1巻:協議の問答
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 00:52 UTC 版)
「ユートピア (本)」の記事における「1巻:協議の問答」の解説
作品の冒頭は、トマス・モアが、大陸で出会った幾人かの人々、アントウェルペンの市職員ペーター・ギレス、カール5世の参事官ジェローム・バスレイデンらと交わした手紙で始まる。その手紙の中には、実在の人物とのやりとりもある。それにより、モアは、虚構の土地に真実性を持たせようとした。これと同じ考えから、これらの手紙には、ユートピアの文字見本と詩が含まれている。また、手紙では、ユートピアへの旅が広まっていないことも説明されており、ユートピアについて最初に述べた場面では、正確な経度や緯度が話題になった時に誰かが咳をしている。第1巻では、モアをアントウェルペンに招待した旅人のラファエル・ヒュトロダエウス(ヒスロディ)が、その時話題になっている事柄をどのように皇子に助言するかを調査している。 ラファエルとの最初のやり取りでは、現代の病気がヨーロッパに影響を及ぼして、王が戦争を始めたり、見込みのない出費を続けたりすることについて議論している。また、モアは、窃盗罪での処刑を批判し、どうせ同じ結果ならば、盗みより殺人の方がよい、目撃者を排除できると言っている。彼は、窃盗の問題の大部分は、囲い込み、つまり共有地に囲いをすることに原因があるとしている。そして、牧羊のためその土地から排除された人々の、貧困と飢餓がそれ以降始まったとしている。 モアは、王立裁判所で王に進言する職を見つけられるとラファエルを説得しようとする。しかし、ラファエルは、自分の考えが急進的すぎて受け入れられないだろうと言う。ラファエルは、自治を確立するためには、王が哲学的に行動しなければならないと分かっているが、次のように指摘する。 「 プラトンは恐らく充分に予見していたのだろうが、王自身が哲学の勉学に専念しない限り、他に決して完全には哲学者の評議会を認可することはないだろうし、哲学者自身、かつて幼かった頃から、ひねくれて凶悪な考えに感染し汚染されている。 」 モアは、現実の状況の中で哲学者が果たすべき責務について考え、彼らが政治的功利主義のために、欠陥はあってもよりよい生活のために、むしろ最初の原則から始まることを望んでいる。 「 ……裁判所で彼らは、誰かが自分の平和を守ろうとしたり、他の誰かがすることを黙認したりするのを我慢することはできないだろう。人は、最悪の弁護人をしらじらしく是認し、最も腹黒い陰謀を承諾しなければならないし、その結果スパイ、裏切り者となってこういった邪悪な行為を認めていかなければならないのだから。 」
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