一人旅
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/06 06:28 UTC 版)
一人旅(ひとりたび、solo travelあるいはsingle travel[注 1])とは、文字通り、一人で旅をすること。
概説
基本的には旅行者自身で交通手段や宿泊する場所などの段取りもつけての単独での旅を指して、この語は用いられている[1][2][3][4][5][6][7]。
一人旅のスタイル
一人旅は一人で旅をすれば成立するので様々なスタイルがありうる。
ただし、布施克彦によれば旅行会社のパック旅行では自由とは言い難いのだという。パック旅行では、日常性から離れることはできても旅そのものの持つ自由が得られない[8]、旅行会社の用意するコースをたどるだけの旅をしてもその地を知ったことにはならないと指摘する[8]。分刻みのスケジュールに追い立てられるようにして決められた宿に泊まり、お仕着せの料理を食べて、というのでは自由がなく、その町に暮らす人たちがどんな生活をしているかが理解できないと布施は指摘した[8]。旅行会社のパック旅行に設定されているようなスポットというのは地方の実情から遊離した特殊なところで、中央の旅行会社とつながろうとするようなスポットでしかないのだと布施は述べた[8]。
布施は、一人旅で訪れれば、自分で道を尋ねたり宿の相談をするうちにその町の人々とじかに話をすることで人々の人情に触れることもでき、スケジュールは自分の気持ち次第で自由だから横町など好きなところへ入り込んで行くこともでき、その土地の人々の生活の息遣いも感じることができ、より深くその土地の、作為的ではない、ありのままの姿を知ることができる、といったようなことを言っているわけである。
こうした、自分で段取りをつける一人旅は、交通手段も宿泊場所にも様々なスタイルがありうる。例えば、日本のローカル線で駅弁と車窓(列車)からの景色を楽しむのを目当てに時刻表をにらみフェリーも活用しつつ[7] 夜は例えば民宿や旅館に泊まる旅、アジアをバックパッキングでユースホステルや地元の安宿などを利用しながら巡る旅[5]、輪行袋を用いて自転車と列車を組み合わせて行う日本の島めぐり[6]、ヨーロッパの街道を自転車で行く旅[1]、オートバイにテントも積み野宿をしながら行う一人旅[9]、ヒッチハイクで移動して宿を利用しつつも時には旅先で知りあった人の自宅に泊めてもらうこともある旅、四輪車で道の駅を利用して車中泊で気ままに移動してゆく一人旅 等々等々。他にも挙げればきりがないほど、実に様々なスタイルで行われている。
一人旅に関するアンケート調査
2011年のJTBの調査
2011年6月に公表された、JTBが一人旅に関して行った(日本での)WEBアンケートの集計結果は次のようなものだった。「一人旅をしたことがありますか?」には60%が「ある」と解答し、男女別では男性は63%、女性は54%だった。一人旅をする理由は、「心身のリラックス」が25%、「趣味の満喫」が19%、「未知の場所に行きたかった」が13%であった。「どのような場所に行きましたか?」との設問については、「景色のきれいなところ」が21%、「都市ステイ」が19%、「温泉地」が15%であった。他にも旅の日数などについても尋ねたという[10][11]。
ソロトリ総研による調査
ソロトリ総研が2024年に、一人旅をする人213人を対象に何をきっかけにして一人旅を始めたのかアンケート調査した結果によると、次のようなきっかけで始めたという調査結果が得られた[12][13]。
- 相手がみつからない(「旅の好み、体力、スケジュール、予算の合う旅友を見つけるのは至難の業だから」など。)最多の回答[12]
- 勢いで[12]
- 自由気ままな旅をもとめて[12]
- 一人の時間を求めて(「人付き合いに疲れた」「仕事で疲れた身体をリセットし癒すため」「誰とも話さない、音の無い時間が必要だったから」「家族のいる自宅にいたくなかった」など)[12]
- どうしても行きたい場所があったから(「行きたい場所がこだわりのある場所で、一緒に行ってくれる人がいそうもなかったから」など)[12]
- 冒険・達成感・自信を求めて(「ドラクエの勇者になった気分で、一人冒険感覚で旅をしたくなったから」「1人でも私は出来る!」や「私には勇気がある」と確認したくなったから、など)[12]
- 離れて暮らす友人や家族に会いに行くついでに一人旅を始めた[13]
- そこに連休があったから(「勤務表を見たら無意味に3連休があった」「友達と休みが合うの待っていたら一生どこにもいけない」「勤務先から永年勤続のお祝いとしてまとまった休みが貰えたから」など)[13]
- 退職をきっかけに一人旅を始めた[13]
- 子育てを終了(「子育てをやりとげた自分へのごほうびで」「子供の手が離れたから」「娘の高校卒業」「家族がそれぞれの道を歩みだし、一人暮らしになったから」)[13]
- 人生の転機(「親の介護の終わり」「失恋」「婚約を破棄された」 など)[13]
- 自分への誕生日プレゼント[13](30歳記念、40歳記念、50歳記念...など)
- 新型コロナのパンデミックが原因でソロで活動せざるを得なかったから[13]
- 推し活(「推しのライブ遠征のため」「推し出演舞台を観るついでに観光」 など)[13]
男性の一人旅
布施克彦によれば、組織から自由になりたいのはもちろん家族からも自由になりたいといった男の根本的な願望を叶えるには、夫婦旅行とは違った旅が必要になるのだという[8]。また、友人、幼馴染、いとこ、趣味の仲間といった誰もが持っているであろう人間関係との旅は、組織の中にいる時よりもそれなりに自由ではあるものの、旅を重ねるごとに飽きがくるに違いなく、人間関係に差しさわりが出てきたり、話題も尽き、一緒に行く人との調整も気になるようになれば完全自由な旅ではなくなってしまうという[8]。そこで必要なのが一人旅、中でも手作りの旅だと布施は述べた[8]。
