フクロウ 名前の由来

フクロウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/17 05:29 UTC 版)

名前の由来

学名の名(Strix)はフクロウを意味し、種小名の(uralensis)はウラル地方を意味する[18]

和名は、毛が膨れた鳥であることに由来する、鳴き声に由来する、昼隠居(ひるかくろふ)から転じたなどの説がある[18]。異名として、不孝鳥、猫鳥、ごろすけ、ほろすけ、ほーほーどり、ぼんどりなどがある[18]。古語で飯豊(いひとよ)と呼ばれていた。日本と中国では、梟は母親を食べて成長すると考えられていた為「不孝鳥」と呼ばれる[31]日蓮は著作において何度もこの点を挙げている[52]

譬へば幼稚の父母をのる、父母これをすつるや。梟鳥(きょうちょう)が母を食、母これをすてず。破鏡(はけい)父をがいす、父これにしたがふ。畜生すら猶かくのごとし — 日蓮開目抄

「梟雄」という古くからの言葉も、親殺しを下克上の例えから転じたものに由来する。あるいは「フクロウ」の名称が「不苦労」または「福老」に通じるため縁起物とされることもある。広義にフクロウ目の仲間全体もフクロウと呼ばれている[7]

種の保全状況評価

1979年にフクロウ目単位でワシントン条約附属書IIに掲載されている[2]。2009年現在は岡山県レッドデータブックで絶滅危惧II類と判定されている[53]。2010年現在は東京都レッドデータブックにおいて区部で絶滅危惧IA類・北多摩および南多摩で絶滅危惧IB類・西多摩で絶滅危惧II類と判定されている[54]。2011年現在は埼玉県レッドデータブックで繁殖個体群が地域別危惧、越冬個体群が準絶滅危惧と判定されている[55]。2011年現在千葉県レッドデータブックでは重要保護生物と判定されている[56]。2015年現在は三重県レッドデータブックで準絶滅危惧と判定されている[57]

S. u. hondoensis フクロウ
2010年現在青森県レッドデータブックではランクCと判定されている[58]

繁殖に適した洞穴がある森林伐採により、個体数が減少している[10][18][51]。1971年10月から2001年3月までの31年間に新潟県愛鳥センターで保護収容されたフクロウは288羽で、その後放鳥されたものは130羽であった[59]。5月に幼鳥が多く収容されている[59]仙台市八木山動物公園1982年に日本国内で初めて繁殖に成功し、繁殖賞を受賞した。

日本では以下の多くの都道府県でレッドリストの指定を受けている[60]

韓国では本種が大韓民国指定天然記念物に選定されている。

人間との関係

イラスト

ギリシャ神話において、フクロウは女神アテーナーの象徴であるとされる。知恵の女神アテーナーの象徴であることから転じて知恵の象徴とされることも多い。ミネルヴァのフクロウもその一例である。民話童話においては、森林の長老や知恵袋の役割としてフクロウがしばしば登場する。

一方東洋では、フクロウは成長した雛が母鳥を食べるという言い伝えがあり、転じて「親不孝者」の象徴とされている。唐朝の武則天は政敵を貶める目的から政敵の遺族の姓を「蟒」(ウワバミ、蛇の一種)と「梟」に変えさせている。「梟帥(きょうすい)」や「梟雄(きょうゆう)」は荒々しい人、盗賊の頭目を意味する(『日本書紀』は朝廷に従わない地域の長を意味する「タケル」に「梟帥」の字をあてている)。獄門の別名を梟首(きょうしゅ)と言う。 その一方で前述のように縁起物とされ、フクロウの置物も存在する。またことわざの一つに「フクロウの宵鳴き、糊すって待て」というものがある。宵にフクロウが鳴くと明日は晴れるので洗濯物を干せという意味[18]

普段は穏やかでおとなしい気質であるため人間から非常に親しまれている鳥であるが、繁殖期には雛を守るため巣に近づく人間に対して攻撃的になる[75]。巣に近づく人間に向かって飛びかかり、鋭いで目を攻撃して失明させたり、耳を引きちぎったりする事例がヨーロッパでは広く認知されている[75]

フクロウの主食がノネズミであることから、日本では江戸時代からを打ってフクロウの止まり木を提供しノネズミの駆除に利用し、東南アジアでは田畑や果樹園の横に巣営場所を提供しノネズミ駆除に利用している[38]

初列風切羽の外弁の縁ギザギザの鋸歯状の構造(セレーション、serration)には消音効果があり[76]新幹線500系電車翼型パンタグラフに取り付けられたボルテックスジェネレーターは、このフクロウの羽根の構造を参考にして開発されている[9]

