館林市
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/23 12:57 UTC 版)
概況
今から約2万年前に館林に最初に人々が住み始めた事が確認されている。中世になると赤井氏、長尾氏、由良氏などが館林を本拠地とし、最終的には1590年に徳川四天王の一人である榊原康政が関東以北への押さえとして館林城に入り城下町を整備した。江戸時代の第五代将軍徳川綱吉が城主だった時期(25万石)もある。近隣農村からの農産物の集積地であったことや水が豊富であったことから明治維新後に近代的設備の加工業が興り、いちはやく近代化が進んで栄えた[2]。
ツツジの名勝・つつじが岡公園や、全国的に有名な分福茶釜の物語で知られる茂林寺、群馬県立館林美術館、製粉ミュージアムなどの観光地がある。
群馬県の平成の大合併以前からあった市としては、唯一市町村合併を行わなかった市であるが、邑楽郡大泉町を除く邑楽郡4町との合併に向けた研究会を設置していた。小麦が多く取れることから、日本のチェルノーゼムと自称している。また七五三は、館林城主徳川徳松の健康回復を願って1681年に始まったものが全国に広がった。
地理
東毛地域と呼ばれる群馬県の東部に位置し、市域の北部は渡良瀬川を隔てて栃木県佐野市及び足利市、東部は群馬県邑楽郡板倉町、南部は明和町及び千代田町に、西部は邑楽町に接する。
南北を渡良瀬川、利根川の2大河川に挟まれ、鶴生田川が市街地を東西に、市西部を多々良川、近藤川が南北に流れ、茂林寺川、新堀川、新谷田川、谷田川が市南部を貫流している。城沼、多々良沼、近藤沼、茂林寺沼などの沼が点在する低湿地帯と台地(大宮台地から切り離された館林台地、主に低台地)から成り立っている。
人口
2005年に8万人に達したが、その後は減少に転じた。2021年の人口は約7万4000人。
中国 | 556人 |
フィリピン | 313人 |
ブラジル | 299人 |
ペルー | 107人 |
韓国・朝鮮 | 104人 |
バングラデシュ | 80人 |
タイ | 78人 |
(2007年7月1日現在)
館林市と全国の年齢別人口分布(2005年) | 館林市の年齢・男女別人口分布(2005年) | ||
■紫色 ― 館林市
■緑色 ― 日本全国 |
■青色 ― 男性
■赤色 ― 女性 | ||
館林市(に相当する地域)の人口の推移 | |||
総務省統計局 国勢調査より |
気候
冬から春先にかけて北風(からっ風、赤城おろし)が吹き、夏は雷が多く発生する。
また、他県境付近の市(埼玉県熊谷市、群馬県前橋市など)と同様、夏の時期には40°C近い猛暑に見舞われることがある。
- 2007年8月15日には最高気温40.2°C、翌8月16日にも40.3°Cを観測した。最高気温40°C以上を2日連続で観測するのはこれが観測史上初であった。
- 2011年6月22日には全国で最初の猛暑日を観測した。また、翌々日6月24日には最高気温39.3°Cを観測し、館林市の6月の観測史上最高気温を更新した。
- 2013年8月10日には最高気温40.1°Cを観測した。
- 2018年7月23日にはこれまでの観測場所で最高気温40.1°Cを観測した。ただし、後述の観測所移転により同日の最高気温は39.4°Cとなっている[3]。また、同年の夏は館林市に限らず全国的に猛暑に見舞われた(2018年の猛暑も参照)が、8月18日には最低気温15.9°Cを観測し、館林市の8月の観測史上最低気温を更新した。
- 猛暑日の年間日数は国内有数であり、2010年(41日)[4]、2011年(30日)[5]、2012年(32日)[6]、2014年(23日)[7]、2015年(29日)[8]には国内最多を記録した。
これらの猛暑の発生は、発達した太平洋高気圧がもたらす温かい大気が、当市の北西にある赤城山方面から、熱風となって吹き降りるフェーン現象のためである。
2001年から市民一斉気温測定を行い、市内の気温分布を調査している。アメダスの記録と比べ、露場が広く、芝生である館林城跡地では0.0〜0.4°C低く、交通量の多い道路沿いでは2〜3°C高い。館林市中心部では1〜2°C高く、郊外の森林や水辺では市街地より3〜5°C低いことから、高温は市街地で発生することが分かった(ヒートアイランド現象)。市民は打ち水や緑のカーテンなどで気温を下げる活動を行っている。2008年6月に「暑さ対策本部」(本部長は市長)を設置し、市民、企業、行政が一体となって暑さ対策に取り組むことになった。
アメダス観測所は2018年6月11日まで館林消防署(美園町)敷地内にあった。土の上に防草シートを敷いて設置されている他、周辺の立地条件などから温度が上がりやすいのではないかとインターネット上で指摘され、挙句の果てに「ズル林」などとも揶揄されてきた[9]。そんな中、観測所が6月12日群馬県立館林高等学校(富士原町)敷地内に移転された。温度に関する指摘の声を認識していた気象庁は、既存設備撤去後の消防署内の跡地に簡易観測装置を設置、新旧観測場所の観測結果を7月2日から10月1日まで公開、比較できるようにしている[3]。
