QCDS
「QCDS」とは、生産管理や品質評価における指標のことを意味する表現。
「QCDS」とは・「QCDS」の意味
「QCDS」とは、業績アップや顧客満足度の向上を図ることを目的に設定された、生産管理・品質評価の指標である。もともと製造業の分野で考案されたフレームワークだが、建設業やサービス業をはじめ、ITのシステム開発などの分野にも応用されるようになった。QCDSはそれぞれ、「Quality(品質)」「Cost(価格)」「Delivery(納期)」「Service(サービス)」の頭文字をとったものである。このうち、「品質」「価格」「納期」を示す「qcd」は生産管理の3要素と定められ、顧客満足度を満たすための必須要素とされている。そのため、品質に関しては、顧客からの信用保持のために一定水準を保ちながら不良品を根絶すること、競争力を損なわないための適正な価格を維持すること、顧客からの信用を失墜させないように納期は必ず順守することなどが重視される。中でも、最も優先順位が高い項目は品質の担保である。品質の低下は顧客の信用を失わせるだけでなく、製品によってはユーザーの生命を危機にさらす脅威ともなり得るケースがある。さらに、やり直しや修正のためのコストが上乗せされるだけでなく、納期の遅延にもつながりかねないことから、経営の多方面にリスクを及ぼす恐れがある。そのため、品質の担保はあらゆる生産管理の最優先項目となる。次に優先させるものを「価格」か「納期」かのいずれにするかは、状況判断が求められる。価格と納期はトレードオフの関係にあり、コスト削減などを行って価格を重視すれば、外注費や人件費を削ることで納期が厳しくなり、納期を重視すれば外注費や人件費がかさんでコストがかさむことになる。そのため、事前の生産計画を万全にしておき、価格と納期のバランスを常に適正化できる状態にしておくことが必要となる。
「QCDS」の4つ目のサービスに関しては、アフターサービスを含めた顧客サポート全般をさす。また、この「S」に関しては、建設業や施工管理の分野ではサービスではなく、「Safety(安全)」をさすことが一般的とされる。これは建築の現場などにおける作業員の事故やケガの防止を第一義として、安全面に関して管理を強化するのが目的である。事故の発生原因を想定し、未然に防止するよう安全対策を行うこと、また、安全に対する注意を怠らないよう、現場の巡回管理を行うことなどが対策事項とされる。さらにITのシステム開発の分野では、この「S」は「Scope(スコープ)」のことをさす。スコープとは、システム開発としてやるべき範囲のこと。顧客がシステムに実装を求めてくる内容のうち、これはできる、これはできないといったように、要件を定義して完全に境界を定めることを「スコープを決める」という。スコープの決定は、通常QCDに先行して設定されるものである。
「QCDS」を取り入れ、生産性の向上を実現した製造業の事例としては、自動車メーカーであるトヨタの生産方式が知られている。トヨタ生産方式とは、品質の担保の点で不良品の発生を抑え、生産ラインで発生する各種のムダを徹底的に排除することで、最大限の収益化をはかろうとする方法をいう。排除すべきムダは「造り過ぎのムダ」「在庫のムダ」「運搬のムダ」「不良をつくるムダ」「加工そのもののムダ」「動作のムダ」「手待ちのムダ」の7つ。これが従業員に可視化され、作業の平準化をはかることで生産性と業績の向上に成果が見られた。
製品管理の手法には、基本の「QCDS」から派生した「QCDSM」「pQCDSme」などもある。QCDSMとはQCDSに「Moral(やる気)」を付け加えた経営管理部門の指標である。pQCDSmeは、QCDSに「Productivity(生産性)」とMoral、「Enviroment(環境)」を加えたもので、生産性と品質の向上に必要なすべての要素が盛り込まれた、より緻密な生産管理・品質評価の指標となるものである。
「QCDS」の読み方
「QCDS」の読み方は「キューシーディーエス」である。内容を明確化するために「クオリティ・コスト・デリバリー・サービス」と正式に読む場合もある。- キューシーディーエスのページへのリンク