I Want to Tell Youとは? わかりやすく解説

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アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 23:28 UTC 版)

ビートルズ > 曲名リスト > アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー
アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー
ビートルズ楽曲
収録アルバム リボルバー
英語名 I Want to Tell You
リリース 1966年8月5日
録音
ジャンル サイケデリック・ロック
時間 2分29秒
レーベル パーロフォン
作詞者 ジョージ・ハリスン
作曲者 ジョージ・ハリスン
プロデュース ジョージ・マーティン
リボルバー 収録曲
ドクター・ロバート
(B-4)
アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー
(B-5)
ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ
(B-6)

アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」(I Want to Tell You)は、ビートルズの楽曲である。1966年に発売された7作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『リボルバー』に収録された。作詞作曲はジョージ・ハリスンが手がけていて、アルバム『リボルバー』には本作の他にハリスン作の「タックスマン」や「ラヴ・ユー・トゥ」の収録されていることから、『リボルバー』は1枚のアルバムとしてハリスンの作品が最も多く収録されたビートルズのアルバムとなった。

「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」は、LSDからインスピレーションを得て書かれた楽曲で、哲学的な要素を持った歌詞や、吃ったギターリフや不協和音が特徴となっている。本作のレコーディングは、リズムトラックが完成した後にマッカートニーがベースのパートをオーバー・ダビングした初の例となっており、以降のビートルズの作品で主流となった。

音楽評論家から肯定的な評価を得ており、特にマッカートニーのメリスマを思わせる歌唱法が称賛された。ハリスンは、1991年にエリック・クラプトンと共に行った日本ツアーでオープニング・ナンバーとして演奏した。楽曲が発表されて以降、テッド・ニュージェントスミザリーンズ英語版シーア・ギルモア英語版メルヴィンズらによってカバーされた。

背景・曲の構成

ジョージ・ハリスンは、1966年初頭に「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」を書いた。同年、ハリスンはインドの伝統音楽の要素を取り入れた楽曲[1][2]LSDの服用からインスピレーションを得た楽曲を制作することでアイデンティティを確立し[3]レノン=マッカートニーと肩を並べる評価を得るようになった[4]。 本作についてハリスンは「書ききれない、言い切れない、伝えきれない、そういう雪崩のようにどっと襲いかかってくる気持ちについて書いたもの」と語っている[5][6]。音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は、1回目のブリッジの「But if I seem to act unkind / It's only me, it's not my mind / That is confusing things(でももし僕がつれなく見えるとしたら / それが僕という人間なんだ、僕の心じゃない / 物事をややこしくしているのは)」を、コミュニケーションの難しさを東洋哲学のアプローチを適用して表現した例として挙げている[7]

「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」のキーはAメジャーに設定されていて[8]、4分の4拍子となっている[9]。曲のオープニングとエンディングでは、音楽ジャーナリストのリッチー・アンターバーガー英語版 いわく「1966年のイギリスにおけるモッズ・ロックの典型」となる低音域を下降するギターリフ[10]が演奏されている[9]。曲は、「エイト・デイズ・ア・ウィーク」と同様にフェード・インで始まる[9][11]

レコーディング

レコーディングで使用された1905年製のスタインウェイ・バーティグランド(通称「ミセズ・ミルズ」)[12]

「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」は、『リボルバー』のセッションで取り上げられた3作目のハリスンの作品[13]だが、セッション開始時点ではタイトルが決められていなかった[14]。完成した楽曲にタイトルをつけないハリスンに憤慨したジョン・レノンは、冗談めかして「ラヴ・ユー・トゥ」の仮タイトル「Granny Smith(大元はリンゴの品種)」から派生した「Granny Smith Part Friggin' Two」と名付けた[15]。また、レコーディング・エンジニアであるジェフ・エメリックからは、同じくリンゴの品種から「Laxton's Superb」と名付けられた[16]

1966年6月2日にEMIレコーディング・スタジオでレコーディングが開始された[16]。ハリスンのレスリースピーカーに通したリードギターポール・マッカートニーピアノリンゴ・スターのドラムの編成でリズムトラック[16][14]を5テイク録音。このうちのテイク3をオーバー・ダビング用のマスターとして採用し[16]、レノンのタンバリンが追加された[11]。空きトラックを作るためにリダクション・ミックスを行った後[17]、ハリスンのリード・ボーカルとレノンとマッカートニーのハーモニー・ボーカル、そしてマラカス[9]がオーバー・ダビングされた[11]。また、ブリッジの終り部分とヴァースのE7♭9コードの上にハンドクラップと追加のピアノが加えられた[17]

6月3日のオーバーダビング・セッションで、マッカートニーのベースがオーバー・ダビングされ[18]、ビートルズのレコーディングにおいてベースが単体で1トラックを独占してオーバー・ダビングされた初の例となった[19][20]。この日のセッションでタイトルが一度「I Don't Know」[17]に変更されたのち、6月6日にリミックスやテープをコピーする作業を行うまでに現在のタイトルに変更された[21]

