デカン・トラップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/30 01:58 UTC 版)


デカン・トラップ (英: Deccan Traps) は、インドのデカン高原に分布する地球上でもっとも広大な火成活動の痕跡である。2,000メートル以上の厚さを有する洪水玄武岩の何枚もの層から成り、面積は50万平方キロメートル。「トラップ」とは階段を意味するスウェーデン語で、この地域の景観が階段状の丘を示すことに由来する。
地史
中生代白亜紀末から新生代第三紀初の6800万年前から6000万年前の間に何回かの噴火によって形成された。浸食と大陸移動により減少する前の面積は150万平方キロメートルにおよんだと推定される。この噴火の際に放出された大量の火山ガスと粉塵は、当時の地球において大規模な環境破壊をもたらしたと推測され、恐竜を滅ぼしたK-T境界の大量絶滅の原因ともされる一方、50万年間に8度の地球温暖化をもたらしたとする研究もある[要出典]。
成因
アフリカプレートとインドプレートの分離を生じた海洋底拡大に伴い、インド洋レユニオン島のあたりでマントルプルームがホットスポットとして活動し、合計3万年に亘る玄武岩噴出を引き起こしたと推定される。インド亜大陸はその後北上しユーラシア大陸に衝突した。また、インド西海岸に隕石衝突によるシバ・クレーターが存在し、その形成年代はK-T境界に一致し、これがデカン・トラップの発生を促進したのではないかとする仮説も提唱されている。[1] (とはいえ、今のところ地球科学界の合意としては、その地形的特徴は実際には衝突クレーターではありそうにないとされている)
参考文献
- ^ Ker Than「恐竜絶滅の決定打はインドの隕石?」ナショナルジオグラフィック。2014年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月30日閲覧。
関連項目
デカントラップ
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「白亜紀と古第三紀の間の大量絶滅」の記事における「デカントラップ」の解説
2000年以前は、デカントラップでの洪水玄武岩の噴出が絶滅の原因になったかどうかは、玄武岩の噴出が起こった期間が6800万年前からの200万年以上と長期にわたったため、大量絶滅が段階的に起こっていたかという論点と繋がっていた。しかし、最新の証拠では、玄武岩の噴出が起こったのはK-Pg境界を挟んだわずか80万年の間にとどまるとされたため、大量絶滅が短い期間に起こったという視点からも受け入れやすくなり、デカントラップがその後の絶滅や生物多様性の回復の遅れの原因となった可能性があるとされている。 デカントラップは、ダストや硫黄化合物のエアロゾルを大気中に放出することで日光を遮り植物の光合成を阻害するなどの、いくつかのメカニズムで絶滅を引き起こした可能性がある。さらに、デカントラップでの噴火は大量の二酸化炭素を噴出することで、大気中からエアロゾルが無くなった後も温室効果で気候を大きく変える影響があったとされる。 デカントラップが、長期にわたり徐々に起こる大量絶滅と関連付けられたころは、天体衝突説を提唱していたアルヴァレズは古生物学者がシニョール・リップス効果によるまばらな化石記録に惑わされていると主張した。彼の主張は最初は良く受け入れられなかったが、その後の化石層の調査は彼の主張を裏付けていた。最終的に多くの古生物学者がK-Pg間の大量絶滅は少なくとも全地球的な出来事が一度に起こったものであると同意するようになった。それでも、アルヴァレズでさえも絶滅には天体衝突以外の要因も同時に関係した可能性があることを認めている。 こういった理論を組み合わせた地球物理学モデルの一部は、天体衝突がデカントラップに影響したことを示唆している。これらのモデルは高精度な放射年代測定を組み合わせ、チクシュルーブでの天体衝突で地球内部に加わった衝撃が、活火山だけでなくデカントラップでの何回かの最大級の溶岩噴出を誘発したとしている。
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