イギリス風ソネット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 03:15 UTC 版)
16世紀初期にソネットをイングランドにもたらしたのはトーマス・ワイアットだった。ワイアットならびに同時代人のサリー伯のソネットは主としてイタリア語のペトラルカ、フランス語のピエール・ド・ロンサールの翻訳だった。ワイアットがソネットをイングランドに紹介している一方で、サリー伯は英語のソネットの特徴となる押韻構成、韻律、四行連への分割、などを行った。フィリップ・シドニーの『アストロフェルとステラ』(1591年)は、ソネット連作を大変流行させた。続く20年間に、シェイクスピア、エドマンド・スペンサー、マイケル・ドレイトン(en:Michael Drayton)、サミュエル・ダニエル(en:Samuel Daniel)、ブルック男爵フルク・グレヴィル(en:Fulke Greville, 1st Baron Brooke)、ウィリアム・ドラモンド・オブ・ホーソーンデン(en:William Drummond of Hawthornden)など多くの詩人たちがソネット連作を発表した。それらのソネットは基本的にペトラルカの伝統にインスパイアされていて、一般に詩人の女性への愛情を扱っていた。ただしシェイクスピアのソネット連作は例外だった。17世紀にはソネットは他のテーマのためにも書かれるようになり、たとえばジョン・ダンやジョージ・ハーバートは宗教的ソネットを、ジョン・ミルトンは瞑想的な詩としてソネットを使用した。シェイクスピアとペトラルカなどの押韻構成はこの時代を通して人気があった。 ソネットの流行は王政復古期には時代遅れになり、1670年からワーズワースの時代までソネットはほとんど書かれなくなった。ソネットが復活したのはフランス革命の時だった。ワーズワースは数篇のソネットを書き、その中でも最も有名なのが『The world is too much with us』(en:The world is too much with us)とミルトンに向けたソネットである。ワーズワースのソネットは基本的にミルトンのものを手本にしている。ジョン・キーツとパーシー・ビッシュ・シェリーもソネットを書いた。キーツのソネットは部分的にシェイクスピアにインスパイアされた公式かつ修辞的なパターンを用いた。一方シェリーはラディカルに革新し、『オジマンディアス』(en:Ozymandias)というソネットではシェリー独自の押韻構成(「ABABACDCEDEFEF」)を創造した。19世紀を通してソネットは書かれたが、エリザベス・バレット・ブラウニングの『Sonnets from the Portuguese』(en:Sonnets from the Portuguese)とダンテ・ゲイブリエル・ロセッティのソネットの他には、成功した伝統的ソネットはあまりなかった。ジェラード・マンリ・ホプキンスも(しばしばスプラング・リズムで)ソネットを書いた。その中でも最良のものは『The Windhover』で、さらに10-1/2行のカータル・ソネット(後述)の『Pied Beauty』や、24行のコーデイト・ソネット(後述)の『That Nature is a Heraclitean Fire』などの変化形のソネットを書いた。19世紀の終わりになると、ソネットは柔軟性のある多目的形式に応用されるようになっていた。 この柔軟性は、20世紀にさらに広げられた。モダニストの時代の詩人では、ロバート・フロスト、エドナ・セント・ヴィンセント・ミレイ、E・E・カミングスがソネットを書いた。ウィリアム・バトラー・イェイツも半韻を用いたソネット『Leda and the Swan』(en:Leda and the Swan#In poetry)を書いた。ウィルフレッド・オーエンのソネット『死すべき定めの若者のための賛歌』(en:Anthem for Doomed Youth)も20世紀初期のソネットである。W・H・オーデンはその生涯を通じて2つのソネット連作と数篇のソネットを書いて、押韻構成の幅を相当に広げた。また、オーデンの『The Secret Agent』(1928年)は英語で書かれた最初の押韻されていないソネットである。半韻、韻のない、さらには韻律のないソネットが1950年以降とても人気になった。そのジャンルでおそらく最も知られているのは、シェイマス・ヒーニーの『Glanmore Sonnets』と『Clearances』(両方とも半韻を使っている)と、ジェフリー・ミル(en:Geoffrey Hill)の中期のソネット連作『An Apology for the Revival of Christian Architecture in England』であろう。しかし、1990年代は形式主義者が復活したようで、ここ10年ほどは伝統的なソネットがいくつか書かれている。
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