DCとの不和
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 04:39 UTC 版)
ムーアとDCコミックスとの関係はいくつかの問題を巡って徐々に悪化していった。完結した自作の続編やスピンオフを別の作家に書かせるような販売策はムーアの信条にそぐわなかった。1987年にDC社が映画のような年齢レイティング制とガイドラインを導入しようとすると、ムーアはフランク・ミラーらとともに反対の論陣を張った。これがDC離脱の直接的な理由となった。レイティングは「子供向け」作品を毒にも薬にもならないものにし、「成人向け」作品をセックスと暴力頼りの低質なものにするというのがムーアの考えだった。 ムーアは後に、『ウォッチメン』と『Vフォー・ヴェンデッタ』の契約書に書かれていた「作品が絶版になれば著作権は作者に復帰する」という条項に騙されたと語っている。ムーアはいつか自作の権利が返ってくると思っていたが、DCはいつまでも2作を絶版にしなかったのだという。2006年にニューヨーク・タイムズ紙で受けたインタビューではDCとの会話をああそうかい、と言ってやった。まんまと騙してくれたな、お前らと仕事をする気はなくなったと回想している。しかしムーアの主張には業界内のみならずファンからも批判がある。問題の条項そのものは、当時のDCコミックスがクリエイターの権利を拡大するために取った措置の一つと見られる(それ以前には出版社が全面的に著作権を保有するのが慣行だった)。伝記作家パーキンの所見によると、『ウォッチメン』が当時珍しかった単行本にまとめられ、絶版を迎えることなく版を重ね、2012年までに一般書店だけで200万部が売れることになるとは、契約が結ばれた時点では誰も予測していなかったのだという。 いずれにせよムーアが抱いた「騙された」「脅された」という悪感情が解消されることはなかった。DCで刊行を再開していた『Vフォー・ヴェンデッタ』(1989年完結)を最後に寄稿は打ち切られた。なおアメリカン・コミック出版のもう一方の雄マーベル・コミックスとは『マーベルマン』の名の使用を巡ってそれ以前に絶縁していた(同作はデズ・スキンによって米国のエクリプス(英語版)社に版権が売られ、『ミラクルマン』と改題された)。
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