日本における漢字 日本語の表記

日本における漢字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/03 05:33 UTC 版)

日本語の表記

日本国憲法原本「上諭」(1ページ目)。漢字と仮名が混用されている。

現代における日本語の一般的な表記法は漢字仮名交じり文であり、漢字と平仮名(昔の法令などでは片仮名)を交えて表記する。漢字は実質的な意味を表す語に使われ、平仮名は主に活用語尾[注 1]助詞に使われる。朝鮮語などでは漢字が主として字音語にしか使われないのに対し、日本語では和語にも使われ、外来語を除いてほとんどの語に使うことができる。煙草(タバコ)や合羽(カッパ)、珈琲(コーヒー)など大航海時代以降にヨーロッパから入った語彙には、外来語であるにもかかわらず漢字が使われるものがある。

日本の事物を表したり、大航海時代だけでなく幕末明治に欧米諸国から入った概念・用語を日本語に取り入れたりするため、中国大陸にはない和製漢字国字も多数生み出された(後述)。

日本語における文字の使用は、一般に5世紀から6世紀頃の漢字の本格的輸入とともに始まり、漢字を日本語の音を表記するために利用した万葉仮名が作られた、とされている。一方、藤堂明保は控え目に見ても3世紀から5世紀には日中両国で漢字が日本に入っていたことは確かであると唱えており[1]森浩一北九州弥生時代銅鏡には大抵漢字で文章が表されており、倭人が銘文の内容を理解できたとすれば、漢字受容の歴史が大きく変わってくるとしている[2]。また、『後漢書』や『倭人伝』における日中の外交記述からも、遅くとも2、3世紀には支配者層における文字の使用を想定する方が自然であるとの意見もある[3]。一方で東日本では、平安時代前期に至っても使用される漢字は限られていた[4]。当該地域では漢字が記号としてしか認識されておらず、古代の漢字の普及には著しい地域偏差が存在していたことが確認されている[5]

宮脇淳子は、「朝鮮半島は全て『江』と表記されるということです。シナ大陸では、黄河は『河』で、揚子江すなわち長江は『江』です。つまり、南部の川は『江』で、北部は『河』と表す。ということは、シナ大陸の北と南では言葉が違っていたということであり、朝鮮半島に最初に入った漢字を使う人々は、を経由して南から入った可能性が高いと考えられるわけです。その理由として、燕国の東側は拓けるのが遅かったことが挙げられます。その地域一帯は北方騎馬民の勢力圏だから、商隊はすぐに襲われるので安全なルートじゃない。高句麗に入っても靺鞨などが蟠踞しています。そこで海を利用するわけですが、同様に漢字を使う人たちは、日本列島にも東シナ海経由で来た可能性が高いのです。朝鮮半島から日本への渡来人は、いわば第二派だったという説が、現在、かなり有力になっています」と指摘している[6]

やがて、漢字の草体を元に平安時代初期に平仮名が、漢字の一部を元に片仮名が作られたとされる。

なお、仮名に対して漢字を真名(まな)と呼ぶ[7]


注釈

  1. ^ いわゆる助動詞を含む。

出典

  1. ^ 東京大学文学部講義、「中国音韻学の諸問題」、1948年。
  2. ^ 森浩一『日本神話の考古学』朝日新聞社、1999年。
  3. ^ 宝賀寿男「第一章 戦後の神武天皇」『「神武東征」の原像』青垣出版、2006年。
  4. ^ 平川南 「墨書土器とその字形 : 古代村落における文字の実相」『国立歴史民俗博物館研究報告』35巻 国立歴史民俗博物館、1991年11月、72頁。
  5. ^ 平川、1991年、124頁。
  6. ^ 宮脇淳子 『朝鮮半島をめぐる歴史歪曲の舞台裏 韓流時代劇と朝鮮史の真実』扶桑社扶桑社新書〉、2020年4月30日、46頁。ISBN 978-4594084523 
  7. ^ 『新明解国語辞典』三省堂「真名」より
  8. ^ Gunarto, Hary (2004-02). “Building dictionaries as basic tools for machine translation in natural language processing applications”. 立命館言語文化研究 (立命館大学国際言語文化研究所) 15 (03): 177-185. https://bibdb.ninjal.ac.jp/bunken/ja/article/100000146695 2020年4月4日閲覧。. 
  9. ^ ハリー・グナルトのウェブサイト Gunarto's Kanji Learning Systems
  10. ^ 安岡孝一 (2011年2月24日). “「鉄」と「鐵」”. 三省堂 WORD-WISE WEB. ことばのコラム 人名用漢字の新字旧字 第82回. 2020年4月4日閲覧。
  11. ^ “日本初の漢字学会設立 京都、漢検協会呼び掛けで”. 日本経済新聞. 共同通信. (2018年3月30日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28781350Q8A330C1AC1000/ 2018年6月2日閲覧。 
  12. ^ 漢字の「正しい筆順」存在しないのに… 教科書に掲載、入試に出題されることも|漢字学習 どこまで必要?|朝日新聞EduA
  13. ^ 押木秀樹 横書き移行に伴う変化について
  14. ^ 白川(文字逍遥) PP..353-354





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「日本における漢字」の関連用語

日本における漢字のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



日本における漢字のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの日本における漢字 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS