手
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/17 22:28 UTC 版)
- 手首から指の先までの部分[1]。腕の末端にある器官。本項で詳述する。
- 日本では人体の左右の肩から出ている長い部分[2][1]、腕 (arm) も「手」とよく呼ばれる。この記事でも若干ふれるが、腕参照のこと。
- 組織を人と見立てて、組織でちょうど人体の手のようにはたらく人のこと[2]。
- 手をはたらかせてすること[2]。 術、手段、方法のこと。幅広い用法がある。
- 手で指すもの[2]。方向[2]。「上手(かみて)」(=うえのほう)「山手(やまて)」(=やまのほう)など。
- 陶芸で、特定産地の作品を模倣したもの。贋作とはことなり、生産者・消費者の双方に模倣であるとの合意があるもの。用例:三島手、高麗手、安南手等。
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手は、5本の指、平(=手の平)、甲(=「手の甲」)からなる。
手と解剖学
手 | |
---|---|
![]() | |
ラテン語 | manus |
英語 | hand |
器官 | 運動器 |
動脈 |
橈骨動脈 尺骨動脈 |
静脈 |
上肢の浅静脈 上肢の深静脈 |
神経 |
尺骨神経 正中神経 橈骨神経 |
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手の骨
手の骨は、手根骨(近位の橈側から尺側へ舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨の 4個と、遠位の橈側から尺側へ大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨の 4個)と中手骨 5本に加え、基節骨・中節骨・末節骨が第二指(人差し指)から第五指(小指)に各 3本ある。 第一指(親指)には中節骨は無く基節骨と末節骨で構成されている。これら 27本の骨を合わせて手を構成している。
指の名については「指」のページの一項「指の名称」を参照のこと。
手の皮膚
それぞれの指の先端には爪があり、それを取り巻く部分の皮膚(触球)は感覚が鋭敏であり細かい作業などがこなせる。 爪に続く手の甲(手背)側の皮膚は、掌側と異なりゆとりがあり、つまむことができる。これは屈曲の目的を果たすために必要なことである。
掌、および、掌側の指の皮膚は身体の他の部位と異なり、皮脂腺が無く指紋・掌紋がある。また、メラニン色素が少ないため、人種を問わず他の部位より白く見えることになる。指の節や、掌には深浅さまざまな溝(運動ひだ)が走っている。 指紋・掌紋はヒトに特有のものではなく、霊長類に広く見られるものである。これには、掌の発汗作用と同様に、木から落ちないための滑り止めの働き、霊長類の樹上生活における適応進化の結果であったとの説がある。
手の窪み
手の親指を伸ばして反らした時、親指の付け根に出来る三角形の窪みを「解剖学的嗅ぎタバコ窩」、「解剖学的嗅ぎ煙草入れ」、「スナッフボックス」、あるいは、単に「タバコ窩(-か)」という。
手のサイズ
日本の経済産業省が人間生活工学研究センター(HQL)に委託し、2004-2006年に行った人体寸法の調査(6700人を対象[3])では、若年層ほど男女とも「手が華奢(きゃしゃ)」な傾向がある、とのデータが得られた[4]。同センターは2010年にも、9項目(手長、手幅1(斜め)、手掌長、第二指長、第二指近位関節幅、第二指遠位関節幅、手首囲、手囲、握りこぶし囲)の調査を実施している[5]。
右手と左手
人には、基本的には、一対の手、つまり右手と左手がある。
日本語では、古風には、右手を「馬手(めて)」、左手を「弓手(ゆんで)」と言う。ここには武士の記憶が織り込まれている。鎌倉時代から続くならわしで、(「武士は三つ物」といわれるように)武士には馬を駆りつつ弓を引くこと、「騎乗での弓術」が必須で、それを行う時は、右手に馬の手綱を持ち、左手に弓を持ったので、それぞれ「馬手(めて)」「弓手(ゆんで)」と言うようになったとされる。
