「移行の技法」とは? わかりやすく解説

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「移行の技法」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 18:54 UTC 版)

トリスタンとイゾルデ (楽劇)」の記事における「「移行の技法」」の解説

ワーグナー音楽流れ途切れることを嫌い、旋律区切り終止感のある和音使わず音楽がなお先にむような印象与えたり(偽終止)、一つ旋律終わらないうちに新し旋律が前の旋律一つの線でつながるように工夫凝らした。これを「無限旋律」という。 例えば、第1幕第1場イゾルデ歌い終わり部分「風よ、ご褒美あげようじゃないの」では、強い決意表明するために、イゾルデ旋律ハ短調主音結ばれる(zum Lohn! の箇所)。このとき、楽器法の上でもハ音集中し終止感を高めている。しかし、一方で和声解決せず、さらに半音階上行・下行緊張高めている。つまりここでは、区切り設定しつつ音楽流れ止めないために、両極端の手法が同時に使用されている。こうした音楽連続性を、さらに大局的に用いたものを、ワーグナーは「移行技法(Die Kunst des Überganges)」と呼んだ1859年12月29日付、マティルデ・ヴェーゼンドンク宛の手紙でワーグナー次のように述べている。 「この、もっとも繊細で、もっとも滑らかな技法最高傑作は、もちろん『トリスタンとイゾルデ第2幕長大場面です。第2場冒頭では、きわめて激し感情諸相のなかで、漲りあふれる<生>が表現され、そして最後には、もっとも厳粛にして内密な<死>への願いへと至ります。これが二つとなるのです。そこで可愛貴女、私がどうやってこの結び合わせどうやって一方から他方橋渡ししたかを見てください。これが、私の音楽形式秘密にほかならないのですから。」 ワーグナーが「漲りあふれる生から、もっとも厳粛にして内密な死への願いへ至る」と言及している第2幕第2場過程は、ドイツ音楽研究家カール・ダールハウス1928年-)の指摘によれば間奏(ブランゲーネの「見張りの歌」)をはさんだ「昼の対話」と「夜の歌」から成っている。この両者それぞれ異な原理作曲されている。「昼の対話」では、「昼の動機」を絶え反復することによって動機による統一性、「夜の歌」では、伴奏のシンコペーション・リズム、変拍子カンタービレ旋律増三和音など動機以外の要素共通性持たせられ滑らかな移行図られるのである。 「移行の技法」はこれまで多くワーグナー研究者によって引用されてきたものの、分析はされなかった。その最初試みがダールハウスのものであり、このような複数原理による創作」は、現代においてようやく意識されるようになってきた概念といえる

※この「「移行の技法」」の解説は、「トリスタンとイゾルデ (楽劇)」の解説の一部です。
「「移行の技法」」を含む「トリスタンとイゾルデ (楽劇)」の記事については、「トリスタンとイゾルデ (楽劇)」の概要を参照ください。

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