エゾシカによる運行支障
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 13:02 UTC 版)
エゾシカは本州のニホンジカと同種だが、ニホンジカより大きく(ベルクマンの法則)、体重200kgを超える個体もおり、列車と衝突した場合、看過できない問題となる。 JR北海道全体において、エゾシカとの衝突や、衝突に至らないまでも急制動を強いられるなどにより報告される運行支障件数は、近年著しく増加を続けている。その原因は禁猟などによるエゾシカの個体数激増にあると見られている。1990年代前期に年間200 - 300件程度だったものが、2004年(平成16年)度に年間1,000件を超え、2020年(令和2年)度は2,414件にのぼっている。衝突時の衝撃としては300kgを超えるヒグマの方が大きいものの、ヒグマは臆病な性格のため線路周辺に現れることはほとんどなく、また個体数自体がエゾジカより少ないため、列車衝突事故の件数はエゾシカに比べて極めて少ない。 根室本線は、北海道の中でもエゾシカの線路侵入が目立って多い。2020年(令和2年)度の全道2,414件中、937件が釧路支社管内で、そのうち657件は落合以東の根室本線で占めている。 接触対策として、1990年代にはシカが列車に近づかないよう超音波を発する警報器を取り付けたり、列車のライトに光るシカよけの反射等を沿線に設置した。近年ではシカが嫌がる匂いの入った芳香剤の散布、鹿の侵入防止柵の設置なども行われている。 年度シカとの接触回数出典JR北海道全線滝川駅 - 釧路駅間釧路駅 - 根室駅間1987 54 1993 286 59 89 1995 493 83 148 2000 676 116 176 2005 1234 182 277 2010 2070 286 456 2015 1961 254 489 2020 2414 403 372 落合駅 - 釧路駅間 落合駅 - 釧路駅間の2007年(平成19年)度支障件数は128件で、減速して警戒するほか、特に出没が多い浦幌 - 直別間ではエゾシカ侵入防止フェンスの設置を進めている。 釧路駅 - 根室駅間(花咲線) 花咲線区間での2007年(平成19年)度支障件数は335件にものぼる。これは絶対数であり、釧路以西と比較すると、特急・急行も貨物列車もなく、列車本数や営業距離も勘案すれば、列車営業キロあたりでは釧路以西の10倍以上エゾシカの影響を受けているといえる。警笛によりシカに注意を促すために、花咲線用のキハ54はタイフォンをホイッスル(通称「シカブエ」と呼ばれる。JR北海道の車両にはキハ283系など広く用いられている)に換えている。
※この「エゾシカによる運行支障」の解説は、「根室本線」の解説の一部です。
「エゾシカによる運行支障」を含む「根室本線」の記事については、「根室本線」の概要を参照ください。
- エゾシカによる運行支障のページへのリンク