肉芽腫 肉芽腫の概要

肉芽腫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/30 06:09 UTC 版)

クローン病患者の非乾酪性肉芽腫(ヘマトキシリン-エオジン染色)

以前「にくがしゅ」と読むこともあったとされるが、現在は医学分野において「にくげしゅ」の読みが一般的[1]である。

原因

生体内に異物(それは感染源をはじめとして、有害であることが多い)が入り込んだ際に、それに対する防御反応として炎症が起きる。その結果異物の有害性(生体にとって不利益な刺激)そのものをうまく弱体化できればよいが、それができない場合には、刺激を和らげるために異物を「隔離」してしまえばよい。この「隔離」によって最大の効果を得ようとする活動が肉芽腫形成である。このように異物を分解したり除去できるのか、それとも「隔離」するしかないのかは、宿主免疫機能と異物の性質の相互関係にかかっている。十分な免疫力があれば肉芽腫は、細胞内に感染して殺すことのできない病原体を終生無症状のままコントロールすることも可能である。また肉芽腫性反応は、異物だけでなく腫瘍細胞に対しても有効なコントロールをできることがある。

肉芽腫反応を起こしうる原因は非常に多いが、ヒトの肉芽腫の原因になるものには、肝生検のデータなどからわかるものとして以下のものがある[2](以下の疾患あるいは物質で起こる可能性があるだけで、必ずしも普通に肉芽腫形成が起こるわけではない)。重要な疾患については後に詳述する。

寄生虫住血吸虫症、内臓および皮膚リーシュマニア症アメーバ赤痢内臓幼虫移行症回虫症
細菌腸チフスブルセラ症野兎病リステリア症エルシニア症アクチノマイセス症猫ひっかき病心内膜炎、ウィップル病、ノカルジア症、腹部膿瘍
マイコバクテリウム属結核非定型抗酸菌症類結核型ハンセン病
ウイルスサイトメガロウイルスエプスタイン・バール・ウイルス、B型インフルエンザウイルスセンダイウイルス
真菌ヒストプラズマ症コクシジオイデス症ブラストミセス症クリプトコッカス症アスペルギルス症カンジダ症ニューモシスチス肺炎
その他Q熱鼠径リンパ肉芽腫梅毒

形成のしくみ

組織に侵入した異物や感染源あるいはそれらに起因する炎症反応の残骸は、通常は組織マクロファージや単球などの貪食細胞によって貪食、分解される。しかし感染源の中には貪食細胞そのものに感染し、細胞内で増殖するものもある。感染された貪食細胞は、活性化T細胞の放出するサイトカインによって一酸化窒素を産生し、感染した生物を殺す。また感染源を抗原提示し、これを認識した細胞傷害性T細胞 (CTL) が貪食細胞そのものを殺すこともある。

こうして貪食をしたが異物を分解できないマクロファージが類上皮細胞となる。またこれらの貪食細胞がT細胞由来のインターロイキン-4インターフェロンγなどのサイトカインによって遊走能を抑制され、融合して巨細胞となる。線維化、瘢痕化はマクロファージ由来のインターロイキン-1などによって起こる。

感染源ではないが、多量の異物や分解不可能な異物を貪食した場合にも肉芽腫が形成されることがある。


  1. ^ 皮膚病理組織学用語ーにくげ”. 日本皮膚病理組織学. 2023年3月30日閲覧。
  2. ^ Murray (1999)
  3. ^ 三田村忠行 (1999)。
  4. ^ 山木戸道郎 (1999)。
  5. ^ Sell, Stewart & Wisecarver, James L. (1996), p.585


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