HIVゲノムの構造とサブタイプ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/08 23:19 UTC 版)
「HIVワクチン」の記事における「HIVゲノムの構造とサブタイプ」の解説
「ヒト免疫不全ウイルス」を参照 HIV RNAゲノムは3つの主要な遺伝子を含む。 gag遺伝子:CA,MA,NCといった核蛋白質やマトリクス蛋白質をコードする遺伝子 pol遺伝子:逆転写酵素、プロテアーゼ、インテグラーゼ、リボヌクレアーゼをコードする遺伝子 env遺伝子:TM,SUといった貫通型蛋白質と表面蛋白質をコードする遺伝子 その他様々な機能を持つ調整・補助蛋白質をコードする遺伝子は、polとenvのあいだに位置している。 vif遺伝子:HIV粒子の成熟に必要。無細胞ウイルスの感染性を強める vpr遺伝子:転写活性化因子 vpu遺伝子:ウイルスの出芽に必要 nef遺伝子:ウイルス複製に必要 tat遺伝子,rev遺伝子:ウイルスの転写の強力な活性化因子、構造遺伝子の発現調節因子は共に結びついている。 ウイルスゲノムの両端末にはRという反復配列が存在し、これが逆転写に関与する。二本鎖DNAプロウイルスの合成に伴ってRとUが配列が複製され、LTR(Long Terminal Unit)と呼ばれる2つの反復配列が生成される。 U3 R U5 LTR:宿主の転写因子が結合する。 ウイルスRNAの5’端末は宿主細胞の染色体にウイルスが組み込まれるのに必要な部位と、逆転写を開始するのに必要なtRNAプライマー結合部位を兼ね備えたU5という配列が存在する。ウイルスRNAの3’端末はU3といったヌクレオチド配列になっており、DNAプロウイルス転写の調整に重要となる。HIVサブタイプ(en)は、遺伝子学的にほぼ等距離にあり、系統樹上独立した群を形成するものとして定義付けられる。遺伝子学的系統関係から、HIV-1のサブタイプはグループM,N,Oの3グループに分けられる。この中でもグループMは、世界流行の主要な原因となっているウイルス群で、A1,A2,B,C,D,F1,F2,G,H,J,Kの11種類のサブタイプと、A1,A2,F1,F2のサブサブタイプに分類される。西アフリカ地域に限局した流行の見られるHIV-2は、A,B,C,D,E,F,Gの7種類に分類されるが、この内ヒト集団に分布しているのはAとBの2サブタイプである。これらサブタイプ間の組み換えウイルスが世界流行の動因として重要な役割を持っている事が明らかにされつつあり、組み換え型流行株(Circulating Recombinant Form:CRF)と呼ばれるものである。CRFには現在16種類が知られており、発見の順番を示す数字と組換えに関与するサブタイプ名を加え、CRF02_AGというように命名する規約になっている。3種類以上のサブタイプによる複雑なCRFにはCRF06_cpx(complexの略)のような名前が与えられる。東南アジア地域に分布していた、これまでサブタイプEとされた流行株は、サブタイプAとEの組換えウイルスである事から新たなガイドラインでは、CRF01_AEと命名された。
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