アミノ酸配列がタンパク質の三次構造を決定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 21:10 UTC 版)
「de novoタンパク質構造予測」の記事における「アミノ酸配列がタンパク質の三次構造を決定」の解説
タンパク質の一次構造には、タンパク質の全体的な立体構造に必要な情報がすべて含まれているという考えを支持するいくつかの証拠が提示されており、これによりde novoタンパク質予測のアイデアが可能になっている。第一に、機能の異なるタンパク質は、通常、アミノ酸の配列が異なる。第二に、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのようないくつかの異なるヒトの疾患は、一次構造中のたった1つのアミノ酸の変化によってタンパク質の機能が失われることに関連している可能性がある。第三に、多くの異なる生物種にわたって同様の機能を持つタンパク質は、しばしば類似したアミノ酸配列を持っている。たとえば、ユビキチンは、他のタンパク質の分解を制御するタンパク質であり、そのアミノ酸配列は、ショウジョウバエとホモ・サピエンスという異なる種でもほぼ同じである。第四に、思考実験によって、タンパク質の折りたたみは完全にランダムなプロセスとはならず、折りたたみに必要な情報は一次構造の中にコード化されていなければならないと推測することができる。例えば、小さなポリペプチドに含まれる100個のアミノ酸残基がそれぞれ平均して10個の異なるコンフォメーションをとると仮定すると、ポリペプチドには10^100個の異なるコンフォメーションが存在することになる。仮に10^-13秒ごとに1つの可能性のある確認がテストされた場合、すべての可能性のあるコンフォメーションをサンプリングするには約10^77年かかることになる。しかし、体内では常に短い時間軸でタンパク質が正しく折りたたまれており、その過程はランダムではないため、したがってモデル化できる可能性がある。 タンパク質の三次構造をコード化するのに必要な情報はすべて一次構造に含まれているという仮説を裏付ける最も有力な証拠の一つが、1950年代にクリスチャン・アンフィンセンが示したものである。彼は古典的な実験で、リボヌクレアーゼAを、還元剤(安定化しているジスルフィド結合を切断する)の存在下で、尿素(安定化している疎水性結合を破壊する)の溶液に浸すことで、完全に変性させることができることを示した。タンパク質をこの環境から取り除くと、変性して機能しなくなったリボヌクレアーゼタンパク質は、自発的に反跳(はんちょう)して機能を取り戻した。このことは、タンパク質の三次構造が一次アミノ酸配列にコードされていることを示している。もし、このタンパク質がランダムに再形成されていたら、4つのジスルフィド結合の100種類を超える組み合わせが形成されていた可能性がある。ただし、ほとんどの場合、タンパク質が適切に折りたたまれるためには、細胞内に分子シャペロンの存在が必要となる。タンパク質の全体的な形状はそのアミノ酸構造にコードされていても、その折りたたみにはシャペロンの助けを必要とする場合がある。
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