パラフィン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/08 02:45 UTC 版)
英国、南アフリカでは、ケロシン灯油を指してパラフィンオイル(Paraffin oil)、または単にパラフィンと呼ぶ。一方、固形パラフィンはパラフィンワックス(Paraffin wax)とよばれる。
語源はラテン語のParum affinisで親和性が低いという意味。
パラフィン(固形)
常温において半透明ないし白色の軟らかい固体(蝋状)で水に溶けず、化学的に安定な物質である。成分は主にノルマルパラフィンの炭素数20以上の混合物であり、融点については用途により異なる。日本では単にパラフィンと呼ぶ場合が多いが、ケロシンとの混同を避けるため、特にパラフィンワックスとも呼ぶ。
ロウソク、クレヨン等で身近に使用され、生活場面ではしばしばロウとして扱われるが、化学的には日本のロウと西洋のワックスは全く異なるので留意する必要がある。
流動パラフィン
最も身近な物がベビーオイルである。常温では無色の液体で非揮発性。水には不溶。化学的に安定な物質で、通常の条件では酸化を受けない。成分については固形のパラフィンよりオレフィン系炭化水素に富む。乳化しやすく伸びや浸透性に優れる。純度は紫外光の吸光度により計測される。
流動パラフィンには多くの呼び方がある。ヌジョール (nujol)、ホワイト油、白色鉱油、水パラフィン、ミネラルオイル、ミネラルオイルホワイト、医療用パラフィン (medicinal paraffin)、パラフィンファックス、saxol、USP mineral oil、adepsine oil、Albolene、glymolなど。
所在・製法
パラフィンは石油に含まれ、分留によって取り出される。重油やアスファルトも炭化水素を含むため、広義のパラフィン類に含まれるが、これらは精製の度合いが低いうえ、カーボンやその他の夾雑物を含有しているために黒褐色を有する。また、蒸留精製する温度の違いで灯油などの燃料と流動パラフィン・石油ワックスは作り分けられる。
パラフィンを構成する成分は生理的に不活性であるが故に、精製の程度によって刺激性が規定されてしまう。長期にわたって皮膚や頭髪に触れることが多い化粧品用途に用いる場合には、精製度が特に高いものが用いられる。
用途例
- 燃料
- 固定
- 鮮度保持
- 缶、瓶の密封
- せっけんの包み紙
- 皮膜剤
- チョコレートお菓子や野菜や果物の天然皮膜剤(流動パラフィン・パラフィンワックス)
- 医薬品のコーティング(流動パラフィン・パラフィンワックス)
- (中国産)椎茸の皮膜剤
- 密封・遮蔽・耐熱保温・撥水防水
- 滑剤
- 可塑剤
- 難燃剤
- 難燃ゴムなど(塩素化パラフィン)
- 安定性
- リンスや化粧品(ベビーオイル、乳液、クレンジングクリーム、コールドクリーム)の原料(流動パラフィン)
- 軟膏基剤として調剤(流動パラフィン)
- 潤滑
- 食品添加物
- パンの製造用材(流動パラフィン)
- 蓄熱材
- 比熱利用の顕熱型蓄熱材料としての水パラフィン
- 実験、測定の定着材
- 食品用
- 食品機械用潤滑油・グリース(食品添加物認可流動パラフィン)
- 医療用
- 農業
- 生物学
- 微生物の保存(流動パラフィン)
食用
食品衛生試験に合格したものは固形食品を直(じか)に包む事が許可される。
日本では、食品衛生法上、石油系ワックスに関する品質規制はない。(『流動パラフィンは化学的合成品ではないので、食品衛生法第六条に基づく指定の必要がない』とされている)。食品包装全般に使用されるワックスの品質をワックス業界が自ら管理することを目的に日本ワックス工業会が基準を制定している。
食品工場で使用される機械(たとえば製パン機では生地を分割する分割機)の潤滑油として従来、流動パラフィン(鉱物性オイル)が使用されていた。しかし、流動パラフィンの発がん性が議論されるようになり、現在では植物性オイルの使用が推奨されている。1970年からパンの製造過程におけるパン生地の自動分割機による分割の際、および焙焼(ばいしょう)する際の離型の目的に限ってのみ使用が許されており、パンへの残存量が0.10%未満だができるだけ少なくすることが望ましいと規定されている[2]。パンの離型剤でも植物性オイルが使用されるようになってきているが、しかしながら、流動パラフィンは耐熱性があり酸化されにくいため、まだ多く使用されている。日本においては、食品機械用潤滑剤の安全性に関する規格・規準はない。しかしBSE問題等で食の安全性の観点が重視されているため、食品業界では、製品の安全性について、HACCP等の手法も取り入れ、さまざまな観点で見直しが行われている[3]。
食用として認められたパラフィンは、飴、キャンディーの光沢をだす目的で使用されることがある。食用ではあるが消化されずに排出される。食用でないパラフィンには一般には油などの不純物が含まれており通常有害である。
日本では、食品添加物として認められているのは、食品の製造加工に必要なものとしてのその他項目としての流動パラフィンのみ。光沢剤その他では使用が認められていない。[要出典]
1960年代には、石油由来のパラフィンを餌として酵母を増殖させ、石油タンパクを製造する技術が開発された。しかし、発がん性の疑いがぬぐい切れないとして消費者団体が抗議したこと、何よりも石油を食用にするというイメージの悪さが払拭できなかったことなどから、日本で流通することはなかった[4][5]。
- ^ 第2版 標準化学用語辞典, 日本化学会 編, 2005年3月, 第2版, 丸善出版, ISBN 978-4-621-07531-9
- ^ 厚生労働省行政情報昭和45年12月7日環食化第102号 - ウェイバックマシン(2007年3月1日アーカイブ分)
- ^ 食品機械用潤滑剤の参考情報-食品機械用潤滑剤ガイド - ウェイバックマシン(2005年12月18日アーカイブ分)
- ^ 「石油タンパク被告の座に 主婦15人、禁止申立て」『朝日新聞』昭和48年1月26日朝刊、13面、3面
- ^ “石油化学と食品”. 石油探検隊. 2020年9月17日閲覧。
パラフィンと同じ種類の言葉
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