イラク戦争への流用疑惑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 07:06 UTC 版)
「テロ対策特別措置法」の記事における「イラク戦争への流用疑惑」の解説
テロ対策特別措置法に基づく給油は、当然アフガニスタンにおける「不朽の自由作戦」に対する協力支援であり、給油は同作戦の海上阻止行動に従事する艦艇に対する支援として理解されてきたが、この目的で行われた給油が、2003年以降のイラク戦争関連の艦船への補給活動にもなっているとの疑惑があがり問題視された。 まず江田憲司議員が2007年9月1日放送の朝まで生テレビ!で、米軍のウェブサイトの情報を元に給油燃料のイラク戦争への転用疑惑を紹介し、翌日のサンデープロジェクトの中で石原伸晃自民党政調会長もその可能性を認めた。その後、江田議員は自らのウェブサイト上で、給油燃料の8割以上がアフガンではなくイラク作戦に費やされたとする番組内での指摘については、イラクとアフガンのものが一体となった数字ではないかとして見方を修整している(米軍のサイトでは「イラクの自由作戦」のページに「不朽の自由作戦が始まって以来」として日本の提供燃料の量を記載していた。ページは既に削除されているため下記の保存ページ参照)。 更に9月20日、特定非営利活動法人「ピースデポ」の米軍文書を元にした調査や政府の答弁によると、米補給艦「ペコス」が2003年2月25日朝に補給艦「ときわ」から、約83万ガロンの給油を受けたが、ペコスはその後ペルシャ湾方面に移動、同日午後に米空母 「キティホーク」に「ときわ」からの燃料のうち67万5千ガロンの給油をしていた。キティホークは補給後にペルシャ湾に入り、イラクに対する「サザン・ウォッチ作戦」(イラク戦争開戦前)に従事している。 これらのことからは、テロ対策特別措置法に基づく給油がイラクに対する作戦に流用されたとの疑惑が高まり、2007年にテロ特措法の延長問題の検討において問題となった。この問題に対する日本政府の立場は「補給を受けた後に従事する活動の内容は各国が決定するもので、政府として詳細を承知する立場にない」ということであり、テロ特措法の範囲内の活動に対して給油等の支援を行っていることを明記した公文書を関係各国と交換した上で提供をしていることであり、 基本的に各国は給油をテロ特措法の範囲内の活動に対して利用していると考えるし、その詳細について確認することはしないし、どの国のどんな艦艇に給油したか等についても作戦の妨害になる恐れがあるので公表するつもりはないとするものである。また、キティホークへの間接補給については、補給された燃料は同艦のペルシャ湾への移動で消費しつくしており、『不朽の自由作戦』に使われたと考えるべきであると主張している。米国国防総省は、キティホークは25日から28日の間に「不朽の自由作戦」を支援する任務を行っており、燃料はその間に消費しつくされたとして、転用されたとの懸念には根拠がないと発表した。 米海軍横須賀基地の機関紙「シーホーク」2003年5月23日号において、イラクの自由作戦で、イージス艦きりしまと護衛艦はるさめは高度な通信能力で同盟軍の艦船を大いに助けたとの記述があった。後に同紙上で、「対アフガニスタンの作戦名『不朽の自由作戦』と書くべきところを間違った」と訂正がおこなわれた。 当初はこれらの指摘も一国会議員の発言で、信憑性が怪しまれていたがその後、マスコミ各社もこのイラク転用疑惑について盛んに報じ始めた。 なお、米艦に送られる燃料油は、軍基準(艦船用2号軽油またはミルスペックF-76)に適合させる必要上、伊藤忠商事と旭日(あさひ)通産からの随意契約で購入されている事、また使用されるその燃料はドバイにあるシェブロンの製油所で精製された物である事が判明している。
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