小熊英二 小熊英二の概要

小熊英二

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/31 09:02 UTC 版)

小熊 英二
人物情報
生誕 (1962-09-06) 1962年9月6日(61歳)
日本 東京都昭島市
出身校 東京大学農学部卒業
両親 小熊謙二(父)
学問
研究分野 歴史社会学・相関社会科学
研究機関 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻
慶應義塾大学総合政策学部教授
学位 博士(学術)
主要な作品 『「日本人」の境界-支配地域との関係において』
『〈民主〉と〈愛国〉』
主な受賞歴 サントリー学芸賞
第57回毎日出版文化賞第2部門
第3回大佛次郎論壇賞
角川財団学芸賞
第14回小林秀雄賞
公式サイト
小熊英二研究会
テンプレートを表示

東京大学農学部卒業。ナショナリズムと民主主義を中心とした歴史社会学が専門。確固たる問題提起と膨大な文献にあたる緻密な論証で高評価を得る。著書に『単一民族神話の起源』(1995年)、『生きて帰ってきた男』(2015年)などがある。

来歴・人物

東京都昭島市出身。東京都立立川高等学校を経て、名古屋大学理学部物理学科を中退し、1987年東京大学農学部卒業、岩波書店入社(1996年まで在籍)。当初は雑誌『世界』編集部に在籍したが、営業部へ異動になった後に休職して、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻に入学、1998年『「日本人」の境界-支配地域との関係において』で博士(学術)取得。1997年慶應義塾大学総合政策学部専任講師、2000年助教授、2007年教授。慶應義塾大学アート・センター所員。

父である小熊謙二シベリア抑留を受け、1948年8月に日本へ帰国。その後、元日本兵の朝鮮系中国人が日本国政府を相手取ってシベリア抑留の戦後補償を求める訴訟の共同原告となっている[1]

1995年の『単一民族神話の起源』と1998年の『<日本人>の境界』において、「日本=単一民族」説が戦後になって唱えられたものであり、植民地を保有していた戦前日本においては、「複数民族が共有する日本」が思想的に提唱されていたと主張した。

2002年の『〈民主〉と〈愛国〉』の出版動機として、小林よしのり戦争論』や新しい歴史教科書をつくる会をめぐる論争の中で、小林や「つくる会」もその批判者も戦後史に対する無知が目立っていたことを見て、戦後に対する認識をきちんとしておかなければいけないと思ったことを挙げている[2]。『〈民主〉と〈愛国〉』において戦後思想史の中では、一見、相反すると思われている「民主」と「愛国」という概念が、丸山眞男などの議論ではむしろ相性の良い概念として使われていることなどを紹介し、戦後日本におけるナショナリズムの多様性を主張した。

2012年8月22日には、野田佳彦首相と反原発市民団体「首都圏反原発連合」の代表者11人(小熊を含む。ただし小熊は「首都圏反原発連合」のメンバーではない)との首相官邸における面会を、菅直人前首相とのパイプを使って実現させた[3]。福島第一原発の事故については、名古屋大学理学部物理学科に一時在学していたこともあり、「物理学を学んだこともあるので、原発事故の時は、何がおきているのか自分なりに把握できました。信頼のおける専門家の意見を聞いても、これは相当まずい」とみていたという[4]

2014年8月に朝日新聞が、同紙による、いわゆる「従軍慰安婦」問題キャンペーンについて、「吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」とした際には[5]、「日本の保守派には、軍人や役人が直接に女性を連行したか否かだけを論点にし、それがなければ日本には責任がないと主張する人がいる。だが、そんな論点は、日本以外では問題にされていない。そうした主張が見苦しい言い訳にしか映らない」と[6]、保守政治家などの「ガラパゴス的」議論を批判するコメントを寄せた。

プライベートではアコースティック楽器により世界各国のトラッドをベースとした楽曲を演奏するバンドQuikion (キキオン) を十時由紀子・佐々木絵実と結成し、東京都内を中心にライブ活動を続けているほか、2015年までに6枚のインディーズ・アルバムをリリースしている[7]。小熊はギターブズーキなどを担当[8]。このほか十時を除くキキオンのメンバーと、くどうげんた(パーカッション)とともに結成したKION(キオン)でも活動している[7]

