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モリス【William Morris】


ウィリアム・モリス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/07 13:52 UTC 版)

ウィリアム・モリス

ウィリアム・モリスWilliam Morris1834年3月24日 - 1896年10月3日)は、19世紀イギリステキスタイルデザイナー詩人ファンタジー作家アーティスト作家)、印刷者、翻訳家、建築保護運動家、社会主義活動家。及びこれら多方面に関わるアーツ・アンド・クラフツ運動主導者。多方面で精力的に活動し、それぞれの分野で大きな業績を挙げた。「モダンデザインの父」と呼ばれる。また、架空の中世的世界を舞台にした『世界のかなたの森』など多くのロマンスを創作し、モダン・ファンタジーの父と目される[1][2]ロード・ダンセイニJ・R・R・トールキンにも影響を与えた[3]

経歴

モリスの活動

ヴィクトリア朝のイギリスでは産業革命の成果により工場で大量生産された商品があふれるようになった。反面、かつての職人はプロレタリアートになり、労働の喜びや手仕事の美しさも失われてしまった。モリスは中世に憧れて、モリス商会(Morris & Co.)を設立し、インテリア製品や美しい書籍を作り出した(植物の模様の壁紙やステンドグラスが有名)。生活と芸術を一致させようとするモリスのデザイン思想とその実践(アーツ・アンド・クラフツ運動)は各国に大きな影響を与え、20世紀のモダンデザインの源流にもなったといわれる。

プロレタリアートを解放し、生活を芸術化するために、根本的に社会を変えることが不可欠だと考えたモリスはマルクス主義を熱烈に信奉し、E. B. バックスやエリノア・マルクスカール・マルクスの娘)らと行動をともにした。エリノアらとヘンリー・ハインドマンの社会民主連盟を脱退し、1885年、社会主義同盟を結成、その後、再びエリノアらと脱退し、エリノアらとハマスミス社会主義協会を結成した。

家族

モリス一家(右側)とエドワード・バーン=ジョーンズ一家(左側)。右からジェーン・アリス、ジェーン、ウィリアム、メイ
  • ジェーン・モリス:妻。ラファエル前派のモデルで、芸術家にインスピレーションを与えたミューズであり、スター的存在、アーティスト(刺繍家)、ロセッティと不倫関係にあった[6][7][5]
  • ジェーン・アリス・モリス英語版:娘、刺繍家。
  • メイ・モリス英語版:娘、芸術刺繍英語版家。

主な著作

  • 「民衆の芸術」(1879年の講演)、中橋一夫訳、岩波文庫(復刊2020年ほか)。グーテンベルク21電子書籍、2021年より)。他に芸術論はkindle版(電子出版)で訳あり
    • 「民衆のための芸術教育」、内藤史朗訳、明治図書、1971年
  • 「ジョン・ボールの夢」(1888年)、生地竹郎訳、未來社。ワット・タイラーの乱を題材にした小説
  • 「ユートピアだより」(1890年)、川端康雄訳、岩波文庫、2013年(電子書籍・2015年)。旧版は松村達雄訳/五島茂飯塚一郎訳、中公クラシックス(電子書籍・2014年)
  • 「サンダリング・フラッド 若き戦士のロマンス」(遺作)、中桐雅夫訳、新編:平凡社ライブラリー(電子書籍・2014年)
  • 「理想の書物」(晩年の講演・エセー集)、ウィリアム・S・ピータースン編、川端康雄訳、晶文社、1992年/新編:ちくま学芸文庫、2006年
  • 『ウィリアム・モリス・コレクション』全9巻、晶文社、2000-2003年。
    • 「世界のかなたの森」(新版)小野二郎訳
    • 「ジョン・ボールの夢」 横山千晶訳
    • 「輝く平原の物語」 小野悦子訳
    • 「ユートピアだより もしくはやすらぎの一時代」 川端康雄
    • 「世界のはての泉」(上下) 川端康雄・兼松誠一訳
    • 「不思議なみずうみの島々」(上下) 斎藤兆史
    • 「アイスランドへの旅」 大塚光子訳
  • 『地上の楽園 春から夏へ』 、『秋から冬へ』、森松健介訳、音羽書房鶴見書店、2016-2017年。長編物語詩
  • 『社会主義 その成長と帰結』 E・B・バックス共著、川端康雄監訳、晶文社、2014年。大内秀明監修
  • 『素朴で平等な社会のために』 城下真知子訳、せせらぎ出版、2019年
  • 『小さな芸術 社会・芸術論集Ⅰ』 川端康雄編訳、月曜社、2022年。講演集8篇
    • 続編『Ⅱ 有用な仕事と無用な労苦』、『Ⅲ 楡の木陰で』、未刊:2025年以降予定

