右翼パネル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 05:06 UTC 版)
右翼パネルに描かれている女性は、左上の開かれた窓越しに塔が見えることから聖バルバラであると考えられている。3世紀に殉教したといわれるバルバラは、中世に広く崇敬されていた聖女だった。『聖人伝』によれば、裕福な非キリスト教徒の父親ディアスコロスが、娘バルバラを多くの求婚者から遠ざけるために塔に監禁した。幽閉されたバルバラは司祭を塔に招き入れ、キリスト教の洗礼を受けたが、これに激怒した父親に追い詰められ首をはねられたとされている。そして、カンピンが活動していた時代には、バルバラをモチーフとする絵画作品が多く描かれた。未完成の作品ではあるが、ヤン・ファン・エイクにも1437年に複雑なゴシック様式の塔を背景としたバルバラを描いた詳細な下書きが残っている。 カンピンはバルバラを、焚き火を背にして聖書に読みふける女性として描いた。深いひだが表現された豪奢な緑色のドレスに身を包み、まとめられていない茶色の髪はそのまま肩へと流れ落ちている。バルバラの身体は繊弱そうに描かれているが、ドレスに隠れた肩や膝は解剖学的に見ると写実的に表現されているとはいえず、まるで骨格が存在しないかのようにさえ見える。 『ウェルル祭壇画』の訴求力は、質感豊かに表現されたバルバラの衣服と、二箇所からの光源によって陰影がつけられ輪郭が浮かび上がる、周囲に配されたものの精緻な表現によって高められている。焚き火からの暖かい赤みを帯びた炎は、窓から射し込む硬質な光と好対照を成しており、このような効果は左翼パネルには見られない。焚き火の上の飾り棚にはガラス製の小瓶が置かれ、壁にとりつけられた燭台には火がついていないロウソクが立てられている。さらに焚き火の上の壁面には詳細に表現された三位一体を現す彫刻が描かれている。 描かれている室内は宗教的な場所ではなく、当時の典型的な中流家庭の内装であり、カンピンの1425年から1428年ごろの作品とされる『メロードの祭壇画』と共通するものが多く描かれている。たとえば、格子と雨戸つきの窓、女性が座る長椅子、テーブル上の花瓶に生けられた斜めの百合などである。著述家ピーター・マーレイとリンダ・マーレイは、後になって描かれた『ウェルル祭壇画』のほうが構成に優れ、透視図法が正確に使用されているとしている。 『ウェルル祭壇画』に採用されている透視図法によって床面は急勾配に描かれ、この作品を観るものの位置がバルバラよりも下であり、聖女を仰ぎ見るかのような効果を与えている。これはヤン・ファン・エイクが数年前に描いた『受胎告知』からの影響である。多くの消失点が含まれる作品で、とくに画面右下から角度をつけて描かれた長椅子、サイドボード、暖炉、そして雨戸へと伸びるラインがこの作品に奥行きをもたらしている。著述家ヴァルター・インゴは、このような印象的な室内の描写が、バルバラの身体表現が解剖学的におかしいという見方をまったく重要ではないものに格下げしているとした。
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右翼パネル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 06:32 UTC 版)
右翼パネルには、赤い服を身につけた抱神者シメオンが、まだ幼いキリストを聖母マリアから受け取って抱いている場面が描かれている。画面手前では、ヨセフがひざまずいてシメオンを見上げながら、2羽のハトを抱いている。
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右翼パネル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/05 02:09 UTC 版)
右翼パネルでは同様に革新的な方法で地獄の光景を描いている。地獄の暗い世界は赤く燃え上がり、その中で悪魔たちはまるで建設業者であるかのように、円形の塔を急いで完成させようとしている。ある者は乾草車と同様の位置に立て掛けられた長いはしごを使って建築資材を運び上げ、ある者は塔の壁をさらに高く建設するためにセメントを作り、またある者はそのセメントを壁に塗ってレンガを積んでいる。別の悪魔は罰せられるために絶えず送り込まれる罪人たちを連行しているが、労働にいそしんでいる悪魔たちは彼らに背を向けている。これはホセ・デ・シグエンサ(英語版)神父によると、地獄行きの罪人があまりに多いために、もはやその魂を受け入れる部屋や建築物が不足していることを表している。右翼パネルは建造物の火災が繰り返されるボスの典型的な作品であり、ウィーン美術アカデミーの『最後の審判』(The Last Judgment)の右翼パネルや同じくプラド美術館の『快楽の園』の右翼パネルにも同様の火が見られる。それらは燃やされた建造物であり、火薬など当時の兵器に触発されたかのように、火が下から燃え上がっているように見える。ボスが描いた地獄は軍事的対立の場所のようである。