リリース・評価

イギリスでは、7月にEMIがアルバム『リボルバー』の収録曲を各ラジオ局に配信していた[22]。アルバム『リボルバー』は、1966年8月5日にパーロフォンから発売され[23][24]、「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」はB面5曲目に収録され[25][26]、前曲には合法的な医療行為と偽り、アンフェタミンをはじめとした薬物を処方していた医師をモデルとしたレノン作の「ドクター・ロバート[27]、次曲にはマッカートニーがマリファナの影響下で書いた「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ[28][29][30]が配置された[注釈 1]

メロディ・メイカー英語版』誌は、ギターとピアノのモチーフとボーカルのハーモニーのコンビネーションを称賛している[32]。アラン・ポラックは、本作の下降するギターリフを本作のハイライトとし、「曲冒頭から曲全体のトーンを決める、これまでにない素晴らしいオスティナートパターンの1つ」と評している[9]。プロデューサーでミュージシャンのチップ・ダグラス英語版は、モンキーズの「プレザント・バレー・サンデイ英語版」のギターリフは、本作に基づいたものだとしている[33]

リッチー・アンターバーガーは、本作の「興味深く、独特な性質」とボーカル・パフォーマンスを称賛していて、特にマッカートニーのボーカルについて「ロックにおける偉大な高音域の男性ハーモニー・シンガーの1人といえる」と評している[10]

クレジット

※出典[34]

カバー・バージョン

脚注

注釈

  1. ^ アメリカで発売された『リボルバー』では、先行してキャピトル編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』にレノンが書いた他の2曲と共に収録されていた関係から他2曲と共に「ドクター・ロバート」が収録されていない[31]

出典

  1. ^ Larkin 2011, p. 2644.
  2. ^ Schaffner 1978, pp. 63, 66.
  3. ^ Rodriguez 2012, p. 66.
  4. ^ Rodriguez 2012, pp. 66, 70–71.
  5. ^ Harrison 2002, p. 96.
  6. ^ Turner 1999, p. 115.
  7. ^ MacDonald 2005, pp. 207–208.
  8. ^ MacDonald 2005, p. 495.
  9. ^ a b c d e Pollack, Alan W. (1995年). “Notes on 'I Want to Tell You'”. soundscapes.info. 2020年11月16日閲覧。
  10. ^ a b Unterberger, Richie. I Want To Tell You - The Beatles | Song Info - オールミュージック. 2020年11月16日閲覧。
  11. ^ a b c Everett 1999, p. 57.
  12. ^ Fontenot, Robert (2015年3月14日). “The Beatles Songs: 'I Want to Tell You' – The history of this classic Beatles song”. oldies.about.com. 2015年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月16日閲覧。
  13. ^ Rodriguez 2012, pp. 142–143.
  14. ^ a b Miles 2001, p. 232.
  15. ^ Rodriguez 2012, p. 143.
  16. ^ a b c d Lewisohn 2005, p. 81.
  17. ^ a b c Winn 2009, p. 23.
  18. ^ Lewisohn 2005, p. 82.
  19. ^ MacDonald 2005, p. 208fn.
  20. ^ Harry 2003, p. 232.
  21. ^ Lewisohn 2005, pp. 81–82.
  22. ^ MacDonald 2005, p. 192.
  23. ^ Miles 2001, p. 237.
  24. ^ Lewisohn 2005, p. 84.
  25. ^ Everett 1999, p. 67.
  26. ^ Gould 2007, p. 362.
  27. ^ Miles 2005, pp. 198–199.
  28. ^ Castleman & Podrazik 1976, p. 55.
  29. ^ Miles 1997, p. 190.
  30. ^ “ポール・マッカートニー、日本での逮捕を語る”. BARKS (ジャパンミュージックネットワーク). (2004年6月3日). https://www.barks.jp/news/?id=1000000595 2020年11月16日閲覧。 
  31. ^ Rodriguez 2012, pp. 6, 25–26, 122–123.
  32. ^ Mulvey, John, ed (2015). “July–September: LPs/Singles”. The History of Rock: 1966 (London: Time Inc.): 78. https://archive.org/details/TheHistoryOfRock1966/page/n77/mode/2up?q=veritable. 
  33. ^ Sandoval, Andrew; Peterson, Gary (2008). Music Box (CD liner notes). The Monkees. Rhino Records.
  34. ^ MacDonald 2005, p. 207.
  35. ^ Stone, Doug. State of Shock - Ted Nugent | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月16日閲覧。
  36. ^ Erlewine, Stephen Thomas. Live in Japan - George Harrison | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月16日閲覧。
  37. ^ Erlewine, Stephen Thomas. Concert for George - Original Soundtrack | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月16日閲覧。
  38. ^ Sendra, Tim. He Was Fab: A Loving Tribute to George Harrison - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月16日閲覧。
  39. ^ Loftus, Johnny. Songs From The Material World: A Tribute To George Harrison - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月16日閲覧。
  40. ^ Alexander, Phil, ed (July 2006). “Revolver Reloaded”. Mojo: 6. 
  41. ^ MOJO Issue 152 / July 2006”. mojo4music.com. 2020年11月16日閲覧。
  42. ^ Deming, Mark. Basses Loaded - Melvins | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月16日閲覧。

参考文献

外部リンク


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