やさしい猫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/09 10:26 UTC 版)
やさしい猫 | ||
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著者 | 中島京子 | |
発行日 | 2021年8月19日 | |
発行元 | 中央公論新社 | |
ジャンル | 長編小説 | |
国 | ![]() |
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言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判 | |
ページ数 | 416 | |
公式サイト | やさしい猫・中島京子 著|単行本|中央公論新社 | |
コード | ISBN 978-4-12-005455-6 | |
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『やさしい猫』(やさしいねこ)は、中島京子による日本の長編小説。読売新聞夕刊の新聞小説として2020年5月7日から2021年4月17日まで連載され[1]、2021年8月19日に中央公論新社より単行本が刊行された[2]。第56回吉川英治文学賞受賞作[3]、芸術選奨文部科学大臣賞受賞作、貧困ジャーナリズム大賞特別賞受賞作。
2023年にNHK総合「土曜ドラマ」枠でテレビドラマ化[4]、また2024年に劇団民藝で舞台化された[5]。
概要・あらすじ
日本の出入国管理制度(入管制度)を背景に、外国人と日本人の家族が直面する理不尽や困難、多様な家族のあり方を問いかける小説である[6][7]。
シングルマザーの奥山ミユキとその娘マヤ、スリランカ出身の青年クマラ(通称クマさん)が家族になろうとする過程を描く。物語はマヤの視点で進み、異国出身のクマラとの出会いから恋愛、家族としての絆を深めていく様子、入管行政による理不尽な困難に直面し、それを乗り越えようとする姿が描かれている。
ミユキは東日本大震災のボランティア活動を通じてクマラと出会い、やがて交際を始める。ミユキの娘マヤもクマラに心を開き、3人は家族同然に暮らすようになる。しかし、クマラは勤務先の倒産により在留資格を失い、入国管理局に収容されてしまう。2人の結婚は「偽装結婚」と疑われ、クマラには退去強制令が出される。ミユキとマヤはクマラを救うため、弁護士や友人の協力を得て裁判に立ち向かう[8][9]。
作品の背景
著者の中島京子は、2017年に東日本入国管理センター(茨城県牛久市)でベトナム人男性が死亡した事件をきっかけに入管行政の問題に関心を持ち、執筆にあたって弁護士や支援者、収容経験者への取材を重ねた。また、連載中には名古屋入管でスリランカ人女性が死亡する事件も発生し、現実社会の問題と小説が重なることとなった[10][11]。
主要登場人物は、シングルマザーのミユキ、娘のマヤ、スリランカ出身のクマラである。物語には、マヤの同級生であるクルド人の少年・ハヤトも登場する。ハヤトは日本生まれ日本育ちだが仮放免の身で、難民申請中という設定である。マヤの初恋の相手でもあり、彼の存在を通じて、日本社会で生きる難民の現実が描かれる[7][9][6]。
書籍情報
- 単行本 - 中央公論新社 ISBN 978-4-12-005455-6(2021年8月19日)
テレビドラマ
やさしい猫 | |
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ジャンル | 連続ドラマ |
原作 | 中島京子 |
脚本 | 矢島弘一 |
演出 | 柳川強 安藤大佑 |
出演者 | 優香 伊東蒼 オミラ・シャクティ 山田真歩 石川恋 南出凌嘉 池津祥子 麻生祐未 余貴美子 滝藤賢一 吉岡秀隆 |
音楽 | 林正樹 |
国・地域 | ![]() |
言語 | 日本語 |
製作 | |
制作統括 | 倉崎憲 |
プロデューサー | 伴瀬萌 大久保篤 |
制作 | NHK |
放送 | |
放送チャンネル | NHK総合 |
映像形式 | 文字多重放送 |
音声形式 | ステレオ放送 |
放送国・地域 | ![]() |
放送期間 | 2023年6月24日 - 7月29日 |
放送時間 | 土曜 22:00 - 22:49 |
放送枠 | 土曜ドラマ |
放送分 | 49分 |
回数 | 5 |
公式サイト | |
特記事項: 7月15日は放送休止。 |
2023年6月24日から7月29日まで、NHK総合の「土曜ドラマ」枠で放送された[4]。主演は優香[12]。
キャスト
主要人物
- 奥山ミユキ
- 演 - 優香[12]
- シングルマザーで保育士。
- 首藤マヤ
- 演 - 伊東蒼[12](小学生時代:太田結乃[13])
- ミユキの娘で高校生。ドラマの語り手[14]。
- クマラ
- 演 - オミラ・シャクティ[12]
