ろうそくの工業生産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 14:31 UTC 版)
「ろうそくの歴史」の記事における「ろうそくの工業生産」の解説
1790年、アメリカのジョセフ・シンプソン(英語版)は、ろうそく製造法の特許を取得している。これは米国の特許制度で2番目に認められた特許だった。 フランスの化学者ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールとジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックは、動物油を化学処理してステアリンを得ることに成功し、1811年に特許を取った。つまり、動物油に石灰を入れて固め(鹸化)、それに硫酸を加えればステアリン酸とグリセリンに分離することができる。このステアリン酸を高圧で押し出し、溶融後に固化させればろうそくとなる。 1820年、フランスのキャンバセレはろうそくの芯に画期的な改良を加えた。それまでの葦やパピルス、木綿糸の芯を供えたろうそくでは、燃え進むにしたがって芯が徒長する。このため炎が必要以上に大きくなり、瞬いたり、ろうが無駄に溶けたり煤を出す欠点がある。そのため、専用の「芯切り鋏」を用いて常に芯を短く切り詰める必要があった。キャンバセレが発明した芯は木綿を三つ編みにしたもので、燃え進むにしたがって自然にほぐれ、先端部が炎の外に出て完全燃焼することで一定の長さに保たれる。これ以降の西洋ろうそくは、みな改良芯を用いた物である。一方、和ろうそくは従来通りに竹に和紙を巻き付けた芯が利用されているため、現在でも芯きりの必要がある。 1834年、ジョセフ・モーガンがろうそくの工業生産を始めている。モーガンは、ピストンとシリンダーを使ったろうそくの連続製造器を作り、その装置で1時間に1500個のろうそくを作っている。これにより、必需品であるろうそくの入手が容易になった。 1829年、ウィリアム・ウィルソンはスリランカにろうそく原料となる植物のプランテーションを作り、1830年にプライスィズ・キャンドルズ(英語版)社を設立した。始めは4平方キロメートルのココナッツ畑、次いでヤシの栽培を開始した。 1820年、カール・ライヘンバッハはコールタールからパラフィンを抽出している。1850年にはスコットランドの化学者ジェームス・ヤング(英語版)はオイルシェールからパラフィンを抽出する方法で特許を取得している。パラフィンの登場で、高品質で安価なろうそくが作られるようになった。 また、1950年代から石油の蒸留残渣からもパラフィンが作られるようになった。石油パラフィンは融点が低く融けやすかったが、ステアリン酸を混合することで融点を上げられることが判明し、19世紀の終わりにはろうそく原料として大量に生産されるようになった。ウィリアム・ウィルソンの弟ジョージも、1854年に石油蒸留を始めている。スタンダード・オイルは1860年代に大規模な石油からのろうそく作りを始めている。石油からの製法は、現在でもろうそくの製法として最もよく使われている。
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