【A-5】(えーご)
North american A-5 Vigilante(ビジランティ)
1950年代にノースアメリカン社が開発し、アメリカ海軍航空隊に実戦配備された艦上攻撃機。
愛称は英語で「自警団員」という意味。
名目上は艦上攻撃機だが、実質上は核兵器の運用のみを目的とした戦略爆撃機といえる。
冷戦初期において、相互確証破壊を担うのは航空機であり、特に迅速な攻撃をおこなうことのできる超音速機が重要になると考えられた。
本機は洋上の空母から発進し、敵地内陸部の拠点を素早く核攻撃することを目的につくられた。
マッハ2で連続飛行することが求められ、抗力を極限まで抑えるため、核爆弾や落下式タンクを胴体内に収納することはもとより、アレスティングフックまでもが機内への引き込み式となった。
また、F-15やMiG-25といった、後のマッハ2級戦闘機で主流となる二次元形空気取入口や全浮動式の水平・垂直尾翼などをいち早く採用し、超音速飛行への適応性を高めた。
しかし、本機のセールスポイントでもあった「連続超音速飛行」の実態は、いわゆる超音速巡航ではなく、双発で設けられたJ79ターボジェットのアフターバーナーを常時稼動させ続けるというものであったため、非常に燃費が悪く、大量の燃料を必要とした。
本機のもう一つの特徴であった「リニア式爆弾倉」と呼ばれるウェポンベイ兼燃料庫は、ユニークな構造をしていた。
2基あるエンジンの間に2基の落下式タンクと核爆弾を格納し、目標上空で機尾を開き、ドローグガンで核爆弾を投下すると同時にタンクを投棄するというものである。
投下後は通常の飛行機と同様に機内の燃料タンクで飛行する。
しかし、このシステムは空母から発進する際、カタパルトの衝撃で燃料タンクが脱落するなどトラブルも多かった。
莫大な燃料を搭載するため、艦上機としては非常に大きな高翼式クリップトデルタの機体であった。
このため、母艦はフォレスタル級以降の、いわゆるスーパーキャリアーに限定された。
主翼は低速での揚力を得るために吹き出しフラップを装備している。
エルロンは、フラップ部分を大きくするために省略されており、水平尾翼の差動と左右各3枚のスポイラーの協調動作でロール制御を行う。
核戦争を前提とした多くの軍用機がそうであるように、核爆発の閃光から機体を守るために白く塗装されている。
また、キャノピーは前後席が独立したクラムシェル式キャノピーで、後席は大半が白く覆われており、両側面に小型窓を持つ。
やがて、核兵器の運用主体が飛行機から弾道ミサイル・戦略潜水艦へ移ると、多くの戦略爆撃機がそうであったように、本機も本来の任務から外された。
その後本機は、通常兵器の運用能力を持たなかったため、速度と長大な航続能力を活かして偵察機型のRA-5Cへと改修され、1979年の退役まで、その寿命を全うした。
スペックデータ
乗員 | 2名 |
全長 | 22.31m |
全高 | 5.91m |
全幅 | 16.15m |
主翼面積 | 71.4㎡ |
空虚重量 | 17,000kg |
最大離陸重量 | 31,750kg |
兵装搭載量 | 2,270kg(最大) |
エンジン | GE J79-GE-10ターボジェット(推力79.6kN)×2基 |
最高速度 | マッハ2.1 |
上昇限度 (実用/限界) | 14,800m/28,000m |
海面上昇率 | 2,438m/min |
戦闘行動半径 | 2,026km |
最大航続距離 | 2,908km/5,150km (外部増槽使用時) |
兵装 | 固定武装なし 胴体内にMk.27・Mk.28・Mk.43熱核爆弾×1発 翼下パイロンにMk.43熱核爆弾×2発または通常爆弾、増槽等 偵察機器一式(偵察用カメラ(可視光線・赤外線)、AN/ALQ-61電子偵察システム用PECMアンテナ、 AN/AAS-21赤外線センサー、AN/APD-7側方監視レーダーなど)(RA-5C) |
派生型(カッコ内はモデル名および旧呼称)
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