- 自動車整備工場で働くスリランカ人。フルネームはMAHAMALAKKARA PATTIKIRIKORALAGE RANASINGHE AKIRA HEMANTHA KUMARA。
ミユキの関係者
- 奥山マツコ
- 演 - 余貴美子[12]
- ミユキの母。山形県鶴岡市に住んている。
- 水上
- 演 - 池津祥子[15]
- ミユキ親子が住むアパートの大家さん。
- ほなみ
- 演 - 石川恋[15]
- ミユキが働く保育園の同僚保育士。
マヤの関係者
クマラの関係者
恵法律事務所
入管
スタッフ
放送日程
放送回 | 放送日 | 演出 |
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第1回 | 6月24日 | 柳川強 |
第2回 | 7月 | 1日安藤大佑 |
第3回 | 7月 | 8日柳川強 |
第4回 | 7月22日 | |
最終回 | 7月29日 |
- 7月15日は『2022年ウィンブルドン選手権』中継(22時 - 翌0時)のため休止。
- 2023年10月1日 - 10月29日にかけての毎週日曜日にNHKワールドTV(外国の放送機関や、国内外ケーブルテレビ・アプリケーションソフト向け)の「NHK DRAMA SHOWCASE」[17]の枠内で、英語字幕スーパー付き(英題「The Kind Hearted CAT」)のバージョンで放送された。
NHK総合 土曜ドラマ | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
正義の天秤 Season2
(2023年5月6日 - 6月3日) |
やさしい猫
(2023年6月24日 - 7月29日) |
遙かなる山の呼び声
(2023年9月23日 - 10月14日) |
脚注
注釈
出典
- ^ “読売新聞の連載小説「やさしい猫」原作、NHKがドラマ化…主演は優香さんで6月放送”. 読売新聞オンライン. 読売新聞 (2023年3月16日). 2023年5月19日閲覧。
- ^ 角田光代 (2024年5月5日). “『やさしい猫』(中央公論新社)”. ALL REVIEWS. 2025年5月9日閲覧。
- ^ “『第56回吉川英治文学賞』贈呈式 京極夏彦ら受賞者が登場”. ORICON NEWS. oricon ME (2022年4月11日). 2023年5月19日閲覧。
- ^ a b “土曜ドラマ「やさしい猫」制作開始のお知らせ”. NHKドラマ. 日本放送協会 (2023年3月16日). 2023年5月19日閲覧。
- ^ “やさしい猫|2024年上演作品”. 劇団民藝. 2025年5月9日閲覧。
- ^ a b “理不尽の連続に立ち向かう中島京子『やさしい猫』”. 本の雑誌 2021年11月号. 2025年5月9日閲覧。
- ^ a b “中島京子さんに聞いた:入管行政に奪われる家族の幸せ。小説を通じて、この国の「埋もれた声」を聞く”. マガジン9 (2021年11月10日). 2025年5月9日閲覧。
- ^ “中島京子著『やさしい猫』 入管制度に立ち向かう親子3人の絆を描く”. marie claire (2021年8月31日). 2025年5月9日閲覧。
- ^ a b “『やさしい猫 』 著者が モデル弁護士に 聞く 入管問題” (PDF). 日本ペンクラブ. 2025年5月9日閲覧。
- ^ “人権軽視の入管行政を問う 新刊『やさしい猫』 中島京子さんに聞く”. 東京新聞 (2021年9月27日). 2025年5月9日閲覧。
- ^ “入管行政を問う小説 中島京子さん「やさしい猫」”. 日本経済新聞 (2021年9月21日). 2025年5月9日閲覧。
- ^ a b c d e f “優香、シングルマザー役でドラマ主演 『やさしい猫』主要キャスト5人発表”. ORICON NEWS. oricon ME (2023年3月16日). 2023年5月19日閲覧。
- ^ @nhk_dramas (2023年7月1日). "#土曜ドラマ【#やさしい猫】 (中略) マヤの小学生時代を演じた #太田結乃 さん。(後略)". X(旧Twitter)より2023年7月2日閲覧。
- ^ “人権軽視の入管行政を問う 新刊『やさしい猫』 中島京子さんに聞く”. 東京ブックカフェ. 東京新聞. 2021年9月27日閲覧。
- ^ a b c d e f “吉岡秀隆、麻生祐未、山田真歩、池津祥子らが土曜ドラマ『やさしい猫』出演決定 メインビジュアルも完成”. TV LIFE web. ワン・パブリッシング (2023年5月19日). 2023年5月19日閲覧。
- ^ “やさ猫通信 第1回 美味しいスリランカ♪”. NHKドラマ. 日本放送協会 (2023年6月24日). 2023年7月2日閲覧。
- ^ NHK DRAMA SHOWCASE
関連項目
外部リンク
- 小説
- テレビドラマ
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