環境放射線とは? わかりやすく解説

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かんきょう‐ほうしゃせん〔クワンキヤウハウシヤセン〕【環境放射線】


環境放射線

人間生活空間ある様々な放射線。これらの放射線源には,宇宙線大地及び食物からの自然放射線と,エックス線利用核実験及び原子力発電所などによる人工放射線の3通りあります

環境放射線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/05 13:22 UTC 版)

環境放射線(かんきょうほうしゃせん、: background radiation / environmental radiation)とは、生活環境中にある放射線を言う[1]

概要

環境放射線は自然放射線人工放射線に分類される[2]。自然放射線とは、自然界にもともと存在している放射線である。人工放射線とは、人間が作り出した放射線のことで核実験や原子力事故などで放出された放射性物質によるものである。以下に記述のある放射線量に関してはあくまで推定平均値であり、局地性がある。また公表機関により数値が大きく異なる場合がある。

以下に放射線被曝線量の公表値を例にあげる。

平均年間被曝線量 (ミリシーベルト)
起源 世界平均[3][4] 日本[4] アメリカ[5] 備考
自然 大気 1.26 0.47 2.28 主にラドン
食品 0.29 0.99 0.28 カリウム40炭素14など。日本人は魚介類の摂取が多いため、鉛210ポロニウム210からの被ばくが多い[4]
大地 0.48 0.33 0.21 大地組成に依存
宇宙 0.39 0.31 0.33 標高に依存。世界平均と日本は航空機利用を含む。
小計 2.4 2.1 3.10
人工 医療 0.60 2.6 3.00 医療先進国で高い数値になっている
商品 - - 0.13 タバコ、航空機利用、建築材料など
大気圏内核実験 0.007 - - 1963年の0.11 mSvをピークに減少
職業被曝 0.005 - 0.005 作業者のみの世界平均は0.7 mSvで、ほとんどが鉱山のラドンに由来する[3]。アメリカはほとんど医療従事者と航空機乗務員による[5]
チェルノブイリ原発事故 0.002 - - 1986年の0.04 mSvをピークに減少、 サイト周辺ではより高い
核燃料サイクル 0.0002 - - サイト周辺では最大0.02 mSv、職業被曝を除く
その他 - - 0.03 工業、安全保障、医療、教育、研究
小計 0.6 2.6 3.14
合計 3.0 4.7 6.24

自然放射線

宇宙線による空気シャワー
2005年1月20日の上空12㎞での推定線量。(単位マイクロシーベルト/時)

自然放射線には、一般に中性子ミューオンガンマ線といった宇宙線、およびそれらと大気中の物質との相互作用で生成されるトリチウム炭素14などや、地中や建物内部に微量に含まれる40Kウラン系列トリウム系列およびそれらの娘核種などが挙げられる。ウラン系列やトリウム系列は崩壊の過程でラドンを経るので、空気中にはそれらによる放射性ラドンも微量に含まれている。 大地由来の自然放射線の線量は、地殻に含まれる放射性物質の量が一定でないため、場所によって異なる。宇宙線は空気中で吸収されるが、空気の密度が低ければ吸収量も減ると考えられるので、一般に、高度が高い場所では宇宙線起源の環境放射線の強度が特に強いと考えられている。特に高度1500mおきに放射線の強度は2倍になるといわれる[6]

自然放射線の被曝量は世界平均2.4ミリシーベルト(mSv)と推定されるが、地域により1mSvから十数mSvと被曝量に大きな開きがある。これは大きく地殻組成等の影響で、ホットスポット以外にも比較的線量の高い地域がある。ブラジルのグァラパリでは10mSvを超える場所もあり、極端なところではイランのラムサールでは260ミリグレイ(注意、シーベルトではない。線量単位)が測定されるホットスポットもある。UNSCEARの2008年の報告によると、人口79.9万人のラムサールでは年間被曝量は3mSvから10mSv以上の間であり、大半の49.5万人は5mSv未満の被曝だが人口の4分の1にあたる20万人が年間10mSv以上被曝と推計される[7]

大地からの自然放射線は日本では0.33 mSvであるが、地域によって差があり、花崗岩の多い西日本で高い傾向がある[8]。日本では低線量の木造建築によりラドンからの年間被曝量は0.4mSvと推定される[9]

人工放射線

20世紀後半の14COの濃度の推移。観測地点ニュージーランド、オーストリア。北半球では1960年代前半に2倍まで上昇。

核分裂加速器などにより作り出された放射性物質からの放射線である。核実験原子力事故の際に放出される放射性降下物によるもので自然放射線よりさらに局地性がある。

1940年代から60年代にかけて頻繁に行われた大気圏内での核爆発により相当量の放射能汚染が拡散した。一部の汚染はすぐ近くの局所的な高い放射能汚染として現れる一方で、一部は放射性降下物として長距離を運ばれ、世界中に拡散した。大気圏内での核爆発による環境放射線の増加は1963年には世界平均で年間約0.15mSv、つまり全環境放射線の7%に相当する量であった。1963年の部分的核実験禁止条約により地上での核実験が禁止され、2000年には核実験に由来する世界平均の被曝は0.005mSvまで減少した[10]

原子力発電所では平常運転時に微量の放射性物質を排出しているが、原子力事故の際には大量の放射性物質が拡散している。その他の放射性物質を扱う施設(研究施設や病院など)からも平時に微量に放出されつづけている。放射性同位体の放射能、などが挙げられる[11]。原子力発電所の事故(原子力事故)などがあると数値が大きくなる[11]。環境放射能に大きな影響を与えた原子力発電所の事故には1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故[11]、2011年以降の福島第一原子力発電所事故がある。その他の船舶用原子炉なども平時運転時および事故の際は原子力発電所と同様に拡散源となる。