伝記・紹介

  • 加田哲二 『ウヰリアム・モリス』 岩波書店、1924年
  • 壽岳文章ほか 『モリス記念論集』 沖積舎、1996年(復刻)、原版はモリス生誕百年記念協会、川瀬日進堂書店、1934年
  • 壽岳文章 『モリス論集』 沖積舎(ちゅうせき叢書16)、1993年(新編復刻)- 以上は日本における最初期の紹介
  • 小野二郎 『ウィリアム・モリス ~ラディカル・デザインの思想~』 中公文庫(解説小野悦子)、1992年、改版2011年
    • 初刊版は中公新書(1973年)。集大成に『著作集1 ウィリアム・モリス研究』(晶文社、オンデマンド版2007年) 
  • 小野二郎 『ウィリアム・モリス通信』 川端康雄編、みすず書房大人の本棚〉、2012年 - 紀行・エッセイ
  • 藤田治彦 『ウィリアム・モリス 近代デザインの原点』 鹿島出版会SD選書〉、1996年 - 伝記
  • 藤田治彦 『もっと知りたい ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』 東京美術、2009年 - 入門書
  • 藤田治彦監修 『ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡』 求龍堂、2017年 - 図版書
  • 南川三治郎写真・解説 『ウィリアム・モリスの楽園へ』 世界文化社〈ほたるの本〉、2005年 - 図版書
  • 図説 ウィリアム・モリス ヴィクトリア朝を越えた巨人河出書房新社〈ふくろうの本〉、2008年 - 図版書
ダーリング・ブルース/ダーリング・常田益代編・解説
  • 海野弘編・解説 『ウィリアム・モリス クラシカルで美しいパターンとデザイン』パイインターナショナル、2013年 - 図版書
  • 大内秀明 『ウィリアム・モリスのマルクス主義』 平凡社新書、2012年 - 入門書
  • ピーター・スタンスキー 『ウィリアム・モリス』 草光俊雄訳、雄松堂出版、1989年 - 小著
  • クリスチーン・ポールソン 『ウィリアム・モリス アーツ・アンド・クラフツ運動創始者の全記録』 小野悦子訳、美術出版社「アートガイド」、1992年 - 図版書
  • 川端康雄 『ウィリアム・モリスの遺したもの』 岩波書店、2016年 - 全15章の研究
  • E・P・トムスン『ウィリアム・モリス――ロマン派から革命家へ』川端康雄監訳、月曜社、2024年予定(未刊)
  • 蛭川久康評伝 ウィリアム・モリス』 平凡社、2016年 - ※以下は大著
  • フィリップ・ヘンダースン 『ウィリアム・モリス伝』 川端康雄・志田均・永江敦訳、晶文社、1990年
  • ポール・トムスン 『ウィリアム・モリスの全仕事』 白石和也訳、岩崎美術社、1994年
  • ウィリアム・S・ピータースン 『ケルムスコット・プレス-ウィリアム・モリスの印刷工房』 湊典子訳、平凡社、1994年
  • リンダ・パリー編 『ウィリアム・モリス』 多田稔監修、河出書房新社、1998年
  • アンナ・メイソン編 『ウィリアム・モリス百科図鑑-人物・作品・遺産』 村田綾子訳、柊風舎、2023年

モリスゆかりの地

  • ウィリアム・モリス・ギャラリー(ロンドン郊外):幼少期を過ごした家。公開。
  • 赤い家(ロンドン郊外):アーツ・アンド・クラフツの代表作。フィリップ・ウェッブ設計、インテリアはモリスや友人が手がけた。現在はナショナルトラストが所有。
  • ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン):モリスの部屋がある(1867年の作品)。
  • ケルムスコット・マナー英語版(オックスフォード近く):モリスの別荘。
  • ケルムスコット・ハウス(ロンドン近郊):18世紀の建物、モリスが晩年まで過ごした。ウィリアム・モリス・ソサイアティ本部がある。
  • バイブリー - モリスが「イギリスで最も美しい村」と読んだコッツウォルズの村。

脚注

  1. ^ リン・カーター 『ファンタジーの歴史 - 空想世界』 中村融訳、東京創元社、2004年、28-29頁。
  2. ^ デイヴィッド・プリングル編 『図説 ファンタジー百科事典』 日本語版監修 井辻朱美、東洋書林、2002年、13頁、372頁。
  3. ^ デイヴィッド・プリングル編 『図説 ファンタジー百科事典』 日本語版監修 井辻朱美、東洋書林、2002年、13頁。
  4. ^ 藤田治彦『ウィリアム・モリス : 近代デザインの原点』鹿島出版会、1996年10月10日、77頁。ISBN 9784306052260 
  5. ^ a b Stephanie Chatfield. “Jane Burden Morris”. Pre-Raphaelite Sisterhood. 2025年3月4日閲覧。
  6. ^ Rossetti's Obsession: Images of Jane Morris”. National Museums Liverpool. 2025年3月4日閲覧。
  7. ^ 日本初公開奇妙な三角関係ムネーモシューネー(記憶の女神) ラファエル前派の軌跡展”. 産経新聞 (2019年11月7日). 2025年3月4日閲覧。

関連項目

外部リンク


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