役割と司法権の独立
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 07:30 UTC 版)
「アメリカ合衆国連邦裁判所」の記事における「役割と司法権の独立」の解説
連邦最高裁とその下に設置される下級裁判所は、合衆国憲法3条によってアメリカ合衆国の司法権を与えられた組織である。公平かつ公正に事実認定及び法の解釈を行い、法的な紛争を解決することを責務としており、特に合衆国憲法によって与えられた権利と自由を守るという役割を持つことから、「憲法の番人」と呼ばれる。 合衆国憲法は三権分立の制度をとっており、立法権を担う連邦議会、行政権(執行権)を担う大統領、司法府である連邦裁判所がそれぞれ独立性を有するとともに、相互に監視・牽制しあうチェック・アンド・バランスのシステムが成立している。 連邦議会は、(1)憲法3条に基づく下級裁判所を設置し、裁判所の管轄権を規定し、各裁判所の裁判官の定数を定める権限、(2)大統領の指名した連邦裁判官候補者を上院が承認する権限、(3)連邦裁判所の予算の承認権を有する。また、大統領は、連邦裁判官候補者を指名し、上院の承認の下に任命する権限を持つ。そのほか、連邦裁判所は、刑事事件の訴追や民事事件での連邦政府の代表を行う司法省、法廷警備や裁判官の警護を行う連邦保安官、連邦裁判所に建物を提供する連邦調達庁 (General Services Administration) など、各種の行政機関と密接な関係を持っている。 しかし、同時に、司法には市民の自由を守るという使命があることから、裁判の遂行がこれらの政治権力によって歪められないよう、司法権の独立を保障するための憲法の規定が設けられている。第1に、憲法3条に基づいて任命された連邦裁判官は、終身の任期を保障されており、反逆罪、収賄罪その他の重罪・軽罪により連邦議会の弾劾を受け、有罪の裁判を受けた場合以外は罷免されることがない。第2に、憲法3条の裁判官は、在職中、報酬を減額されることはない。 一方、連邦裁判所は、1803年のマーベリー対マディソン事件判決以来確立した違憲審査権の行使を通じて、連邦議会の制定した法律や行政府の行為に対する統制を行っている。 州との関係では、連邦最高裁は州裁判所からの上訴管轄権を有する(後述の裁量上訴)とともに、州法に対しても合衆国憲法に反しないかの違憲審査権を行使し得るとの判例が確立している。また、州法が連邦法と抵触する場合には、連邦法が国の最高法規 (supreme law of the land) であると定める合衆国憲法6条2項によって、州の法律は無効とされる。したがって、連邦裁判所(特に最高裁)は、州政府の立法や行政について、合衆国憲法や連邦法の観点から統制を行う役割を有しているといえる。一方で、ほとんどすべての事件について一般的な事物管轄を有する州裁判所と異なり、連邦裁判所の事物管轄権は一部の事件に限られており(後述)、また、契約法、不法行為法など、州法の規律する広い領域については、連邦裁判所は州法に従うべきものとされている(後述のエリー原則)。
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