シナリオ・セッティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 08:41 UTC 版)
「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」の記事における「シナリオ・セッティング」の解説
『のび太の宇宙小戦争』を現代にリメイクする意味を念頭に置いたうえで、佐藤は自分なりのプロットを執筆した。その後、監督の山口晋も同様の変更をもとにしたプロットを執筆していたことが判明する。そこで2人は、本作のゲストキャラクターであるパピのキャラクター性を追求することにした。原作では、物語の前半でパピがPCIAによってのび太たちと引き離されるが、それを踏襲してはパピとのび太たちの交流で生まれてくるものが描けないため、佐藤は山口に相談し、原作の前半部に相当する部分を短縮し、その分をパピとのび太たちの交流に充てたと東洋経済オンラインとのインタビューの中で説明している。同様の理由から、新キャラクターとしてパピの姉・ピイナを登場させた。また、原作のパピは「地球人よりもはるかに優れた知的生命体」という連載当時における宇宙人のイメージに沿った人物として描かれており、違いを受け入れることを普通とする現代(2021年)の子どもたちの価値観とは合わないため、パピが感情的になる場面も入れられた。パピ以外のキャラクターについても、人物像の深堀りが行われた。たとえばスネ夫の場合、「思い切って事を成し遂げたいが、口先だけにとどまってしまう」大多数を代表する存在として描かれていると同時に、同調圧力に屈して自らの意に反することをしてしまうことへの答えとして描かれている。また、スネ夫は原作においても厭戦的な態度を見せる場面はあったが、佐藤は「ほかの星の問題は当事者同士で解決すべきであり、自分たちが介入すべきか」というのは今の自分たちが共感できる感覚であると考え、スネ夫が戦いに消極的になる場面を増やした。ピイナ役の松岡茉優はスネ夫が素直に戦いを恐れる気持ちを吐露したことで逆に励まされたと2022年3月27日の舞台挨拶の中で答えており、もし彼が「みんなが(戦いに行こうと)言うから、(僕も)行く」と答えていたら自分は少し心苦しくなるだろうと述べている。一方、のび太はヒロイックになりすぎてしまうことがあるため、失敗ばかりしているという部分を意識して演出することで、かっこ悪いのび太としての意義を描く試みが行われた。 また、原作漫画ではピリカ星の国民がギルモアを追い詰める課程があっさりと描かれているうえ、最終ページの1ページ目で初めて国民自身がギルモアを倒す場面が描かれる。佐藤は他の部分を強化した以上、終盤の描写を踏襲するとバランスを欠くものの、いいアイデアがなかなか浮かばなかった中、原作漫画では言及のみだったギルモアの戴冠式に着目したと振り返っている。ギルモアの戴冠式はパピの死刑とセットであり、パピの演説の内容はのび太たちとの交流を踏まえたものとなっている。佐藤は「[前略]でも、今の自分にできることは、嘘をつかないで自分の気持ちを伝えることしかないんだと。これは作品全体に通底するテーマです。」と説明しており、ドラえもんの映画すべてに通ずるとしている。また、原作におけるパピの叫びは死刑判決が言い渡される場面だが、国民がその場面を目撃しておらず、負け犬の遠吠えのように見えることから、本作ではギルモアの戴冠式に変更され、国民の蜂起につなげた。
※この「シナリオ・セッティング」の解説は、「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」の解説の一部です。
「シナリオ・セッティング」を含む「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」の記事については、「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」の概要を参照ください。
- シナリオ・セッティングのページへのリンク