スワルトクランス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/21 02:42 UTC 版)
「南アフリカの人類化石遺跡群」の記事における「スワルトクランス」の解説
スワルトクランス(英語版)は、スタルクフォンテインから西南西1.2 kmほどの場所にある。 ロバート・ブルームとその助手ジョン・ロビンソン(英語版)は1948年11月に、スタルクフォンテインとクロムドライに加えて、スワルトクランスの発掘作業を開始した。まもなく出土した臼歯のついた頑丈な下顎骨について、ブルームは新種とみなして「パラントロプス・クラシデンス」と命名した(現在ではパラントロプス・ロブストゥスと見るのが一般的)。 さらに、1949年にはまったく別種の化石人骨が出土し、ブルームは「テラントロプス・カペンシス」と命名した。これはのちに、ロビンソンによってホモ・エレクトゥスと同定しなおされ、実際、それかホモ・ハビリスと同一視されているが、ヒト属がアウストラロピテクス属と同じ時代に生存していたことが確認された最初の例であった。なお、スワルトクランスの化石は断片的なものばかりで、首から下の骨の出土例はまれである。これに関する研究は、ダートの「骨歯角文化」説(後述)の否定材料のひとつになった。 1951年にブルームが没し、ロビンソンもその出土品群の整理に終われるようになると、スワルトクランスの発掘作業は中断された。1966年に発掘作業を再開したチャールズ・ブレイン(英語版)は、いくつかの重要な業績を上げた。ひとつめは、スワルトクランスの成り立ちを復元し、5層に分類した地層のおおよその年代を特定したことである。彼によれば、スワルトクランス第1層はおよそ180万年前から150万年前、第2層と第3層はおよそ150万年前から100万年前で、第4層と第5層はそれよりも新しい。かなり幅のある推定になるのは、南アフリカの化石出土地帯が石灰岩で、保存状態の良好な化石も出る反面、鍾乳洞の天井崩落やそこに落ち込んだ堆積物の重なりなどが非常に複雑な地層を形成していることが一因である。また、火山が近くにないため、東アフリカの化石出土地帯で一般的な、火山灰をアルゴン - アルゴン法にかけるという信頼性の高い手法も使えない分、狭く絞り込んだ年代推定が難しいのである。 ブレインのもうひとつの業績は、第1層・第2層と違い、第3層には火の使用痕があることを突き止めた点である。彼は第3層から出土する獣の骨に、野火で焼けた場合と異なる例が270点あることを認識し、さらにそれらが、人の手を介さずに死んだ骨だとしたら不自然な形で分布していることを根拠に挙げた。第3層からはヒト属の骨は出土していないが、それより下層でヒト属の出土例があることから、火の管理をしたのはヒト属だったと推測されている。これは、ヒトによる火の使用が確実視できる最古の例である。 なお、スワルトクランスではシロアリを食べるときなどに使ったのではないかと考えられている尖った先端を持つ骨角器も見つかっている。これは、後述するドリモレンでも出土した。
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