- 最高気温 - 40.3°C(2007年〈平成19年〉8月16日)
- 最低気温 - -8.8°C(1984年〈昭和59年〉1月20日)
- 最大日降水量 - 228.0mm(2019年〈令和元年〉10月12日)
- 最大瞬間風速 - 28.3m/s(2009年〈平成21年〉8月9日)
- 夏日最多日数 - 152日(2013年〈平成25年〉)
- 真夏日最多日数 - 90日(2023年〈令和5年〉)
- 猛暑日最多日数 - 43日(2023年〈令和5年〉)
- 熱帯夜最多日数 - 46日(2023年〈令和5年〉)
- 冬日最多日数 - 91日(1984年〈昭和59年〉)
- 真冬日最多日数 - 0日(観測記録なし[注 1])
館林市(館林地域気象観測所)の気候 | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年 |
最高気温記録 °C (°F) | 18.9 (66) |
24.0 (75.2) |
27.1 (80.8) |
33.2 (91.8) |
35.4 (95.7) |
39.4 (102.9) |
39.9 (103.8) |
40.3 (104.5) |
39.3 (102.7) |
33.9 (93) |
25.4 (77.7) |
25.2 (77.4) |
40.3 (104.5) |
平均最高気温 °C (°F) | 9.6 (49.3) |
10.6 (51.1) |
14.3 (57.7) |
20.2 (68.4) |
24.8 (76.6) |
27.4 (81.3) |
31.2 (88.2) |
32.7 (90.9) |
28.3 (82.9) |
22.4 (72.3) |
16.8 (62.2) |
11.8 (53.2) |
20.8 (69.4) |
日平均気温 °C (°F) | 4.0 (39.2) |
4.9 (40.8) |
8.5 (47.3) |
14.0 (57.2) |
18.9 (66) |
22.4 (72.3) |
26.1 (79) |
27.3 (81.1) |
23.4 (74.1) |
17.6 (63.7) |
11.5 (52.7) |
6.2 (43.2) |
15.4 (59.7) |
平均最低気温 °C (°F) | −0.7 (30.7) |
0.1 (32.2) |
3.4 (38.1) |
8.6 (47.5) |
14.0 (57.2) |
18.5 (65.3) |
22.4 (72.3) |
23.5 (74.3) |
19.8 (67.6) |
13.7 (56.7) |
6.9 (44.4) |
1.5 (34.7) |
11.0 (51.8) |
最低気温記録 °C (°F) | −8.8 (16.2) |
−7.0 (19.4) |
−4.7 (23.5) |
−1.0 (30.2) |
3.6 (38.5) |
11.0 (51.8) |
14.6 (58.3) |
15.9 (60.6) |
10.2 (50.4) |
2.8 (37) |
−2.0 (28.4) |
−5.9 (21.4) |
−8.8 (16.2) |
降水量 mm (inch) | 37.2 (1.465) |
34.2 (1.346) |
70.1 (2.76) |
84.6 (3.331) |
114.2 (4.496) |
142.3 (5.602) |
158.6 (6.244) |
143.9 (5.665) |
167.9 (6.61) |
160.6 (6.323) |
56.0 (2.205) |
33.0 (1.299) |
1,202.6 (47.346) |
平均降水日数 (≥1.0 mm) | 3.8 | 4.4 | 8.3 | 8.9 | 10.3 | 12.1 | 12.6 | 9.6 | 11.8 | 9.7 | 6.0 | 3.8 | 101.2 |
平均月間日照時間 | 212.3 | 194.9 | 196.9 | 196.4 | 189.6 | 131.1 | 152.7 | 175.5 | 133.5 | 142.4 | 168.6 | 193.8 | 2,087.6 |
出典:気象庁 (平均値:1991年-2020年、極値:1978年-現在)[10][11] |
町丁名
館林地区
- 本町1-4丁目
- 千代田町
- 富士見町
- 栄町
- 仲町
- 西本町
- 代官町
- 台宿町
- 広内町
- 朝日町
- 大手町
- 城町
- 尾曳町
郷谷地区
- 加法師町
- 当郷町
- 若宮町
- 瀬戸谷町
- 坂下町
- 東広内町
- 細内町
- 千塚町
- 田谷町
- 四ツ谷町
大島地区
- 大島町
赤羽地区
- 上赤生田町
- 赤生田本町
- 赤生田町
- 羽附町
- 花山町
- 楠町
- 羽附旭町
