737MAXのエンジンと操縦特性補助システム(MCAS)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 03:42 UTC 版)
「ボーイング737 MAXにおける飛行トラブル」の記事における「737MAXのエンジンと操縦特性補助システム(MCAS)」の解説
ボーイング737MAXは2017年に従来型の737NGシリーズ(737-600/-700/-800/-900)の後継機として開発され、就航したが胴体の基本的な設計は(長さの変更を除けば)第1世代の737-100/-200の頃から大きく変わっていなかった。 737-100/-200はファン口径の小さいエンジン(JT8D)を主翼に直付けする前提で設計されたため、地面とのクリアランスが低い設計となっていた。737-300/-400/-500・737NGシリーズ(737-600/-700/-800/900)からファン口径の大型化されたエンジン(CFM56-3B、CFM56-7B)が装備されることになるが、従来の737の主翼では直に装備できないため、パイロンで主翼前方に突き出すとともに、地面とのクリアランスを確保するよう底面をやや平らにした、独特なおむすび型のエンジンカウルが導入されることになった。 737MAXではCFM56よりさらに大型化された、LEAPエンジンが採用されたことによって燃費を約14%改善させるが、エンジンのさらなる大型化やナセルの形状変更に伴い、地面とのクリアランスを確保するためエンジンの取り付け位置を従来の737NGシリーズよりも若干上方および前方に移動させる必要が生じた。 地面とのクリアランスを確保するには降着装置(ランディングギア)を延長する案もあるが、737の設計ではこれ以上延長できず、機体を再設計する必要があった。 ダッソー メルキュール。737-100/200と同じJT8Dを搭載しているが、同機ではパイロンに装備されている。 エアバスA320。A320および派生型もパイロンにエンジンを装備する前提で設計されたため、胴体と地面のクリアランスが高くなっている。 ボーイング737-200。737-100/200ではエンジンの大型化を考慮しなかったため、胴体と地面のクリアランスが低くなっている。 ボーイング737-700 ボーイング737 MAX 7。エンジンナセルの大型化により、737-700(左)と比して上端が若干高くなっている。 エンジンの取り付け位置が若干移動した影響で、ナセルが仰角を取った時に揚力が発生し、機首がピッチアップのモーメントが働き、より高仰角になる(デパーチャー方向に振れる)特性があった(わかりやすくいえば、ボーイング737MAXにはそもそも機首上げが起きやすい特性があった)。 そのため、ボーイングはデパーチャーによる失速(適切でない機体姿勢に陥った際の失速)を防ぎ、機体特性を737NGと同様に振舞わせるため「操縦特性補助システム」(Maneuvering Characteristics Augmentation System)と呼ばれる操縦支援システムを737MAXに導入した。 MCASは2基ある迎角(AoA)センサーの片方の値を取り込み、一定値を超えた状態で、機体コンフィギュレーション(フラップ角度等)および対空速度・高度が閾値を超えていた場合に作動し、水平尾翼の水平安定板(スタビライザー)を自動的に操作して機体を降下させる。MCASが作動した場合、スタビライザートリムホイールが動くが、パイロットがMCASを解除するにはオートトリムを切り、スタビライザー制御システムのカットオフスイッチを切ってマニュアルにし、手動でスタビライザートリムホイールを回してジャッキネジを回転させなければならない。
※この「737MAXのエンジンと操縦特性補助システム(MCAS)」の解説は、「ボーイング737 MAXにおける飛行トラブル」の解説の一部です。
「737MAXのエンジンと操縦特性補助システム(MCAS)」を含む「ボーイング737 MAXにおける飛行トラブル」の記事については、「ボーイング737 MAXにおける飛行トラブル」の概要を参照ください。
- 737MAXのエンジンと操縦特性補助システムのページへのリンク