役割と意味
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 06:14 UTC 版)
横穴系の埋葬施設は、一方の側面が外部に通じて出入口となっており、石室入口の開閉が可能なため、追葬や合葬にたいへん適している。羨門の閉塞石を取り除いたり、扉をはずせば、外部より出入り可能な状態となり、実際、1つの横穴式石室で何度も埋葬がおこなわれる追葬の事例は数多く確認されている。なかには10体ちかい人骨が出土することもあり、しばしば「家族墓」と称されるゆえんである。 これらの点は、竪穴式石室など、埋葬施設全体が封土に埋没する竪穴系の埋葬施設とは、使用上および構造上において大きく異なる点である。しかし、横穴系の埋葬施設のなかには単独葬のものや事実上追葬の不可能なものもあり、いっぽうでは竪穴系埋葬施設でも追葬のおこなわれた事例もある。もとより墓制と葬制は密接なかかわりをもつことは言うまでもないが、必ずしも完全に一致するものでもないことは注意を要する。 横穴系埋葬施設の普及はまた、単に墓制上あるいは葬制上の重大な変革であるにとどまらず、広く死生観の変革をもうながすこととなった。すなわち、それ以前の死者は、霊魂が天空へと飛翔し去ってゆく存在であったのに対し、横穴式石室の造営は、石室とそこから連続する地下の世界にこそ冥界を認め、「黄泉国」なる他界観がそこから形成されてゆく。 それゆえ、石室のなかには壺・甕・瓶・鉢・坏・高坏などに貯え、あるいは盛られた食物や酒などが供せられた。これらはいずれも、黄泉路の糧として供献されたものと考えられる。横穴式石室より大量に出土する多種多様な土器は、このことを示している。
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