EUでの共産主義標章の禁止提案
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「ヴィータウタス・ランズベルギス」の記事における「EUでの共産主義標章の禁止提案」の解説
2005年1月、欧州議会議員となったランズベルギスは、別の欧州議会議員(ハンガリー選出)の支持を得て、欧州連合(EU)においては、ナチス・ドイツとソビエト連邦の両方の標章を禁止することを主張した。ランズベルギスは、欧州委員会の司法内務担当委員であるフランコ・フラッティーニに書簡を送り、「EUがナチの標章を禁止するなら、共産主義の標章も同じく禁止すべきだ」と述べた。フラッティーニ委員はこの問題を取り上げる姿勢を見せ、「議論を行う用意がある。共産党独裁はナチと同じく、何千万人もの犠牲者を出した」と述べた。 しかし、共産主義再建党とイタリア共産党は、ランズベルギスの提案に対して激怒した。ほどなく、フラッティーニ委員は、イタリア共産党の抗議により発言を撤回する。ランズベルギスの提案は、「脱ファシズム化」の結果成立したイタリア共和国で大きな騒動を巻き起こし、2005年2月初めに、イタリア共和国内の容共政党は大規模な抗議活動を行った。この提案は、イタリア共和国のマスメディアの関心の的となった。主要日刊紙の一つである共和国新聞(La Repubblica)は、ランズベルギスへのインタビューを掲載したが、イタリアの主要日刊紙がリトアニアの政治家に1頁全部を割いたのは、イタリア史上初である。しかし、ランズベルギスの提案は、イタリア共和国の政治家には殆ど支持されなかった。一方で、ファシスト党の党首ベニート・ムッソリーニの孫である、下院議員兼欧州議会議員のアレッサンドラ・ムッソリーニは、「この提案を実行することは我々の道徳的責務である」と述べた。 この提案に対しては、ロシア連邦議会も看過しなかった。ロシア連邦下院(ドゥーマ)の第一副議長は、この提案を「異常」と述べた。別のロシア連邦共産党議員は、「一部の欧州人は増長し、誰によってファシストから解放されたか忘れている」と言った。 この論争は2005年2月初め、欧州委員会が全EUにおけるナチスドイツの標章の禁止案自体を否決したため、終結した。フラッティーニ司法担当委員は、「“赤い星”と“鎌と鎚”をEUの反差別法案に含めるのは適切ではない」と述べた。 結局、2005年2月末に、EUは、加盟25ヶ国で、「鉤十字」などナチスドイツの標章を禁止する提案を却下し、「鎌と鎚」など共産主義の標章を禁止する提案も却下した。どの標章を禁止すべきかということに加盟国の合意が得られないため、ルクセンブルク大公国が提案を撤回したからである。この提案について表現の自由を侵害するものであると懸念する意見もあった。 現在、ヨーロッパでナチスドイツとソビエト連邦の両方の標章を法律で禁止している国家は、ハンガリー、ポーランド、バルト三国(エストニア、リトアニア、ラトビア)、ウクライナである。又、2011年現在、ヨーロッパでナチスドイツの標章のみを禁止している国家は、ドイツとフランスである。
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