である。この空間の多様体としての研究は、情報幾何学(英語版)の分野へも寄与している。
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