早野 (川崎市) 早野 (川崎市)の概要

早野 (川崎市)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 07:16 UTC 版)

早野
大字
早野聖地公園
北緯35度34分25秒 東経139度31分00秒 / 北緯35.573611度 東経139.516617度 / 35.573611; 139.516617
日本
都道府県  神奈川県
市町村 川崎市
行政区 麻生区
人口情報2023年(令和5年)6月30日現在[1]
 人口 620 人
 世帯数 284 世帯
面積[2]
  0.924990029 km²
人口密度 670.28 人/km²
設置日 1939年昭和14年)
郵便番号 215-0016[3]
市外局番 044(川崎MA[4]
ナンバープレート 川崎
ウィキポータル 日本の町・字
ウィキポータル 神奈川県
ウィキプロジェクト 日本の町・字
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麻生川の桜並木

地理

麻生区の南東端に位置し、鶴見川と支流の早野川が流れる南側は低地となっており、北や東は丘陵地帯となっている[7]。一帯は大半が市街化調整区域農業振興地域に指定されている[8]こともあり、南方の平地は水田として使われ、また丘陵地は雑木林となっている[7]ほか、中央から北部にかけて霊園・公園である早野聖地公園が所在している。また、神奈川県道12号横浜上麻生線の沿線には住宅や商店、また早野聖地公園があることにより石材店なども見られる[9]

早野は北端で王禅寺虹ケ丘と、東端から南端にかけて横浜市青葉区もみの木台鉄町寺家町と、西端では下麻生王禅寺東と接している(特記のない町域は川崎市麻生区所属)。

水利

早野は周囲を鶴見川早野川が流れているが、水田より低く、農業用水として活用することはできなかった[10]。そのこともあり、時期は不明であるが、『新編武蔵風土記稿』にも7つのため池(上池・五郎池・林ケ池・中ノ谷池・堤入池・竜ケ谷池・下谷池)が作られていたことが残っている[10] [11]。池の水は厳密に管理されていたが、土地改良前には田から田へと水を流さざるを得ず、水を無駄にしないよう細心の注意を払うこととなった[12]

池の維持管理(補修・泥浚いなど)は、住民の手で行われてきたが、1991年(平成3年)には災害対策事業としてため池の改修工事の申請が行われ、国費が1/2、県費が1/4、地元負担が1/4で事業が進み、3年後に完工した[13]。もともとため池の地権者が川崎市であったこともあり、維持管理費は川崎市から委託するという形で水利組合へ支出されるようになった[13]

用水に悩むのは早野ばかりでなく、隣接する鉄村では鶴見川から水を引いていたが、この用水路が早野を通過しており、早野が堀敷料を受け取っていた。不作の年は堀敷料をめぐって争いも起こったが、この関係は戦後に早野を通過せず鶴見川から水を汲み上げるポンプ場を設置するまで続いた[14]

歴史

当地では8世紀頃に築造されたと推定され、人馬の線刻画が描かれた早野横穴墳墓が発見されており、勅旨牧である石川牧との関連も指摘されている[15]。一方、早野の文献への初出は時代を下って1559年永禄2年)の「小田原衆所領役帳」で、「小机早野郷」として残る[7]

江戸時代の当地は旗本の富永氏領であった[7]。村は、正保年間の「武蔵田園簿」で2205斗あまり、「元禄郷帳」や「天保郷帳」では225石5斗あまり、幕末の「旧高旧領取調帳」では250石(うち5石5斗は戒翁寺領)というように推移していた[7]。「新編武蔵風土記稿」によれば家は25軒で[5][11]、水利のために溜池が設けられていた[16]。隣村の鉄村との間では境界争いも行われ、争いにまつわる言い伝えが残る「鉄火の松」や境界線に築かれた「境塚」などの名が、現代にもその名残りを伝えている[16]

明治以降、当地は都筑郡早野村から柿生村を経て、川崎市に編入された。農業として、明治からの稲作以外に昭和からは野菜作り、戦後には庭木シイタケ栽培[5]も行われ、第二次大戦までは養蚕も盛んであった[17]。早野の農地を大きく分けると「広地中」・「谷戸田」・「山田」に分かれるが、広地中は21世紀でも農業が続いている一方、ほとんどの谷戸田は埋められ早野聖地公園となり、そして山田は大規模開発で虹ケ丘へと変貌し、農地は見る影もない[18]

地名の由来

由来ははっきりしないが[7]、いくつかの説が唱えられている。

  • 土地の貧しさからが育てられており、「ヒエノ」から転じたとする説[7][16]
  • 当地が勅旨牧である「石川牧」に当たり、「駿馬の駆ける野原」に由来するという説[5][7]
  • 平野から「ヘエノ」→「ハヤノ」と転じたとする説[5]