全ての核実験による地球全体の集団実効線量は2230万人Sv、核燃料サイクルによる集団実効線量は10万人Sv、チェルノブイリ事故による集団実効線量は60万人Svと推定されている[12]

また火力発電で燃やす石炭から出るフライアッシュも放射性物質を拡散させている。ただしこれは地殻に存在していた放射性物質を生活圏内に放出しているもので、新しく作り出されたものではない。フライアッシュによる影響は原子炉の運転による影響より大きいという報告もある[13]

医療被ばくの線量は、胸部のレントゲン撮影で0.06 mSv、胃のレントゲン撮影で3.0 mSv、CTスキャンで3-13 mSv程度とされている[14]X線CTの普及により医療被ばくは増加し、一部の先進国では、医療被ばくが自然被ばくの値を超えてきている[15]

人工汚染の地域格差の例

ネバダ核実験場での100回の大気圏内核実験によって発生・拡散したヨウ素131の甲状腺への蓄積を示す。1997年報告

ネバダ核実験場では1951年から1992年にかけて928回核実験が行われた。その内100回は大気圏内核実験で1962年まで行われた。これらの実験の影響は風向き降雨などの気象状況や地形に影響され、右図のように放射線の数値は米国内でも160倍もの開きがある。

環境放射線モニタリング(environmental radiation monitoring)

モニタリングとは、放射線管理上の基本的な行為であり、放射線防護の目標が達成されているかどうかを判断するために行なわれる放射線・放射能の測定及び測定結果の解釈・評価を言う[16]。特に原子力関連施設内の作業環境あるいは施設外の一般環境における環境放射線のモニタリングを環境モニタリング(environmental monitoring)[注釈 1]と呼ぶ。

日本における環境放射線・放射能調査は、生活環境が人工と天然の放射線でどれだけ汚染されているかを把握し、人体に対してそれらがどんな影響をあたえるかを究明しようとすることを目標として、昭和32年(1957年)からそれまで各機関がバラバラに実施していた環境放射線・放射能の調査[注釈 2]の体制が改められ、組織的に実施されている[17]

また、特に原子力施設から放出される人工放射線(放射性物質)から公衆の健康や環境を守るために、原子力施設内外では環境中の放射線・放射能レベルの監視が行われている。環境放射線の測定は、主にガンマ線を測定することが目的とされ、ガイガー=ミュラー計数管シンチレーション検出器、または電離箱検出器などが用いられている。

放射能の測定は水資源となる河川水や地下水、土壌や海底土、海水、農産物、指標生物など広範囲にわたり、これらのサンプルからゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトルの分析により核種の同定・放射能の測定が行われる。

トリチウムなどのガンマ線を放出しないで低レベルベータ線を放出する核種の分析には、液体シンチレーション検出器などを用いてベータ線スペクトルの分析が行われる。

脚注

注釈

  1. ^ または環境放射線モニタリング(environmental radiation monitoring)
  2. ^ 米ソなどが実施した核実験に伴う放射性降下物(fallout;フオールアウト)と自然放射線(Natural backgroundradiation)の調査

出典

  1. ^ 大阪府環境モニタリングシステム|モニタリンについて|環境放射線とは
  2. ^ 環境放射線 - 原子力百科事典ATOMICA
  3. ^ a b UNSCEAR 2008, p. 4.
  4. ^ a b c 年間当たりの被ばく線量の比較”. 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料. 環境省. 2026年3月4日閲覧。
  5. ^ a b Ionizing radiation exposure of the population of the United States. Bethesda, Md.: National Council on Radiation Protection and Measurements. (2009). ISBN 978-0-929600-98-7. NCRP No. 160. オリジナルの2 February 2014時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140202092721/http://www.ncrppublications.org/Reports/160 2012年11月9日閲覧。 
  6. ^ 飯田博美 編、『放射線概論』、通商産業研究社、2005年7月20日 ISBN 4-86045-101-5
  7. ^ UNSCEAR 2008, Annex B Table 11.
  8. ^ 自然放射線”. 電気事業連合会. 2026年3月5日閲覧。
  9. ^ 文部科学省原子力教育支援情報提供サイト 閲覧2011年6月25日(UTC)[リンク切れ]
  10. ^ United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation (2000). Sources and Effects of Ionizing Radiation - UNSCEAR 2000 Report to the General Assembly, with Scientific Annexes (Report) (英語). 2022年9月12日閲覧.
  11. ^ a b c 身の回りの放射線[リンク切れ]
  12. ^ 世界における人工放射線による放射線被ばく - 原子力百科事典ATOMICA
  13. ^ McBride, J. P.; Moore, R. E.; Witherspoon, J. P.; Blanco, R. E. (1978). “Radiological Impact of Airborne Effluents of Coal and Nuclear Plants”. Science 202 (4372): 1045–50. Bibcode1978Sci...202.1045M. doi:10.1126/science.202.4372.1045. PMID 17777943. 
  14. ^ 人工放射線 - 日常生活と放射線”. 電気事業連合会. 2026年3月5日閲覧。
  15. ^ 遠藤 啓吾. “暮らしの中の放射線被ばく ―医療被ばくの現状―”. 首相官邸ホームページ. 2026年3月5日閲覧。
  16. ^ 日本アイソトープ協会(1992) pp.166-172
  17. ^ 昭和32年版 原子力白書(第5章2節 放射能調査)昭和33〜34年版 原子力白書(第7章1節 概説)
    及び当時の基本方針は、昭和37年版 原子力白書(第7章1節 基本方針の策定)[リンク切れ]

参考文献

関連項目

 外部リンク




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