デルタ株への対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 05:45 UTC 版)
しかし、2021年7月20日、江蘇省南京市の空港職員9人の感染により、デルタ株は中国国内にも広がったことが確認される。南京市政府は、市民800万人にPCR検査と抗原検査を実施、184人の陽性者が確認された。さらに同月末までに8つの省、22の市で感染者が発生、9月には福建省の厦門市、莆田市、泉州市などで470人の陽性者が確認された。2021年10月までのデルタ株の感染者は計1000人を超えたとされ、中国政府に大きな衝撃を与えた。この事実は国内世論に大きな影響をもたらせ、デルタ株の出現を機に、ゼロコロナ政策を転換し、「ウイルスとの共存(ウィズコロナ政策)」を目指すべきとする見方も専門家の間で上るようになる。これに対して中国のメディアは次々と批判的な記事を掲載、「他国政府は無策の結果、仕方なくゼロコロナを諦めざるを得なくなったに過ぎないのに、なぜ中国が追随する必要があるのか」など、世論も多数は政府に寄り添ったものであった。こうした動きの中、中国政府はより厳格な隔離体制を推し進め、広東省の国際空港近くで敷地面積25万㎡、5000室の隔離施設「広州市国際健康ステーション」を建設、9月下旬に運用を開始。ゼロコロナの維持のためには、市中に散在するホテルでは対処しきれないための措置で、最新設備を備えた専門施設であった。コロナ関連規制撤廃の動きを見せる欧米諸国とはあきらかに一線を画し、事実上の「鎖国状態」に近い状態で、ゼロコロナの維持に向けての長期戦の構えを見せた。 2021年11月中旬からは、特に首都・北京の新型コロナウイルス対策が厳しくなり、北京市内に入るすべての人を対象に、48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明の提示が義務付けられた。市外に出た場合、日帰りでも北京に戻る前にPCR検査が必要となる。同時に、過去14日以内に1人でも感染者が出た地域を訪問した者が、市内へ立ち入ることを制限する方針も打ち出された。これは2022年北京オリンピックと3月の全国人民代表大会対策と考えられる。12月23日には、陝西省西安市において累計1000人を超える感染者数が確認されたことを受けて、ロックダウンが実施され住民の外出が原則禁止にされた。 雲南省瑞麗市では、国境と隣接するミャンマーからの感染者流入の予防対策として、2021年3月から断続的に封鎖措置が取られた。これにより経済活動は低迷し、多くの市民の収入は激減、「地獄だ」との声もネット上に散見された。厳しい制限をかいくぐり市外に脱出する人も多く、「40万人の人口が10万人強に減った」と伝える新聞もあった[7]。
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