肉芽腫性脳炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/12 08:35 UTC 版)
アカントアメーバが引き起こす肉芽腫性脳炎は日和見感染であり、ヒトで発症に至ることは稀である。世界中でおよそ 400 症例が報告されており、その生存率は数パーセントである。感染が起こるのは多くの場合免疫不全、糖尿病、悪性腫瘍、栄養失調、全身性エリテマトーデス、アルコール依存症などの患者に対してである。アカントアメーバは皮膚の外傷から侵入したり、あるいはシスト態の細胞が呼吸によって呼吸器へと吸入されたりする。アメーバは血流に乗って中枢神経系へと広がり、血液脳関門を突破する。この突破の機構は良く分かっていない。続いて起こる結合組織への侵入と炎症性反応の結果、神経系は数日のうちに重篤な障害を受ける。病死後の検死によれば、患者には深刻な浮腫や出血性壊死が認められている。この病気に罹った患者には、亜急性の症状として意識障害、頭痛、発熱、肩こり、発作、脳神経麻痺、そして死に至る昏睡などが見られ、一週間から数ヶ月続く。アカントアメーバ脳炎は症例や知識の蓄積が不足していることもあり、有効な診断法や処置は確立されていない。 アカントアメーバの感染による症状は、しばしば結核性髄膜炎のような細菌性の髄膜炎や、ウイルス性脳炎のそれに類似する。病状の誤診断は往々にして非効果的な処置につながる。正しくアカントアメーバ性のものであると判断された場合、処置としてはアンフォテリシンB、リファンピシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリム、ケトコナゾール、フルコナゾール、アルベンダゾールなどの投与が(試験的ではあるが)効果的とされている。時宜を得た正しい診断、対処法の改良、そして病原体への理解を深める事が、アカントアメーバ感染症の転帰を良い方向へ導くために重要である。
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