日本

日本の場合、一定の大きさ以内であれば個人が飼うには届け出等は不要である。肉食であること、飼育場所は常に清潔を保たなくてはいけないこと、飛ぶことのできる相応の広さを確保しなくてはならないことなどを留意すべきである。雛の頃から育てたとしても必ずしも懐く訳ではなく、飼ってから後悔しないように、よくよく検討してから購入するべきである。正しく飼育すれば20年ほど生きる。

自治体指定の鳥

以下の日本の自治体で指定の鳥とされている。


注釈

  1. ^ フクロウ類は羽毛が非常に柔らかく初列風切羽の先が細かく裂けていることから羽音を立てずに飛行することができる。
  2. ^ 他の種類の鳥は視野は約340度と広いが、遠近感をつかめる範囲は約24度と狭い。
  3. ^ 雛へ給餌するために運ばれる鳥類として、アカゲラアリスイオオルリカッコウカワセミカワラバトカワラヒワカラ類キジバトクロジコマドリサシバスズメツグミ類ツツドリヒヨドリホオジロ類ムクドリモズなどが確認されている。
  4. ^ キジコジュケイヤマドリなどのかなり大きなものまで食べる。
  5. ^ 大きなものとしては、ノウサギを巣に運び込もこともある。
  6. ^ 鳥獣調査報告第12号(11月から翌年の2月までにフクロウが食べた物の調査結果、農林水産省
  7. ^ 20年もしくはそれ以上生きるフクロウの個体がいることが知られている。
  8. ^ 東京都の北多摩と南多摩では絶滅危惧IB類(EN)、西多摩では準絶滅危惧(NT)。[要検証]
  9. ^ 千葉県のカテゴリー「重要保護生物(B)」は、環境省の絶滅危惧IB類(EN)相当。
  10. ^ 青森県のカテゴリー「希少野生生物(Cランク)」は、環境省の準絶滅危惧(NT)相当。
  11. ^ 奈良県のカテゴリー「希少種」は、環境省の準絶滅危惧(NT)相当。

