【対領空侵犯措置】(たいりょうくうしんぱんそち)
無許可で防空識別圏を越えて領空に接近する航空機に対し、国家が行う警察的対処。
当該航空機に「領空外への退去」「強制着陸」等の命令を行い、これに従わない場合は最終的に撃墜する。
空軍の主任務の一つであり、多くの国家ではいつ領空侵犯が起きても対処できるよう戦闘機をスクランブル待機させている。
日本では「自衛隊法」を根拠法令として以下のように定め、自衛隊(航空自衛隊)が実務を行っている。
- 自衛隊法第84条
- 防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法(昭和27年法律第231号)その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。
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日本の現行法制における問題点
上述のように、対領空侵犯措置の中には領空侵犯を行った機体への強制的かつ最終的な措置として「対象機の撃墜」がある。
しかし、自衛隊の現行規則では、戦闘機は「領空外への退去勧告」と「警告」しか行えず、攻撃は正当防衛以外許可されていない。
そのため、たとえ領空に侵入されても相手が攻撃してこない限り、撃墜することが出来ない。
しかも、その攻撃も追跡する自衛隊機への攻撃ならば反撃が可能だが、敵が海上の船や地上に攻撃を行った場合、正当防衛が成立しない自衛隊機が敵を撃墜することは出来ない。
これはすなわち、極端に解釈すれば
「領空侵犯機が(空対空ミサイルや空対地ミサイル、爆弾などの)武器を搭載していても、攻撃の意思さえ見せなければ堂々と大都市の真上を通過できてしまう」
ということになるし、
「(9.11事件のように)テロリストにハイジャックされた民間機が政府中枢や大都市の高層建築物に体当たりを仕掛けてきても、法律上は撃墜できない」
ということにもなってしまうのである。
更に、今日の空中戦では高度に発達したミサイルが主役であり、先手を取られた時点でほぼ撃墜が確定する。
したがって、敵がロックオンをするなどの攻撃の意思を確認した頃には、わが方の1機被撃墜が確定したも同然であり、無用な犠牲を招く危険もある。
撃墜を免れても、敵が優位に立ち続けることは変わらないし、そうなれば後続の攻撃機や爆撃機・空対地ミサイルや巡航ミサイルによる空爆、空挺部隊や海兵隊のわが方領土への着上陸侵攻も容易になる。
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