ゆっくり転がるインフレーションとは? わかりやすく解説

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ゆっくり転がるインフレーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/08 15:26 UTC 版)

宇宙のインフレーション」の記事における「ゆっくり転がるインフレーション」の解説

佐藤グース論文発表された翌1982年アンドレイ・リンデ、およびアンドレアス・アルブレヒト(英語版)とポール・スタインハート英語版)のグループそれぞれ独立に、新しインフレーション (new inflation) またはゆっくり転がるインフレーション (slow-roll inflation) と呼ばれるモデル提唱した。これによって泡の衝突問題解決されることになる。古いインフレーションでは、インフレーションの元となるスカラー場があるポテンシャル極小値停留した状態からトンネル効果ポテンシャル障壁越えて転がり落ちる過程としてインフレーションモデル化されるが、新しいインフレーションモデルでは、古いインフレーション比べてポテンシャルの形が極小持たないほぼ平坦な形状になっており、このポテンシャルの上スカラー場ゆっくりと転がり落ちるとされている。このモデルでは宇宙の膨張近似的にド・ジッター宇宙なるだけで、ハッブル・パラメータは実際に減少する、すなわち膨張減速する古いインフレーションド・ジッター宇宙では偽の真空中に生まれるゆらぎのスペクトル厳密にスケール不変になるが、新しインフレーションでは近似的にスケール不変なるだけである。このことはすなわち、インフレーション中のポテンシャルに関する情報を、宇宙マイクロ波背景放射のゆらぎスペクトル指数測定することで原理的に引き出せることを意味している。ゆっくり転がるインフレーションでは、インフラトンポテンシャルがほぼ平坦な領域終端まで達するとインフレーション終わりここからポテンシャル傾きは(エネルギー密度に対して増加して転がり落ちる速度増加する。これがこのシナリオでの再加熱過程で、ポテンシャルエネルギー密度の値に応じてインフラトンとの相互作用によって火の玉宇宙輻射粒子生成される。 このモデルでは、偽の真空状態のトンネル抜け出る代わりにインフレーションスカラー場によってポテンシャルエネルギーの丘を転がり落ち発生する宇宙の膨張比べて場が非常にゆっくり転がるとき(平坦なとき)、インフレーションが起こる。しかしながら、丘がより急になるインフレーション終わり再加熱が起こる。最終的に新しインフレーションは完全に対称的な宇宙作り出さないが、インフラトン英語版)内に僅かな量子ゆらぎ生成されることが示された。これらの僅かなゆらぎは、後の宇宙において生成されるすべての構造にとっての根源的な種を形成する。これらのゆらぎは初めにソ連のViatcheslav MukhanovおよびG. V. ChibisovによってStarobinskyの類似モデル解析する中で計算された。インフレーション文脈では、1982年ケンブリッジ大学における最初期の宇宙についての三週間のNuffieldワークショップで、それらはMukhanovおよびChibisovの仕事によって独立解かれた。そのゆらぎは個別解析行った四つグループによってワークショップの期間中計算された。スティーヴン・ホーキング、Starobinsky、グースおよびSo-Young Pi、およびJames M. BardeenPaul SteinhardtおよびMichael Turnerグループである。 新しインフレーション一般に永遠に続く。スカラー場古典的にポテンシャル転がり落ちるだけだが、量子ゆらぎによって時にはポテンシャルの高い位置に再び戻される場合もある。これらの領域インフラトンポテンシャルエネルギーが低い領域比べて非常に速く膨張する。したがっていくつかの領域ではインフレーション終わっても、インフレーション続いている領域指数関数的に成長するため、インフレーション起きている領域の方が常に宇宙大部分占めることになる。このような、ある領域インフレーション終わって量子力学的ゆらぎのために宇宙大部分インフレーション持続するという定常状態永久インフレーション (eternal inflation) またはカオス的インフレーション (chaotic inflation) と呼ばれアンドレイ・リンデによって最初に提唱された 。永久インフレーション過去においても永遠かどうか、すなわち宇宙は無限の過去から続いているのかどうかについては疑わしいとする意見が多い が、異論もある。そのため、このモデル宇宙初期条件問題解決できるかどうか未解決である。無限の過去から続く永久インフレーションというモデルは、主流派宇宙論における定常宇宙論であると見ることもできる。なぜならこのモデルは完全宇原理満たすからである。 新しインフレーション拡張として、ハイブリッド・インフレーション (hybrid inflation) と呼ばれる別のインフレーションモデルもある。このモデルでは新たなスカラー場導入し、ある一つスカラー場通常のゆっくり転がるインフレーションに対応し別の場がインフレーション終了引き起こす。すなわち、インフレーションが十分長く続くと、第二の場が非常に低いエネルギー状態落ち込む確率増え、これによってインフレーションが終わるというものである

※この「ゆっくり転がるインフレーション」の解説は、「宇宙のインフレーション」の解説の一部です。
「ゆっくり転がるインフレーション」を含む「宇宙のインフレーション」の記事については、「宇宙のインフレーション」の概要を参照ください。

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