受賞歴


  1. ^ 『〈民主〉と〈愛国〉』「あとがき」
  2. ^ 小熊英二さんに聞く(上)戦後日本のナショナリズムと公共性 『七人の侍』をみて、「これが戦後思想だな」と思った
  3. ^ 週刊文春2012年9月6日号「刺青ストリッパー、「ベ平連」礼賛学者、パンクロッカー…「反原発デモ」野田官邸にのり込んだ活動家11人の正体」
  4. ^ 『私たちはどこへ行こうとしているのか』298ページ
  5. ^ 朝日新聞2014年8月5日、「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断
  6. ^ 朝日新聞2014年8月6日、ガラパゴス的議論から脱却を 小熊英二さん(慶応大教授)
  7. ^ a b ■■弦と蛇腹の夜 Quikion、2016年8月31日閲覧。
  8. ^ ■■弦と蛇腹の夜 Quikion prof、2016年8月31日閲覧。
  9. ^ 東京新聞2015年8月30日「平凡な父の一生 聞き書き」
  10. ^ 『リテレール別冊 ことし読む本いちおしガイド2001』「冷静に思考した新しい旅行記」
  11. ^ 産経新聞1997年2月3日「日本人の自画像覆す痛快さ」
  12. ^ 朝日新聞1995年8月20日「日本民族『神話』描き出す小熊著」
  13. ^ ジャパン・メール・メディア1999年6月7日
  14. ^ 読売新聞1998年9月8日「揺れ動いた定義 綿密に検証」
  15. ^ 週刊文春1998年10月1日号「私の読書日記」
  16. ^ プレジデント2000年8月14日号「本の時間」
  17. ^ 読売新聞2002年11月24日、「不毛な言葉争いに終止符」
  18. ^ 油井大三郎『未完の占領改革』東京大学出版会、2016年、319–320頁。ISBN 978-4130065351 
  19. ^ ダカーポ「ブック・オブ・ザ・イヤー2002~03」
  20. ^ 日本経済新聞2009年9月6日、「膨大な資料基に若者の思考を探る」
  21. ^ AERA2009年11月9日
  22. ^ 新潮2009年12月号「歴史化される六八年」
  23. ^ 諸君!』2003年9月号「憐れな、余りにも憐れな懐かしのメロディー」
  24. ^ 大原社会問題研究所雑誌 544号 2004年3月号
  25. ^ 正論』2003年10月号「日本の若い知識人の退廃--小熊英二『〈癒し〉のナショナリズム』の党派性 」
  26. ^ 小熊英二さんに聞く(下)戦後日本のナショナリズムと公共性 思想も運動も度量の広さが大切 戦後史を振り返って思う
  27. ^ 武井昭夫による鶴見俊輔批判 あるいは片付かない「転向」
  28. ^ 絓秀実「リベラル・デモクラシーの共犯-鶴見俊輔の場合」en-taxi』第6号、2004年6月
  29. ^ Koenker, Diane P., and Ronald D. Bachman (ed.), Revelations from the Russian archives : Documents in English Translation, Washington, D.C. : Library of Congress, 1997.
  30. ^ https://web.archive.org/web/20100105124201/http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1164-4.htm [リンク切れ]
  31. ^ a b 図書新聞』2991号、2010年11月27日
  32. ^ a b 毎日新聞2010年2月2日夕刊「望遠・広角」
  33. ^ 情況2009年12月
  34. ^ 小説トリッパー2009年冬季号
  35. ^ 『週刊金曜日』2009年12月25日号
  36. ^ 現代思想2011年12月臨時増刊号
  37. ^ 「あれは自分探しだったのか、異議あり」『現代の理論2009年秋号
  38. ^ 図書新聞』2932号、2009年9月5日
  39. ^ 『1968年文化論』、「1968年の日本文化に何が生じたのか」
  40. ^ 『戦後リベラルの終焉 なぜ左翼は社会を変えられなかったのか』PHP研究所〈PHP新書 982〉、2015年4月15日。ISBN 978-4-569-82511-3 


「小熊英二」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「小熊英二」の関連用語

小熊英二のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



小熊英二のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの小熊英二 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS