ウィングド・リバティ・ヘッド(マーキュリー)(1916年 - 1945年)
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「10セント硬貨 (アメリカ合衆国)」の記事における「ウィングド・リバティ・ヘッド(マーキュリー)(1916年 - 1945年)」の解説
通例この硬貨は「マーキュリー・ダイム」と呼ばれるが、硬貨にはローマ神話の神であるメルクリウス(英語読みではマーキュリー)は描かれておらず、また硬貨に水銀(英語でマーキュリー)も含まれていない。この硬貨の表側には、伝統的な自由の象徴であるフリジア帽をかぶった女神が描かれている。この帽子の羽は、思想の自由を象徴する意図がある。著名な彫刻家アドルフ・A・ウェインマンによりデザインされたこのウィングド・リバティ・ヘッド・ダイム (Winged Liberty Head dime) は、多くの人々よりこれまでにアメリカ合衆国で製造された硬貨の中でも最も美しいデザインの一つであると考えられている。銀90%、銅10%の金属構成と、17.9mmの直径は、バーバー・ダイムの頃より変わっていない。 アメリカの彫刻家、オーガスタス・セント・ゴーデンスに学んだウェインマンは、1915年に行われた硬貨のデザインコンテストで、他の2人の芸術家を押しのけて見事1位に輝いた。女神のモデルとしたのは、アメリカの詩人ウォーレス・スティーブンスの妻である、エルシー・カッチェル・スティーブンスではないかと考えられている。オリーブの枝が並列された束桿(ファスケス)が描かれている裏側のデザインは、アメリカの戦争への準備と同時に、平和への願望が象徴されている。しかし束桿は1922年以降のイタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニ率いるファシスト党も象徴として用いており、戦時中には束桿のデザインが批判されることとなった。 主に1916年にデンバーで製造された10セント硬貨の大多数は、それまで製造していたバーバー・ダイムで占められていたために、「1916-D」版のダイムは264,000枚しか発行されておらず、収集家からの高い需要がある。こうしてこの「1916-D」ダイムは、比較的良い状態であればかなり高額の価値が付けられるようになった。また、希少価値が高いだけに硬貨の偽物も多い。 このシリーズの硬貨には製造のエラーが見られることも多くあり、束桿の真ん中にある2つの帯にあるはずの分け目の線が、部分的または完全に欠落したものが最も著名である。中でもフィラデルフィア造幣局で発行された1945年の硬貨は、その殆どがこの真ん中の帯の水平な線が左から右へ完全に表れておらず、結果としてこうした硬貨が流通していない通常の硬貨よりも価値あるものとなった。また、1922年、1932年、1933年の製造年が刻まれた10セント硬貨は造られていない。そのほか、フィラデルフィア造幣局で1941年に製造された硬貨の上に1942年の刻印を押した硬貨も価値の高い種類である。デンバー造幣局で同年に製造された硬貨は、この年の刻印があまり見てすぐにわかるものではない。 収集家から特別に関心が寄せられるのは、硬貨の裏側にあり束桿を束ねている紐の絵の状態である。打ち抜かれた状態の良いものには、この2本の紐の間に分かれ目の線がはっきりと見え、「フル・スプリット・バンズ(完全に分かれた紐)」として知られる。こうした紐がはっきりと2本に分かれているのが見える硬貨は、それが見えないものよりも概して高い価値がつけられている。
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