「世界史の図式」における位置づけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 14:32 UTC 版)
「枢軸時代」の記事における「「世界史の図式」における位置づけ」の解説
「枢軸時代」について、ヤスパースは前掲書「第1部 世界史/第2章 世界史の図式」として示された世界史観のなかで再び位置づけている。 人間は四たび、いわば新しい基礎から出発したと考えられる。プロメテウス第一に先史時代、すなわち、われわれにほとんど近づきえぬの時代からの出発(言語、道具、火の使用の始まり)。これによって初めて人間が生じた。 第二に古代高度文化の創始からの出発。 第三に枢軸時代からの出発。それによって人間は、全く開かれた可能性を具えて、精神的に真の人間となった。 第四に科学的-技術的時代からの出発。その改鋳をわれわれが、目下自分で経験しているのである。 すなわち、ヤスパースは、文明の発達段階を、 1.先史時代——数十万年前から数万年前にわたる原始時代。人間が他の動物とは異なる人間独自の生活を獲得した時代。 2.古代高度文化の創始——いわゆる四大文明の時代で、文字や大帝国が誕生した時代。ヤスパースは、アメリカ大陸におけるメキシコ、ペルーにみられる古代帝国もこれに含まれるとしている。 3.枢軸時代(本項) 4.科学的-技術的時代——ルネサンス以降の科学技術の時代(新たなプロメテウスの時代) としており、枢軸時代を第3の段階に位置づけている。 第4の科学的-技術的時代は、現代につながる時代 であり、精神的には、宗教改革につらなる諸派、啓蒙主義、そしてドイツ観念論などの諸思想が現れたものの、枢軸時代には遙かにおよばないとされる。ルネサンスは、もともとは枢軸時代の精神の「再生」なのである。また、第4の出発はヤスパースによれば、別々の箇所からでなく、西洋から始まって世界に広まったという点に大きな特徴があるとしている。 ヤスパースは、この4段階をさらに大きく2つにまとめている。彼は人類が「大きく2つ呼吸をしている」と表現している。 「第一の呼吸」は、第1段階から第3段階までであり、「第二の呼吸」は、ルネサンス以降加速した科学技術の発展の段階であり、そこでは「古代高度文化の組織化と計画化にも比すべき事態」をへて、「われわれには依然としてはるかに認めがたいが、真の人間が生成する新たな第二の枢軸時代へ向かうのである」としている。 「第一の呼吸」と「第二の呼吸」の違いは、第二の呼吸をするわれわれ現代人が、2回目の呼吸であるため、前回の歴史的経験をもっていること。さらに「第一の呼吸」が並列し分散したものであったのに対し、今回は共通の基盤を持った人類全体としての呼吸であるとしている。
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