最初期の宇宙
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/18 05:43 UTC 版)
初期の高温の宇宙については、宇宙創生から約10-33秒後から始まったビッグバンによってうまく説明されるが、いくつかの問題もある。その一つは、現在の素粒子物理学の理論からは、宇宙が平坦で一様・等方になる必然的理由が存在しない、というものである。しかも、素粒子物理学の大統一理論では宇宙にモノポールが存在するはずだが、実際には全く見つかっていない。これらの問題は、宇宙初期にインフレーションと呼ばれる時期が存在したと仮定することで解決される。このインフレーションによって我々の宇宙は平坦になり、非等方性や非一様性も観測可能なレベル以下に均され、モノポールも指数関数的膨張によって薄められる。インフレーション宇宙の背後にある物理モデルは非常に単純だが、これはまだ素粒子物理学の側面からは検証されておらず、インフレーションと量子場理論の両立には困難な問題が存在している。宇宙論研究者の中には、ひも理論やブレイン宇宙論がインフレーションに代わる解決策を提供すると考えている人々もいる。 宇宙論におけるもう一つの大きな問題に、我々の宇宙には物質が反物質よりも多く含まれているという問題がある。宇宙論研究者は宇宙のX線観測によって、我々の宇宙は物質と反物質が占める領域に分かれているのではなく、圧倒的大部分が物質でできている、と推定している。この問題はバリオンの非対称性と呼ばれ、このような非対称性が生まれた過程をバリオン数生成と呼ぶ。バリオン数生成の理論は1967年にアンドレイ・サハロフによって作られ、バリオンと反バリオンの非対称性が生み出されるためにはCP対称性と呼ばれる素粒子物理学の対称性が物質と反物質について破れていることが必要とされている。しかし現在の加速器実験では、CP対称性の破れの測定値はバリオンの非対称を説明するには小さ過ぎることが分かっている。宇宙論研究者と素粒子物理学者は初期宇宙に存在した別のCP対称性の破れがバリオン非対称を説明するかもしれないと考えている。 バリオン数生成の問題とインフレーション宇宙の問題は共に素粒子物理学と深く関係しており、その解決は宇宙の観測よりも高エネルギー物理学の理論や実験からもたらされるかもしれない。
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