ただし、一般に、各人、右手を使うほうが得意とする人と、左手を使うほうが得意とする人がいる。両手のうちで、動かしやすかったり、思い通りに器用に動かせたり、より力がいれられるほうの手を利き手という。右手のほうが器用な人を右利きと言い、左手のほうが器用な人を左利きと言う。
右手と左手は(形状はほぼ対称だとしても)機能としては、非対象になっていることが多いのである。
人類全般では、右利きの比率のほうが高い。 欧米人でも右利きのほうが多い。ただし、欧米人では日本人よりも左利きの割合(比率)が高い。
世界的に、『右手を「清浄の手、聖なる手」、左手を「不浄の手」』とする観念が存在する。これは、世界的に存在する『右を善、左を悪』とする観念と関係がある。[注 1]
世界的に、右手は剣や矛など武器を持つ手であり「攻撃・破壊」を、左手は盾を持つ手であり「防御・創造」を、象徴する。
中国の伝統的な挨拶では、左手の「掌」に右手の「拳」を付けて(あるいは、包み込んで)礼をする(拱手)。右手は陽で左手は陰であり、右手の拳は「陽(太陽)」を、左手の掌は「陰(月)」を表している。[疑問点 ]
注釈
- ^ インドやイスラム諸国では排泄行為後は(トイレットペーパーで拭くのではなく)手桶の水を流しながら左手で肛門周囲の汚れを洗い落とすのが習慣だったため、後の時代ではトイレ備え付けのシャワーホースを使って肛門周囲を水洗浄することが通常になったとは言え、かつての習慣から左手は衛生面で不潔(不浄)な手とされており、食事の際には左手を隠し、右手でつかんで食べる文化がある。公の食事の席では左手を出すのは無礼な行為とされている。ただしインドやイスラムでも左利きの人はいる。この場合食事は右でその他の動作は左で行う(ただしインドでこの食事文化が厳格なのは右手の指先だけで食べる習慣があるインド南部であり、インド北部ではほとんど意識されていない)。
- ^ 割り当て領域の場所は、遺伝である程度は傾向づけられているが、各人がどんな活動をどの程度行うか、行わないか、ということで、領域が広がったり狭くなったりする。例えば脚ばかりを使う人は、脚に割り当てられる領域がいくらか広がってゆく。頻繁に使うと、(神経網、シナプスが枝を伸ばし)結果として若干 割り当て領域が広がる。
- ^ 人にとって、口によるコミュニケーションが主たるものでついそちらばかりに気をとられがちだが、実は、「目は口ほどにものを言う」と言われており、目にも人の感情がしっかりと現れている、人の眼をよく見ると 人の気持ちが良く分かる、とか、「あの人は口では何も言わなかったけれど、眼に感情が現れていた」とか、「眼をよく見たほうがコミュニケーションも円滑になりますよ」といった意味である。そして、実は人は手でもコミュニケーションを行っている。
- ^ しばしば仏像が示す、さまざまな手の形。
- ^ 例えば聖書の次の箇所である。
- ^ ロイヤル・タッチは結核の一種に対して有効な治療とされ、時代が下って17~18世紀ごろにも儀礼化して盛んに行われ、ルイ15世は戴冠式で2,000人に触れたという。この治療対象は瘰癧(るいれき。頸部リンパ節結核。英語:Scrofula、別名:the king's evil)で、日本などでは珍しかったと思われるが、近世までのヨーロッパでは生活環境の違いなどから、儀礼的な行為も含め、ずっと多かった模様である。
- ^ カニやサソリなど、節足動物でも前足に特徴のある場合はそれを「手」ということもあるが、これもあくまで俗用である。[要出典]
- ^ 生物学では、手を「ヒトの前肢」と言うことがある。これは学問的で正式な表現である。だが、逆向きに、動物の前肢を「手」と呼んでしまうのは、あくまで俗用であり、学問的ではない。
出典
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