六郷地区
- 新宿1-2丁目
- 緑町1-2丁目
- 松原1-3丁目
- つつじ町
- 美園町
- 堀工町
- 分福町
- 南美園町
- 近藤町
- 青柳町
- 苗木町
- 諏訪町
- 東美園町
- 西美園町
- 小桑原町
- 富士原町
三野谷地区
- 野辺町
- 上三林町
- 下三林町
- 入ヶ谷町
多々良地区
- 高根町
- 新栄町
- 松沼町
- 木戸町
- 日向町
- 大街道1-3丁目
- 西高根町
- 成島町
- 大谷町
- 赤土町
- 北成島町
渡瀬地区
- 下早川田町
- 上早川田町
- 傍示塚町
- 足次町
- 岡野町
- 大新田町
地名
館林の地名が出てくる古いものに15世紀の歴史を記した『鎌倉大草紙』があり、応永22年(1415年)11月の終わりの條に、上杉禅秀が館林を討って上野国の過半を従えたと出てくる[13][14]。その後表記は館林、立林の両方が見られ、読みもたてばやし、たちばやしの両方があったが、永禄以降に現在の言い方に定まったと思われる[13]。
栃木県足利市 栃木県佐野市 | ||||
邑楽町 | 板倉町 | |||
館林市 | ||||
千代田町 | 明和町 |
注釈
出典
- ^ 総務省統計局 経済センサスと統計地図(大都市圏の売上高)【1.関東大都市圏】[1]
- ^ 『君は隅田川に消えたのか―藤牧義夫と版画の虚実』駒村吉重、講談社 (2011/5/12) p22
- ^ a b 気象庁 | 館林観測所移設
- ^ 2010年夏 猛暑日、真夏日等の日数のランキング。他に埼玉県熊谷市でも同じ日数の猛暑日を観測した。
- ^ 2011年夏 猛暑日、真夏日等の日数のランキング
- ^ 2012年夏 猛暑日、真夏日等の日数のランキング。他に埼玉県熊谷市、鳩山町、兵庫県豊岡市でも同じ日数の猛暑日を観測した。
- ^ 2014年夏 猛暑日、真夏日等の日数のランキング
- ^ 2015年夏 猛暑日、真夏日等の日数のランキング
- ^ 「ズル林」の汚名返上なるか 群馬・館林アメダス移設へ:朝日新聞デジタル
- ^ “平年値(年・月ごとの値)”. 気象庁. 2024年2月閲覧。
- ^ “観測史上1~10位の値(年間を通じての値)”. 気象庁. 2024年2月閲覧。
- ^ “国勢調査 / 平成22年国勢調査 / 小地域集計 10群馬県”. 2018年3月14日閲覧。
- ^ a b 館林と立林およびその呼称について丸山瓦全、『館林郷土叢書. 第5輯』館林郷土史談館 編 (館林図書館, 1940)
- ^ 鎌倉大草紙13 上杉禅秀の乱・その4鎌倉大草現代語訳、芝蘭堂
- ^ 享保年間における館林騒動川島勘左衛門、『館林郷土叢書. 第4輯』館林郷土史談館 編 (館林図書館, 1940)
- ^ “群馬 館林市・板倉町合併協議会が休止を決定 住民サービスなどめぐり溝”. 産経新聞. 2019年2月2日閲覧。
- ^ “里沼(SATO-NUMA)-『祈り』『実り』『守り』の沼が磨き上げた館林の沼辺文化―」が令和元年度文化庁「日本遺産」に認定されました|館林市”. www.city.tatebayashi.gunma.jp. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “新館林市議18人決まる”. 2018年11月18日閲覧。
- ^ “議員の紹介 勤続年数・年齢順 - 群馬県議会(令和5年4月30日現在)”. www.pref.gunma.jp. 群馬県. 2023年4月30日閲覧。
- ^ “アゼリアモール”. アゼリアモール. 2018年8月25日閲覧。
- ^ “アクロス館林”. 大和情報サービス. 2018年8月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “館林市の交流都市”. 館林市. 2016年5月17日閲覧。
- ^ a b c “姉妹(友好)提携情報”. 自治体国際化協会. 2016年5月17日閲覧。
- ^ “都市間交流事業について”. 姫路市. 2016年5月17日閲覧。
- ^ “榊原公ゆかり都市災害時相互応援に関する協定” (PDF). 姫路市. 2016年5月17日閲覧。
- ^ “資料編” (PDF). 館林市. 2016年5月17日閲覧。p.322
- ^ “資料編” (PDF). 館林市. 2016年5月17日閲覧。pp.321-322
- ^ 『2020年6月6日(土) ダイヤ改正を実施! 東武スカイツリーライン・伊勢崎線・日光線・鬼怒川線など【一般列車に関するお知らせ】』(PDF)(プレスリリース)東武鉄道株式会社、2020年5月11日 。2023年1月29日閲覧。
- ^ a b c 『鉄道ジャーナル』1987年4月号、通巻245号(第21巻第5号)、p.140。鉄道ジャーナル社。
- ^ 谷村左右助勝武万延元年遣米使節団員名簿
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