EMIEW (ロボット)
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EMIEW(エミュー)とは、日立製作所が2005年に開発したロボット[1]。 EMIEWは「Excellent Mobility and Interactive Existence as Workmate」の略称[2]。
概要
EMIEWのコンセプトは、人と同じ生活空間で、人と同程度の速さで機敏に動きながら、人をサポートすること[1]。
移動性能
2体のEMIEW をシナリオ制御に基づいて速度 1.7 m/s(6 km/h)で連動させる走行演技では、複雑に交差した移動軌跡上で EMIEW 同士が衝突することなく、安全にデモ走行を実現できた[3]。移動システムには、床面占有面積を狭くできて、人の邪魔にならず、小回りが利いて俊敏な移動が可能で、重心の高い移動体の姿勢を、アクティブに安定に制御可能な倒立振子移動システムを採用した。それにより、人間並みの移動速度 1.7 m/s(6km/h(ホンダのASIMOも2005年に可能[4])で、胴体に実装したレーザスキャナによる実時間障害物監視と、それに基づく実時間衝突回避制御を可能とした[5]。
音声認識
平均騒音レベル70dBの背景騒音条件で、1~4 m の距離を経て不特定話者の発声に対応した遠隔音声認識が可能。識別可能な語彙は100語。キーワード識別機能を持ち、あらかじめ対話のキーとなる単語を登録しておくことで、聴き取ったフレーズの中に該当する単語が存在した場合のみ、対応するアクションを発生できる実績を示した[6]。
安全性
EMIEWのコンセプトはそのままに、EMIEW2は、オフィスでの案内や巡回などでの利用を想定した実用的な身長、かつ、安全性を確保するために小型・軽量化している。倒立振子方式では、電源が落ちて制御ができなくなると、バランスをくずして倒れてしまう[1]ため、「EMIEW3」は「EMIEW2」より重心を低くし、補助輪を付けて転倒からの復帰も可能となり、実サービスの活用を視野に開発された[7]。 ヒューマノイド型の新モデルEMIEW4は、稼働時間や移動性能などの実用性能を大幅に高めた[8]。
用途
「EMIEW4」や「EMIEW-TT」とサーマルカメラを連携させることで、発熱者の誘導や来訪者の簡易問診を非接触で実施でき、建物の運用・管理者の負荷軽減が期待できるとしている[9]。
沿革
- 2005年
- EMIEWを開発[1]
- 2007年
- EMIEW2を発表[1]
- 2016年10月
- EMIEW3の実証実験を開始[10]
- 2018年10月
- タブレット端末と専用クレードルで「EMIEW」のアバター(分身)と会話ができる卓上型の「EMIEW-TT(エミューティーティー)」を開発[11]
- 2020年4月20日
仕様
モデル | EMIEW | EMIEW 2 |
---|---|---|
発売年 | 2005 | 2007 |
質量 | 70 kg | 14 kg [12] |
高さ | 130 cm | 80 cm |
最高速度 | 6 km/h | 6 km/h |
加速度 | 4 m/s2 | 4 m/s2 |
自由度 | 14 [13] (アーム: 6 × 2, ハンド: 1 × 2) |
25 |
主な出演
- EMIEWは「愛・地球博」会場内の「プロトタイプロボット展」で、「ロボットカフェ」のウェイターとして、対象物の搬送作業を行うというコンセプトの技術紹介デモ[14]を行った。
- EMIEW3は羽田空港で実証実験を行った。人だけでなく、インフォメーションアナウンスなどの雑音下でも、空港利用者の問いかけに対し、EMIEW3は案内カウンターの隣に設置した案内情報ディスプレイと連携し、ディスプレイに表示された地図や、空港施設の概要、店舗の写真などを用いて案内することができた[15]。
関連項目
出典
- ^ a b c d e 西條義典 2017, pp. 12–17.
- ^ 細田祐司 2011, p. 4.
- ^ 細田祐司 2011, p. 65.
- ^ 川上清市 2022, p. 87.
- ^ 細田祐司 2011, p. 44.
- ^ 細田祐司 2011, p. 27.
- ^ 馬場淳史 & 設楽真一 2017, p. 12.
- ^ a b c 株式会社日立製作所 & 株式会社日立ビルシステム 2020, p. 1.
- ^ 日立評論社 2021, p. 87.
- ^ 住吉貴志 et al. 2017, p. 1.
- ^ 株式会社日立製作所 & 株式会社日立ビルシステム 2020, p. 2.
- ^ “EMIEW2:ロボティクス”. 2017年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月1日閲覧。
- ^ GLOBAL. “EMIEW:ロボティクス”. 2017年3月1日閲覧。
- ^ 細田祐司 2011, p. 38.
- ^ 馬場淳史 & 設楽真一 2017, p. 13.
外部リンク
- EMIEW 公式ウェブサイト
- EMIEW2 公式ウェブサイト
- EMIEW3とロボットIT基盤
- 細田祐司『俊敏かつ安全な移動機能を持つ人間共生ロボットの研究』(博士(工学)論文・システム情報工学研究科専攻) 甲第、5895号、筑波大学、2011年。CRID 1910020910757545600。 hdl:2241/117799。 NAID 500001098486。 OCLC 828777624。国立国会図書館書誌ID: 024158223 。2025年1月5日閲覧。
- 住吉貴志、山本正明、神田直之、藤田雄介、永松健司「人間共生ロボット”EMIEW3”の音声言語処理システムの開発」『研究報告音声言語情報処理(SLP)』2017-SLP-118第8号、情報処理学会、2017年、1 - 5頁、 ISSN 2188-8663、 NCID AN10442647、 OCLC 838798037、国立国会図書館書誌ID: 025608578、2025年1月5日閲覧。
- 西條義典「REAL INNOVATION(VOL.15)ヒューマノイド「EMIEW3」が描く近未来」『Realitas = レアリタス』第18号、日立製作所情報・通信システム社経営戦略室ブランド・コミュニケーション本部、2017年、12-17頁、 CRID 1524232505772714880、 NAID 40021079320、 OCLC 6945336970、国立国会図書館書誌ID: 027919244、2025年1月5日閲覧。
- 馬場淳史、設楽真一「本格実現に向けて動き出したサービスロボティクスシステム : 実証から事業化の段階にさしかかった接客・案内サービスロボット「EMIEW3」」『日立評論』1131特別号第99号、日立評論社、2017年、12-14頁、 CRID 1522543655419615616、 ISSN 03675874、 NAID 40021069961、 NCID AN00298883、 OCLC 6939791770、国立国会図書館書誌ID: 027859983、2025年1月5日閲覧。
- 株式会社日立製作所、株式会社日立ビルシステム「受付・案内・巡回監視などを行いビル内業 務を支援するコミュニケーションロボット「EMIEW」を本格事業化,」『日立リリースニュース』、株式会社日立製作所、2020年、1-5頁、2025年1月5日閲覧。
- 日立評論社「ビルシステム」『日立評論』第103巻第1号、日立評論社、2021年、86-90頁、 ISSN 03675874、 NCID AN00298883、NDLJP:12904618、2025年1月5日閲覧。
- 川上清市「2-21広がり見せるサービスロボット」『最新機械業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』(第3版)秀和システム、2022年、87頁。 CRID 1130573251004804631。 ISBN 9784798065632。 NCID BC12405449。 OCLC 1302960953。国立国会図書館書誌ID: 000011199576 。2025年1月5日閲覧。
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