『黄色い本』(2002年)
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「高野文子」の記事における「『黄色い本』(2002年)」の解説
詳細は「黄色い本」を参照 2002年、作品集『黄色い本』刊行。高野の7年ぶりの単行本として話題になり、この作品集で同年手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した。表題作「黄色い本」(1999年)は、青年誌『月刊アフタヌーン』に掲載された72頁の読み切り作品である。雪国を舞台に、作者と同世代の少女が学校に通いながら5巻本の『チボー家の人々』をゆっくりと読み進めていく様を描いたもので、執筆開始から完成まで3年の月日が費やされている。作中では本の活字をコマの中で「絵」として描き、主人公の少女が小説の登場人物と会話を交わすなど、読書体験を表現するための様々な試みが行なわれている。絵柄は読者が作品を読むスピードをコントロールするために意識的に単純化されており、主人公の少女もあえて「かわいくない」造形が選ばれた。斎藤環はこの作品を「いかなるフェティッシュとも無縁な漫画、という高み」に至ったと評している。 「黄色い本」は高野が高校時代、実際に1年かけて『チボー家の人々』を読んだ経験がもとになっている。高野は作品執筆の動機について「そもそも本なんか読んで、漫画なんか描くことになったスタートを描こう、と思った」と語っており、漫画を描くのはこれで最後にしようと思っていたとも述べている。作品を描き終えた後は、資料にした中学時代からの日記も本も「思い出すこともすっからかんになって」すべて捨ててしまったという。「黄色い本」は発表直後こそ大きな反響は無かったものの、単行本が刊行されて以降多数の論者による批評・研究が発表されている。呉智英は「黄色い本」を「田辺のつる」に並ぶ高野の最高傑作であるとし「日本マンガの画期的作品として、長く読み継がれることになるだろう」と評した。 作品集『黄色い本』には他に、社内恋愛を扱った「マヨネーズ」、高齢者向けのホームヘルパーを題材にした「二の二の六」、冬野さほの同名作品をリメイクした小品「Cloudy Wednesday」を収めている。前2者について高野は、それまで自分の作品になかった「大人のエロ」を入れたつもりだと語っている。
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