アリとシロアリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 01:25 UTC 版)
体の大きさや巨大な群れを作る社会性昆虫であることなど、アリとの共通点が多いが、アリとシロアリは全く異なった昆虫である。アリはハチ目(膜翅目)の一員で完全変態を行う昆虫であり、幼虫は蛆のような形態をしている。一方、シロアリはゴキブリ目(網翅目)に属する不完全変態の昆虫である。シロアリでは幼虫も成虫によく似た形態をしている。 社会の仕組みについて、アリは雌中心で女王と不妊の雌である働きアリ(職アリ)で構成され、雄アリは一時的にしか生じないのに対し、シロアリでは生殖虫(女王・王)、働きアリ(擬職アリ)、兵アリ(兵隊アリ)などの階級それぞれに雌雄が含まれている。 シロアリの雌生殖虫(女王アリ)は結婚飛行を終えてコロニーが発達してくると、腹部がソーセージのように異様に発達した、他の階級個体とは大きく異なる産卵に特化した外形に変化する。熱帯に分布する大型のものでは体長5cmほどで1日に5万個の卵を産むものもある。対するにアリの女王はグンタイアリ類など一部を除くとシロアリの女王のような特異な外形はしておらず、他の階級個体より一回り大きい程度の差異しか見られないことが多い。それゆえシロアリの女王の方がより生殖に特化して進化したかに見えるが、他の理由もあるため、一概に判断はできない。アリの女王は貯精嚢を有しており、そこに一生分の精子を貯蔵できるため、交尾を済ませれば生殖能力はほぼ一生持続できるのに対し、シロアリの女王は貯精嚢を欠くため、生殖能力を維持するには定期的に交尾を繰り返す必要があり、これがアリには見られない雄生殖虫(王アリ)が存在する大きな理由となっている。 アリの社会では女王と働きアリだけで構成され、種類によっては一部の働きアリが特殊化した大型の兵アリとなるものもあるが、兵アリが分化していないものがむしろ大半である(近年は単純に戦闘に特殊化したわけではないことが明らかになっているため兵アリと呼ばずに大型働きアリ major worker と呼ぶことが普通となっている)。それに対して、シロアリではほぼ全ての種に兵アリがいる。これは、アリは基本的には捕食性の強い肉食の昆虫で、すべての働きアリに高い攻撃力があるのに対して、シロアリは主に枯死植物を食べる昆虫であるため、基本的には攻撃的ではなく、肉食昆虫に狙われる存在だからである。 また、下等なシロアリでは真の働きアリは分化せず、他の階級への分化能力を有する未成熟の幼虫が働きアリとして働いている。つまり、アリ(ハチ)は、親(女王)が自分の子のほとんど全部を不妊の働きアリ(ハチ)にすることで真社会性になったのに対して、シロアリは親が子の一部を兵アリとして不妊化することによって真社会性になったと言っていい。 アリはシロアリにとって最も恐ろしい天敵の一つでもある。熱帯ではシロアリを主たる獲物としているアリも少なくない。日本ではオオハリアリなどがシロアリを捕食することが知られている。
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