沿革

小字

早野には、富士山下・広地(こうち)・矢崎前・上ノ原・長沢田・堺塚・中ノ谷(なかのやと)・梅ヶ谷(うめがやと)・山田という小字が存在する[21]。なお、堺塚と山田の各一部は虹ケ丘となっている[22]


  1. ^ a b 令和5年町丁別世帯数・人口 6月末日現在” (XLS). 川崎市 (2023年7月25日). 2023年9月21日閲覧。 “(ファイル元のページ)(CC-BY-2.1)
  2. ^ a b 町丁別面積(総務省統計局「地図で見る統計(統計GIS)」の数値)”. 川崎市 (2018年5月22日). 2021年12月12日閲覧。
  3. ^ a b 早野の郵便番号”. 日本郵便. 2021年8月11日閲覧。
  4. ^ 市外局番の一覧”. 総務省. 2019年6月24日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 角川日本地名大辞典』、p.728。
  6. ^ 区別町名一覧表(麻生区)”. 川崎市 (2014年10月20日). 2021年12月12日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 川崎地名辞典(下)』、p.240。
  8. ^ 角川日本地名大辞典』、p.728。なお、川崎市都市計画情報インターネット提供サービスにより2012年3月13日時点でも指定されていることを確認(2012年4月3日閲覧)。
  9. ^ 角川日本地名大辞典』、p.1070。
  10. ^ a b 七つの池とともに』、p.76。
  11. ^ a b 新編武蔵風土記稿 早野村.
  12. ^ 七つの池とともに』、p.78。
  13. ^ a b 七つの池とともに』、p.81。
  14. ^ 七つの池とともに』、p.29。
  15. ^ 早野横穴墓”. 川崎市. 2012年4月3日閲覧。
  16. ^ a b c 川崎の町名』、p.267。
  17. ^ 七つの池とともに』、p.89。
  18. ^ 七つの池とともに』、p.86。
  19. ^ 七つの池とともに』、pp.51-52。
  20. ^ 七つの池とともに』、p.84。
  21. ^ a b 川崎地名辞典(下)』、p.241。
  22. ^ 川崎の町名』、p.268。
  23. ^ a b 平成7年国勢調査の調査結果(e-Stat) - 男女別人口及び世帯数 -町丁・字等”. 総務省統計局 (2014年3月28日). 2019年8月16日閲覧。
  24. ^ a b 平成12年国勢調査の調査結果(e-Stat) - 男女別人口及び世帯数 -町丁・字等”. 総務省統計局 (2014年5月30日). 2019年8月16日閲覧。
  25. ^ a b 平成17年国勢調査の調査結果(e-Stat) - 男女別人口及び世帯数 -町丁・字等”. 総務省統計局 (2014年6月27日). 2019年8月16日閲覧。
  26. ^ a b 平成22年国勢調査の調査結果(e-Stat) - 男女別人口及び世帯数 -町丁・字等”. 総務省統計局 (2012年1月20日). 2019年8月16日閲覧。
  27. ^ a b 平成27年国勢調査の調査結果(e-Stat) - 男女別人口及び世帯数 -町丁・字等”. 総務省統計局 (2017年1月27日). 2019年8月16日閲覧。
  28. ^ a b 令和2年国勢調査の調査結果(e-Stat) -男女別人口,外国人人口及び世帯数-町丁・字等”. 総務省統計局 (2022年2月10日). 2022年2月20日閲覧。
  29. ^ 麻生区の小学校(町丁名順)”. 川崎市 (2017年11月20日). 2022年7月31日閲覧。
  30. ^ 麻生区の中学校(町丁名順)”. 川崎市 (2017年11月20日). 2022年7月31日閲覧。
  31. ^ a b c 経済センサス‐活動調査 / 令和3年経済センサス‐活動調査 / 事業所に関する集計 産業横断的集計 事業所数、従業者数(町丁・大字別結果)”. 総務省統計局 (2023年6月27日). 2023年9月15日閲覧。
  32. ^ a b 経済センサス‐活動調査 / 平成28年経済センサス‐活動調査 / 事業所に関する集計 産業横断的集計 都道府県別結果”. 総務省統計局 (2018年6月28日). 2019年10月23日閲覧。
  33. ^ 神奈川県神社庁/神社検索/子ノ神社”. 神奈川県神社庁. 2019年9月13日閲覧。
  34. ^ 郵便番号簿 2020年度版” (PDF). 日本郵便. 2021年8月7日閲覧。
  35. ^ 交番・駐在所の所在地”. 麻生警察署. 2021年12月12日閲覧。


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