DNA型鑑定の課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:45 UTC 版)
検査で判定できるのはあくまで繰り返し数のみであり、その結果は数値でのみ示される。そのため厳密には「DNA鑑定」より「DNA型鑑定」と称するべきとの見方がある。 DNA型鑑定の信頼性 2000年台のアメリカ合衆国において、FBIの犯罪者DNA型データベースCODIS(英語: Combined DNA Index System)上に登録されていた6万5千人のアリゾナ州の犯罪者のDNA型プールで、「113兆分の1の確率と考えられるDNA型の偶然の一致」があったとの報告を端緒に類似の例が報告され、DNA型鑑定の信頼性についての議論が一部の法律家や報道関係者などの間で交わされるようになった。しかし法医学研究者らにより、こうした誤解は「誕生日のパラドックス」または「訴追者の誤謬(英語: Prosecutor's_fallacy)」の典型的な例であり、実際には統計学的に説明可能な妥当な結果であったことが指摘されている。 判断者に依存する DNA型鑑定による個人識別の歴史・現状・課題への言及を極力省き、簡潔に表したいという目的からか、鑑定の結果「DNAが一致」したといった表現がしばしばみられる。しかし、それらはいずれもDNAのすべてが一致するかを調べたのではなく、DNAのごく一部の分析からパターンの一致・不一致を判定し、確率論的に推定したものである。どういう分析が行われ、何がどう一致したのかを確認しないと評価を誤りかねない。この点指紋と異なり、判断者に「高度な専門的知識」が必要とされる性質のものであり、裁判に利用する際その判断は専門家の解釈に依拠することになる。 陽性対照・陰性対照 DNA型鑑定は高度の感度を有する鑑定であるため、陽性対照および陰性対照をも試料として鑑定すべきとの指摘もあるが、日本の科学捜査研究所・科学警察研究所では鑑定ごとの陽性対照および陰性対照の鑑定は実施していない。今後、陽性対照および陰性対照の鑑定が実施されていないDNA型鑑定については、証拠能力が否定されるべきとの見解が有力化している。 人的ミス 人が検査を行う以上、不注意によるケアレスミスや、取り違えや失敗などの検査ミス、上記にも説明しているような判断ミスは起こりうる。 機器の故障 検査に使用する機械・道具・試薬などの故障・欠陥がある可能性もある。
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