イトトンボ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 22:11 UTC 版)
イトトンボ亜目(均翅亜目) Zygoptera | |||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||
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英名 | |||||||||||||||
Damselfly | |||||||||||||||
科 | |||||||||||||||
イトトンボ(糸蜻蛉、豆娘、Damselfly)は、トンボ目(蜻蛉目)・イトトンボ亜目(均翅亜目<きんしあもく>、Zygoptera)に分類される昆虫の総称。
イトトンボ科、モノサシトンボ科、アオイトトンボ科など多くの科を含むが、日本で「イトトンボ」と呼んだ場合は比較的大型のカワトンボ類を除くことが多い。
概要
トンボ科やヤンマ科など、不均翅亜目(トンボ亜目)のトンボは後翅が前翅に比べて幅広いのに対し、均翅亜目は名前どおり前後の翅がほぼ同じ形である。頭部は左右に幅広く、複眼が小さい。腹部も細長い円筒形をしているので、小型の種類では呼び名の通り短い糸くずのように見える。
不均翅亜目が直線的に広い空間を飛び回るのに対して、あまり水辺を離れず、水辺の草の間でぱたぱたと緩やかに羽ばたきながら低く飛ぶものが多い。トンボ類の交尾はオスとメスが輪を作るが、均翅亜目では腹部が細くてよく曲がるため、連結部分がハート型をなす。
幼虫(ヤゴ)も成虫と同様に体が前後に細長い。さらに腹部先端に細いえらが3枚ついていることで不均翅亜目のヤゴと区別できる。
熱帯から亜寒帯まで多くの種類が知られるが、特に熱帯に種類が多い。このうち、南アメリカの熱帯雨林に分布するハビロイトトンボ Megaloprepus coerulatus は体長10cm、開張15cmにも達し、現生トンボの最大種とされている。
下位分類
- イトトンボ科 Coenagrionidae
- Erythromma
- Small red-eyed damselfly (Erythromma viridulum)
- Erythromma
- モノサシトンボ科 Platycnemididae
- アオイトトンボ科 Lestidae
- アオイトトンボ属 Lestes
- Southern Emerald Damselfly (Lestes barbarus)
- オツネントンボ属 Sympecma
- Common Winter Damselfly (Sympecma fusca)
- アオイトトンボ属 Lestes
- ヤマイトトンボ科 Megapodagrionidae
- カワトンボ科 Calopterygidae
- ミナミカワトンボ科 Euphaeidae
- ハナダカトンボ科 Chlorocyphidae
系統
2013年に行われた分子系統解析によると、内部の系統は以下の通り[1]。
イトトンボ亜目 Zygoptera |
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日本のイトトンボ
日本にも多くのイトトンボが分布する。南にいくほど種類が多いが、本州の山地や北海道に分布するエゾイトトンボ Agrion lanceolatum など北方系の種類もいる。成虫として越冬するトンボとして、オツネントンボ(Sympecma paedisca)、ホソミオツネントンボ(Indolestes peregrinus)、ホソミイトトンボ(Aciagrion migratum)の3種が知られている[2]。キイトトンボ Ceriagrion melanurum は全身が黄色で判り易い。他にもアオモンイトトンボ(Ischnura senegalensis)やアジアイトトンボ(Ischnura asiatica)などは都市部でもよく見かけられる普通種である。その一方、グンバイトンボ(Platycnemis foliacea sasakii)やコフキヒメイトトンボ(Agriocnemis femina oryzae)など環境汚染に敏感な種も多く、これらは開発などで生息地を減らしている。
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アオモンイトトンボのオス
Ischnura senegalensis Location 兵庫県芦屋市 -
キイトトンボのオス
Ceriagrion melanurum -
セスジイトトンボのオス
Paracercion hieroglyphicum
脚注
- ^ Dijkstra, Klaas-Douwe B.; Kalkman, Vincent J.; Dow, Rory A.; Stokvis, Frank R.; van Tol, Jan (2013). “Redefining the damselfly families: a comprehensive molecular phylogeny of Zygoptera (Odonata)”. Systematic Entomology 39 (1): 68–96. doi:10.1111/syen.12035 .
- ^ 日本のトンボ (2012)、16-17頁
参考文献
- 浜田康 『土佐のトンボ』 高知新聞社〈高新カラーブックス〉、1991年。
- 井上清・谷幸三 『トンボのすべて』 トンボ出版、1999年、ISBN 4-88716-112-3。
- 尾園 暁、川島逸郎・二橋 亮 『日本のトンボ』文一総合出版〈ネイチャーガイド〉、2012年6月19日。ISBN 978-4-8299-0119-9。
外部リンク
イトトンボ亜目
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:22 UTC 版)
イトトンボ、カワトンボ類のヤゴは、外見が一般的なヤゴとははっきり異なる。頭は左右に長い棒状で、体は前後に細長い棒状、あるいは管状になっている。短い体のものもあるが、幅広くはならない。足は細長く、それを使って歩くが、全身をくねらせて泳ぐものもある。一般にイトトンボ類は体が細長く、柔らかな感じで、褐色から緑に近い色をしている。カワトンボ類は細いがやや短い体で、がっしりとしており、茶褐色から黒っぽい色をしている。 特に目立つ特徴は、腹部末端に細長くて扁平な気管鰓があることである。この鰓は背中側に一つ、腹側左右に一つ、合計三つあって、内部には気管が入り込み、細かく枝分かれしている。この鰓は自切することができて、捕まえた時など、たやすく外れてしまうが、幼虫の生存には影響ないようである。 また、この類のミナミカワトンボ科のヤゴは渓流に生息し、体はやや扁平で、その姿は渓流性のカゲロウの幼虫にやや似る。また、腹部の下面に、節ごとに対になった細い腹鰓をもつ。これは、腹部の付属肢に由来するもので、トンボ目では他に例がない。節足動物は一般に体節ごとに一対の付属肢を持つのが基本である。昆虫においてもそうで、祖先は腹部の体節にも付属肢を持っていたものが、退化してなくなったものと考えられる。幼虫では腹部に付属肢を持つものもあるが、トンボではこの類以外では全く見られない。したがって、それがなんらかの形で残っていることは、原始的特徴と見なしてよい。
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