『ライダー』(Ryder)
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「ジューナ・バーンズ」の記事における「『ライダー』(Ryder)」の解説
小説『ライダー』(1928年)はコーンウォール=オン=ハドソンにおけるバーンズの子供時代の経験を元に描かれている。ライダー家の50年間の歴史を書いている。すなわち、ソフィア・グリーブ・ライダー、祖母のゼイデルのような、貧困に陥った、元はサロンの女主人。彼女の怠惰な息子ウェンデル(彼の人生における不条理な使命は、女性を愛し、子をもうけることである)。彼の妻アメリア。彼の同居する情婦ケイト・ケアレス。そして彼らの子供たち。バーンズ自身はウェンデルとアメリアとの娘ジュリーとして登場している。ストーリーは出演者が多く、様々な視点から語られる。数人の作中人物は、たったひとつの章の主人公として登場し、結局は本文からすっかり姿を消すだけである。ライダー家の年代記の断片に、子供達の話、歌、手紙、詩、寓話そして夢が散りばめられている。文体は章ごとに変わり、チョーサーからダンテ・ゲイブリエル・ロセッティまでの作家のパロディとなっている。『ライダー』はプロット以上に文体に重きが置かれ、そのパロディの対象は聖書や書簡体小説をもふくむ。 『ライダー』も『貴婦人年鑑』も、フランスの民衆芸術から借りてきた、視覚的な語彙のほうを選んで、『嫌味な女たちの書』のビアズリー様式の素描を捨てている。幾つかのイラストレーションは、ピエール・ルイ・デュシャルトルとルネ・ソールニエによって著書『L'Imagerie Populaire』(1926年)に集められた - 中世以来の様々に写し取られてきた諸イメージ - 銅版画や板目木版画に綿密に基づいている。『ライダー』のイラストレーションの猥褻性のためにアメリカ合衆国郵便公社は運搬を拒否し、幾つかのイラストは初版から除外された。その中にはソフィアが寝室用便器に排尿しているのを見られているイメージや、アメリアとケイト・ケアレスが暖炉の側に座って股袋を編んでいるイメージが含まれていた。また文章の猥褻な箇所も削除された。バーンズは、辛辣な序文で、欠けている語やくだりは、読者が検閲によって加えられた「大破壊」がわかるように、アステリスクで置き換えられていると説明していた。1990年のダルキー・アーカイブ版では、欠けている素描が回復されたが、オリジナルの本文は第二次世界大戦中に原稿の破壊とともに失われた。。
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