テキストの問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 00:44 UTC 版)
「セクストゥス・プロペルティウス」の記事における「テキストの問題」の解説
テキストには多くの統語上・構造上・論理上の問題が含まれている。いくつかは疑いなく、プロペルティウスの大胆で、時には型破りなラテン語の使用が問題を悪化させている。写本に記載する際、研究者がテキストの手直し、時には変更をせざるをえなかったものもある。 全部で146ある現存するプロペルティウスの写本のもっとも古いものは12世紀のものである。しかし、そうした写本の中の詩のいくつかは支離滅裂である。たとえば第1巻8は、キュンティアが航海の計画を取りやめたことを弁解するところから始まっているが、ラストでは航海を中止した喜びで終わる。そのため、多くの研究家はこの詩の前半を8a(26行まで)、後半を8b(27行から46行まで)と分割している。第2巻26は、より複雑な構造上の問題を含んでいる。順番に、(1)難破するキュンティアの夢、(2)キュンティアの貞節への賛辞、(3)キュンティアが航海を計画し、プロペルティウスが同行することの表明、(4)一緒に岸に移動する二人、(5)急に二人は船上にいて海難の可能性に備える、と混乱している。論理的にも時間的にも矛盾していて、そのためにさまざまな注釈者たちは、行を並び替えるか、テキストの中にいくつかの「空白」を差し挟んでいる。D. Thomas Benediktsonなど近年の研究者は、こうした改訂は、プロペルティウスの元々の詩はアリストテレスによって定められた古典文学の法則を厳格に守っていて、見た目の混乱は写本の改悪であると仮定してのものだった、と指摘している。 別の可能性としては、たとえば三一致の法則のような法則に背いて、プロペルティウスが故意に支離滅裂なイメージを書き連ねたというものである。この解釈もまた、プロペルティウスのスタイルは古典文学原理の正統性に対する反発であることを意味している。
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