アメリカ合衆国における法的位置づけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 01:16 UTC 版)
「芸術としてのゲーム」の記事における「アメリカ合衆国における法的位置づけ」の解説
アメリカ合衆国においては、コンピュータゲームがアメリカ合衆国憲法修正第1条で保護される芸術的な表現であるのかどうかが法的論点であった。アメリカの裁判所は、America's Best Family Showplace Corp. v. City of New York, Dept. of Bldgsをはじめとする1982年頃から始まった未成年者のコンピュータゲーム購入やゲームセンター立ち入りを制限する規制に関する一連の裁判で、コンピュータゲームがアメリカ合衆国憲法修正第1条のもとでの言論の自由をめぐる憲法上の保護を受けることができるのかを問い始めた。コンピュータゲームはピンボール、チェス、ボードゲーム、カードゲーム、団体スポーツなどより表現としての性質が強いわけではなく、それゆえ言論として保護されるものとしては考えられないだろうという理論に基づく判例が出るようになった。こうした裁判のほとんどはコンピュータゲームがアメリカ合衆国憲法修正第1条に基づいて保護されると考えず、行動制限をすべきではないかという配慮は現時点でより説得力があるものだとして地方自治体に有利な裁定を行った。しかしながらこうした初期の裁判により、コンピュータゲームが表象しうるバーチャルな世界ゆえに単なるピンボールマシンよりも発展し、技術革新により先行する判例が変わる可能性も問われるようになった。 『モータルコンバット』の発売により、コンピュータゲームにおける暴力に関する議論が高まり、アメリカ合衆国議会は1993年から1994年に公聴会を実施して、レイティングシステムが無いことについて業界を批判した。公聴会によって1994年にインタラクティヴデジタルソフトウェア協会(のちにエンターテインメントソフトウェア協会と改称)が設立され、業界を規制するために提案された法の成立を免れるためにエンターテインメントソフトウェアレイティング委員会 (ERSB) が作られた。ERSBシステムは任意であったが、小売業者はレイティングのないゲームや「アダルトオンリー」(AO) とレイティングされたゲームを売らない一方、「マチュア」(M) 指定のゲームは未成年者への販売を制限することに同意した。 ESRBシステムができた後も規制が検討された州があり、2000年頃からコンピュータゲームの表現としての性質について法的な場で問い直しが行われた。こうした裁判では、裁判所はコンピュータゲームの2つの性質を認めた。コンピュータゲームは修正第1条で保護される可能性のある表現としての性質を持った作品であり、またミラー・テストを用いたレビューではわいせつとは見なされないので保護されるべく作品となることは妨げられないということである。アメリカ合衆国第7巡回区控訴裁判所で2001年に行われた裁判であるAmerican Amusement Machine Ass'n v. Kendrickはこうした裁判の中で新しく出てきた最も決定的意味を持つ判例と考えられており、リチャード・アレン・ポズナー判事が性的内容に拘わるわいせつは暴力的内容とは別であると認めた。 ポズナーはわいせつな内容にかかわる裁判と異なり、暴力的な内容を修正第1条の保護から排除することを支持する好色な関心は存在しないと考えた。この理論を応用し、コンピュータゲームは修正第1条で保護される作品として控訴裁判所に扱われるようになっり、未成年者のゲームの購入や利用を禁じる規制は憲法違反であるという裁定が一般的に下るようになった。しかしながら最高裁判例が無いため、これは全国的な基準とはならなかった。その後も暴力的な内容の他、2005年の『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』のホットコーヒー問題や2006年にESRBがレイティングをやり直した『The Elder Scrolls IV: オブリビオン』など、Modでのみ見られる性的内容を有するゲームが出てきて、ESRBシステムを義務化し、ゲーム全体をより徹底的に調べてレイティングすることをすすめる新しい法律が提案された。未成年者へのM指定のゲーム販売を禁ずる法律を通過させた州もあった。コンピュータゲーム産業界の業界団体はこうした法律を阻止するべく裁判に訴え、おおむねコンピュータゲームは暴力的なものであっても言論として保護されるという2000年の先行判例に近い裁定を受けている。2011年のBrown v. Entertainment Merchants Associationの裁判でもアメリカ合衆国最高裁判所はゲームが修正第1条で保護されると述べた。
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