布施は中高年の男性には特にひとり旅を勧めた[8]。そして同じひとり旅をするにしても、何らかのテーマを持って土地を巡ることを布施は勧めた[8]。
女性の一人旅
布施によれば女性も旅が好きだが、女性はどちらかと言えば一人旅よりも仲間と一緒にいっておしゃべりも楽しんで食べ物も楽しむのを好むのだという[8]。とはいえ近年では女性の一人旅も増えており、女性向けにバックパッキングで行く一人旅のマニュアル本も出版されている[14]。 推しのライブや舞台を観るために"遠征推し活"することをきっかけに一人旅を始める女性も増えてきている[15][16]。
旅行業での「一人旅」
- JTBF旅行実態調査での区分
JTBF旅行実態調査では、「一人旅(ひとり旅)」はもっぱら観光・レクリエーションを目的とする旅行での同行者の有無による区分に用いられている[17]。(つまり、当たり前だが同調査で、あくまで「同行者が無い」ほうに分類されている旅だけが一人旅である。)
- 宣伝
旅行代理店が1人用のフリープランの宣伝に「一人旅(ひとり旅)」の言葉を用いる例もある[18]。
比喩など
下のものも、旅ではないが、比喩などで「一人旅」と形容される。
- 自動車レースにおいて先頭を走る車がレース中盤以降などに他車に圧倒的な差をつけて独走状態で走り続け、そのままゴールインすること。競馬において、大きな着差を付けて逃げ切ること。あるいは抽象的な比喩で、スポーツ・競技のリーグ戦などにおいてある一人(一つ)の選手・チームが他と大きな差をつけている状態。なお「一人旅」という比喩は、やや奇をてらった比喩であり(独特のトーク技術を駆使する古館一郎が1980年代~90年代などにF1レースの中継放送などで多用して広まったが)、もっと普通の日本語では「独走状態」と言う。
- コンピュータゲームにおいて、複数人のパーティを組めるがあえて他者を仲間にしないなどの方法で他キャラクターを排除し、1人(1匹、1体)のキャラクターのみを使ってプレイすることを指す言葉。
脚注
注釈
- ^ lonely travel ロンリー・トラベルとも。
出典
- ^ a b 野村芳弘『折りたたみ自転車で行くドイツロマンチック街道ひとり旅』文芸社、 2003
- ^ 布施克彦『男なら、ひとり旅。』PHP研究所、2007 ISBN 4569696554
- ^ 長崎快宏『アジア・ケチケチ一人旅: 安くて安全、なるほど放浪体験記』PHP研究所1998
- ^ 中野友喜『一人旅のすすめ: 黒帯先生ハチャメチャ旅行記』中野友喜、2000
- ^ a b 馬場直之『おじさんバックパッカーのアジア一人旅: 定年後は第二の青春』文芸社、2007
- ^ a b 沼尾ひろ子『じてんしゃ女子ひとり旅』枻出版社、2009
- ^ a b 谷川一巳 『ローカル線ひとり旅』光文社、2004
- ^ a b c d e f g h i j 布施克彦『男なら、ひとり旅。』PHP研究所、2007 p.29-40
- ^ 花村萬月『自由に至る旅:オートバイの魅力・野宿の愉しみ』集英社、2001
- ^ a b c d e f g “一人旅デビューのきっかけ”. 2025年9月6日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “一人旅デビューのきっかけ”. 2025年9月6日閲覧。
- ^ ひとり旅活性化委員会『新・女ひとり旅読本: ガールズ・バックパッカー・マニュアル』双葉社, 2004 ISBN 4575296643
- ^ “推しのために遠征したら、旅行嫌いの私が一人旅の楽しさを知った”. 2025年9月6日閲覧。
- ^ “50代、ひとり旅のきっかけは「推し活」。一期一会の仲間との関係が最高”. 2025年9月6日閲覧。
- ^ 日本交通公社 (2015年). “旅行年報2015” (PDF). 2018年10月27日閲覧。
- ^ 例:[1][2][3]
関連項目
- アンノン族
- ソロ(ソロ活動)
- ソロキャンプ、車中泊、キャンピングカー、野宿、ユースホステル、ビジネスホテル、カプセルホテル、民宿
- バックパッカー
- 鉄道旅行、徒歩旅行、ヒッチハイク
- 自転車旅行、モーターサイクルツーリング
- レンタカー、レンタルバイク
- 自由旅行
- 紙媒体など
- ネット宿泊予約類
- トリップアドバイザー、trivago(トリバゴ)、LINEトラベルjp(旧Travel.jp)、トラベルコなど
関連書籍
- 長崎快宏『アジア・ケチケチ一人旅: 安くて安全、なるほど放浪体験記』PHP研究所、1998
- 中野友喜『一人旅のすすめ: 黒帯先生ハチャメチャ旅行記』中野友喜、2000
- 野村芳弘『折りたたみ自転車で行くドイツロマンチック街道ひとり旅』文芸社、2003
- 谷川一巳『ローカル線ひとり旅』光文社、2004
- 布施克彦『男なら、ひとり旅。』PHP研究所、2007 ISBN 4569696554
- 馬場直之『おじさんバックパッカーのアジア一人旅: 定年後は第二の青春』文芸社、2007
- 沼尾ひろ子『じてんしゃ女子ひとり旅』枻出版社、2009
- 花村萬月『自由に至る旅:オートバイの魅力・野宿の愉しみ』集英社、2001
- ひとり旅活性化委員会『新・女ひとり旅読本: ガールズ・バックパッカー・マニュアル』双葉社、2004 ISBN 4575296643
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