出典

  1. ^ Appendices I, II and III<https://cites.org/eng>(Accessed 26/11/2017)
  2. ^ a b UNEP (2017). Strix uralensis. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (Accessed 26/11/2017)
  3. ^ a b c BirdLife International. 2016. Strix uralensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T22689108A93218506. doi:10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22689108A93218506.en Downloaded on 26 November 2017.
  4. ^ a b c d Owls, Gill F & D Donsker (Eds). 2017. IOC World Bird List (v 7.3). doi:10.14344/IOC.ML.7.3 (Retrieved 22 November 2017)
  5. ^ a b c d 日本鳥学会「フクロウ」『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会(目録編集委員会)編、日本鳥学会、2012年、211-2頁
  6. ^ a b Clements, J. F., T. S. Schulenberg, M. J. Iliff, D. Roberson, T. A. Fredericks, B. L. Sullivan, and C. L. Wood. 2016. The eBird/Clements checklist of birds of the world: v2016. Downloaded from http://www.birds.cornell.edu/clementschecklist/download/ (Retrieved 22 November 2017)
  7. ^ a b c d e f g h i j k 樋口 (2007)、22頁
  8. ^ 富士元 (1998)、70頁
  9. ^ a b c 樋口 (2007)、17頁
  10. ^ a b c d e f g h i 中川 (2010)、147頁
  11. ^ a b c d e f g h i そのほか、トウホクフクロウという亜種も存在する。
  12. ^ a b c d e 小海途 (2011)、84頁
  13. ^ a b 福田 (1986)、44頁
  14. ^ 中川 (2010)、143頁
  15. ^ 叶内 (2006)、355頁
  16. ^ 中川 (2010)、230頁
  17. ^ a b c d e 高木 (2000)、24頁
  18. ^ a b c d e f g 国松 (1995)、104頁
  19. ^ 樋口 (2007)、21頁
  20. ^ a b c d e 真木 (2012)、150頁
  21. ^ a b c 福田 (1986)、46頁
  22. ^ 福田 (1986)、16頁
  23. ^ a b c d e 福田 (1986)、47頁
  24. ^ a b c 福田 (1986)、6頁
  25. ^ 富士元 (1998)、6頁
  26. ^ 福田 (1986)、17頁
  27. ^ a b 富士元 (1998)、9頁
  28. ^ 福田 (1986)、9頁
  29. ^ 福田 (1986)、2-4頁
  30. ^ 富士元 (1998)、7頁
  31. ^ a b c 小宮 (2011)、32頁
  32. ^ 富士元 (1998)、5頁
  33. ^ a b c d e f g h 樋口 (2007)、24頁
  34. ^ a b c Yoshihito Hongo, Hiroshi Kaneda, "Field Observations of Predation by the Ural Owl Strix uralensis upon the Japanese Horned Beetle Trypoxylus dichotomus septentrionalis," Journal of the Yamashina Institute for Ornithology, Yamashina Institute for Ornithology, 2009, Pages 90-95.
  35. ^ 只野慶子 「ペリットの内容物分析によるフクロウの食性(予報)」『森林野生動物研究会誌』第25・26巻、森林野生動物研究会、2000年、95-98頁。
  36. ^ 白石浩隆・北原正彦 「富士山北麓における人工巣を利用したフクロウの繁殖生態と給餌食物の調査」『富士山研究』第1巻、山梨県環境科学研究所、2007年、17-23頁。
  37. ^ 福田 (1986)、48頁
  38. ^ a b c d 樋口 (2007)、23頁
  39. ^ 滝沢 (2013)、86頁
  40. ^ 風間 (2004)、79頁
  41. ^ 福田 (1986)、28頁
  42. ^ 福田 (1986)、49頁
  43. ^ a b c d e 樋口 (2007)、25頁
  44. ^ 福田 (1986)、20頁
  45. ^ 富士元 (1998)、20頁
  46. ^ 富士元 (1998)、24-25頁
  47. ^ 富士元 (1998)、40頁
  48. ^ a b 樋口 (2007)、27頁
  49. ^ 福田 (1986)、11頁
  50. ^ 大庭 (2007)、22頁
  51. ^ a b 梓川鳥類生態研究会 (1993)、78頁
  52. ^ 要伝寺_親子観
  53. ^ 丸山健司・山田信光 「フクロウ」『岡山県版レッドデータブック2009 絶滅のおそれのある野生生物』、岡山県、2009年、79頁。
  54. ^ 「鳥類(本土部)」『東京都の保護上重要な野生生物種 (本土部) 東京都レッドリスト 2010年版』、東京都、2010年、45-51頁。
  55. ^ 「フクロウ」『埼玉県レッドデータブック2008 動物編』埼玉県環境部みどり自然課編、埼玉県、2011年、98頁。
  56. ^ 高木武・桑原和之 「フクロウ」『千葉県の保護上重要な野生生物種 千葉県レッドデータブック 動物編 2011年改訂版』、千葉県、2011年、89頁。
  57. ^ 前澤昭彦 「フクロウ」『三重県版レッドデータブック2015 三重県の絶滅のおそれのある野生生物』、三重県、2015年、75頁。
  58. ^ 小山信行 「フクロウ」『青森県の希少な野生生物 青森県レッドデータブック(2010年改訂版)』、青森県、2010年、207頁。
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  60. ^ 日本のレッドデータ検索システム「フクロウ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2014年2月13日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。[出典無効]
  61. ^ 東京都の保護上重要な野生生物種(本土部)2010年版” (PDF). 東京都. pp. 49 (2010年). 2013年12月21日閲覧。
  62. ^ 千葉県レッドデータブック動物編(2011年改訂版)” (PDF). 千葉県. pp. 89 (2011年). 2013年12月21日閲覧。
  63. ^ 岡山県版レッドデータブック2009” (PDF). 岡山県. pp. 79 (2009年). 2013年12月21日閲覧。
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  67. ^ 岐阜県レッドデータブック(初版)・フクロウ”. 岐阜県 (2002年). 2013年12月21日閲覧。
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  70. ^ 京都府レッドデータブック・フクロウ”. 京都府 (2002年). 2013年12月21日閲覧。
  71. ^ レッドデータブックとっとり(動物)” (PDF). 鳥取県. pp. 61 (2012年). 2013年12月21日閲覧。
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  73. ^ レッドデータブックやまぐち・フクロウ”. 山口県 (2002年). 2013年12月21日閲覧。
  74. ^ 青森県レッドデータブック(2010年改訂版)” (PDF). 青森県. pp. 207 (2010年). 2013年12月21日閲覧。
  75. ^ a b 樋口 (2007)、22-23頁
  76. ^ 無音で飛行するフクロウの羽根の構造を解析――飛行機の騒音低下のヒントに - fabcross for エンジニア”. fabcross for エンジニア - エンジニアのためのキャリア応援マガジン (2020年12月22日). 2023年12月6日閲覧。
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  78. ^ 市の木・花・鳥・昆虫(平成17年4月27日指定)/青森市”. 青森市 (2005年4月27日). 2015年4月12日閲覧。
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  84. ^ 市の木・花・鳥”. 袋井市 (2010年5月16日). 2020年9月24日閲覧。


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