ディーゼル機関採用のメリット・デメリット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/21 07:27 UTC 版)
「P級装甲艦」の記事における「ディーゼル機関採用のメリット・デメリット」の解説
本級の機関には、従来から使用されていて燃料消費の多かった重油専焼缶と蒸気タービンの組み合わせではなく、燃料消費の少ない高出力大型ディーゼル機関を採用した。これはかさばる蒸気機関よりも機関スペースや燃料タンクなどのスペースを軽減でき、ひいては船体や重要区画のサイズ縮小=防御範囲縮小をもたらすため重量軽減に大きく貢献し、排水量制限の厳しい本級にとってまさにうってつけの機関であった。これにより、財政状況の厳しい海軍で燃料費の節約に繋がったうえ、補給基地が不要なほどの長大な航続力を得た事は、前大戦時に大洋での通商破壊戦時に燃料補給にかかる手間やコストに悩まされた海軍にとって戦略的に有利となった。結果的にこれらはよき宣伝材料となり、列強が本級の対応策に追われる間に、より強力な艦を研究・整備できる時間を作ってくれたのである。 しかし、ディーゼル機関の採用には問題がなかった訳ではなく、技術面では各機関の回転総数が耐久限界の7,200万回転に達する間に、クロスヘッド・ピストン棒取り付け部の故障が頻発した。十数回ほど改造したが効果はなく、最後に5分の1模型や部分模型による精密実験によって原因を究明してようやく故障を克服した。燃料噴射システムには高い精度、高い耐久性が要求されるため、製造コストがかさんで予算面でもドイツ海軍を悩ませた。更に高圧縮で運転するディーゼル機関特有の騒音の高さは蒸気タービン機関の比ではなく、艦上で作業する水兵への意思疎通を妨げたために電気メガホンを必要とするほどであった。 ディーゼル機関は、燃料面においてもタービン艦と同様に高品質な重油を必要とし、粗悪な重油・軽油では出力が出せずに機関の不調も起こす始末であった(ただしこれは、1950年代以前のディーゼル機関特有の問題であり、本艦の機関だけが悪いわけではない)。また、当時のディーゼル燃料は粘性が高すぎて流れが悪く、燃料供給に支障が出たため、燃料管に専用の加熱装置を組み込む必要があった。
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