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右翼パネル
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「聖アントニウスの誘惑の三連祭壇画」の記事における「右翼パネル」の解説
右翼パネルは聖アントニウスの観想を表している。伝説によると、空を飛ぶ魚に乗った2人の人物はサバトに参加するために悪魔から飛ぶ能力を手に入れた。中景には贅沢の象徴である裸の女性が描かれている。彼女はテントが掛けられた虚ろな木の幹の中から聖アントニウスをのぞき見ており、ヒキガエルは彼女のためにテントを開いたままにしている。彼女の魅力的な肢体は、画面右に描かれている聖人に提供されており、聖人は同時に鑑賞者を見ながら熟考している。聖人の右隣にいる赤いマントとかざぐるまを身に着けた小人は人間の無思慮の象徴である。最後の誘惑は前景に描かれている。裸の悪魔に支えられたテーブルの上にはパンと水差しが置かれており、テーブルの下では人間と悪魔が殺し合っているが、テーブルクロスで隠されて聖人からは見えない。テーブルを支える人間の1人が片足を瓶に突っ込んでいるのは性行為の暗示である。背景にはそびえ立つ街、風車、湖が描かれている。
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右翼パネル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 15:19 UTC 版)
「最後の審判の三連祭壇画 (ウィーン美術アカデミー)」の記事における「右翼パネル」の解説
右翼パネルでは地獄で責め苦を受ける罪人の魂が描かれている。その様子は中央パネルの描写と同じであるかのように見えるが、実際にはボスはいくつかの描写によって両者を区別している。画面下の中央に描かれている悪魔は地獄の領主サタンであり、別の悪魔によって罪人たちの罪状が読み上げられている。またそのすぐ上の赤いテントでは罪人たちの魂が一か所に集められて罰を受け、みな一様に激しく苦しんでいる。背景では多くの場所で赤い炎が燃え上がり、それが遠方まで続いている。
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右翼パネル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 18:12 UTC 版)
人間たちが悪魔の群れに様々な責め苦を受ける地獄を描いた場面。人間たちを拷問する責め道具にハープ・手回し琴・笛などの楽器があることから「音楽地獄」と呼ばれる場合もある。怪奇幻想画家としてのボスの本領が発揮されており、多種多様な化け物が登場する。ここにも寓意や象徴が随所にみられる。全体に暗色が優勢であるが、明色が効果的に配置されていて強い印象を与える。 最も目を引くのは画面の中央部に立つ怪物である。胴体は割れた卵の殻で、中は居酒屋になっている。2本の脚は木の幹でできていて、そのため「樹幹人間」と呼ばれる。卵殻の胴の向こう側には顔があり、写実的で不気味ですらあるが、これはボスの自画像ではないかとする説もある。その頭上の円盤上にあるのは、心臓を思わせる赤い風笛(バグパイプ)である。周囲を悪魔と人間が楽しげに踊っているようであるが、前景と中景では悪魔たちが亡者を、それぞれの生前の罪に応じて責め立てている。 椅子に座り、頭に丸い釜をかぶり、鳥の顔をした青い怪物(通称「地獄の王子」)が人間を飲み込んでは亡者の堕ちる穴の中に排泄しているが、これは暴食の罪への罰であると考えられている。その左側で女が怪物に尻の鏡を向けられているのは虚飾の罪への罰だと考えられている。守銭奴は尻から金貨を穴に排泄している。他にも、ボスの想像力の豊かさを明瞭に示す多種多様な怪物が描かれている。「樹幹人間」の左上には、1本の矢で貫かれ連結された巨大な耳(通称「耳の戦車」)が、ナイフを突き出して人間たちを切り裂いて進んでいる。背景は戦と火事で、戦闘場面と建物が激しく燃え盛り、人々が地獄へと追われて行く様子が描かれている。
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